七夕の少年と初恋の味
掲載日:2023/07/07
その人との初めての出逢いは
恋という字もろくに書けない
七歳の夏のことでした
魔法のステッキが欲しいとか
変身ベルトが欲しいとか書いた
五色の短冊を笹に結んだり
水玉模様の包装紙を開け
グラスに注がれる乳白液に
期待の眼差しを送ったり
朝顔の鉢植えがある庭で
麦わら帽子を目深にかぶり
灯篭の周りを鬼ごっこしたり
ただ児戯を共にするだけの仲が
下駄箱に手紙を忍ばせるようになり
二日と空けずに電話する間柄となり
二人で迎えた二十回目の七夕の日
小雨降る神社で三三九度を交わし
その人は私の夫となったのでした
それから世の中はうつりかわり
今や夫は彦星様となり
私の隣には誰もいません
それでも幸せな時代の記憶は
七夕が巡り来るたびに
鮮明に思い出されるのです




