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異端の獣〜守りたいものがあった〜  作者: 金狐銀狼
王国からの訪問者
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第11話 蜘蛛の女王


 吸血鬼(ヴァンパイア)たちがカリヴィアへ来て3日目の夕方。今後どうしたいかが決まった、と伝言を受け、迎賓館へ向かう。その途中で呼び出したハイゾラ、ソウガと合流した。

 ……………こいつら、3日前と比べて、明らかに元気になったな。不気味なくらいニッコニコの笑顔。艶々になった肌。


「……………………元気になったようで何よりだ」

「「休みをありがとう!!」」


 ああ、とついつい明後日の方向を見ながら返事をした。






 迎賓館に着き、前回と同じ和室に入る。吸血鬼(ヴァンパイア)たちは既に全員集まっていた。


「お忙しい中、お時間を取ってくださり、感謝致します」


 上手(かみて)に腰を下ろすとすぐに、女の吸血鬼(ヴァンパイア)が代表で口を開いた。


「いや、問題ない。それで? どうするつもりだ?」

「はい、私たちは皆、カリヴィアに住みたいと意見が一致しました」


 ぺこり、と頭を下げた彼女に倣い、吸血鬼(ヴァンパイア)たちも深く頭を下げた。

 それを見ながら、さっと彼女らの状態を確認する。


 傷は手当されている。睡眠不足に陥っているものも居ない。全員清潔な服を身に着けている。


「よく休めたようだな」


 ポツリと零せば、1番私に近かった女吸血鬼(ヴァンパイア)が微かに顔を上げ「大変、有難うございましたっ」と絞り出すように言った。


「ここに住むのなら、()ずは自分の服を頼まないとな」


 ? と。吸血鬼(ヴァンパイア)たちが怪訝な顔をした。それに敢えて説明をせずに「付いて来い」とだけ告げる。



 そして着いたのは、町の端にある、やたら大きな扉がある建物。扉の前に立てば、ギィ……………と音を立てて自動で開かれた。


「お待ちしておりました、主様」


 その奥に居た、ずらりと行儀良く並ぶ蜘蛛(くも)たちが一斉に頭を下げた。

 吸血鬼(ヴァンパイア)たちの目を集めたのは、その最前列に佇む、半人半蜘蛛(アラクネ)。蜘蛛の頭から女性の上半身が生えている。言うなれば、蜘蛛の頭とひとの頭、2つがある状態。異常種(アルビノ)でもある彼女は、白い髪に薄紅の瞳を持っている。

 半人半蜘蛛(アラクネ)は、更に異常種(アルビノ)は初めて見たのだろう、驚きで言葉が出ない様子の彼らをそっちのけで、彼女が嬉しそうに近付いて来た。


「こんにちわぁ、主様。今日も麗しいですねぇ」


 独特の語尾を伸ばす喋り方で私を褒める彼女の名はラリア。十年前、私が6歳のときに出会い、名をあげて配下になった。カリヴィアで一番の古株だ。


 ヒョイ、と私の脇下に手を入れ持ち上げ、背中に乗せられる。


「ちゃんと食べてますかぁ? 主様は相変わらず軽いですねぇ」


 私の身体に触れ、頭を撫でるラリアは優しく面倒見の良い母親の姿を幻視させる。


「大丈夫だ。ラリアは相変わらず過保護だな。私はもう幼子ではないというのに」

「私からしたら小さいままなんですもの、仕方ないですわぁ」

「アラクネより大きくなるのは無理がある」


 苦笑しながら言うと、彼女はくすくすと笑いながら移動を始めようとした。そんな彼女に声が掛けられる。


「ラリア様。こんにちは」

「ハイゾラ様、こんにちは。ソウガ様も。ご無沙汰しております。そして始めまして、吸血鬼(ヴァンパイア)の皆様」

「は、始めまして…………………………」


 ラリアを見上げ、ボソボソと挨拶を返す少年につられ、ラリアを見上げた。立っている状態で2メートル以上ある彼女は威圧感が半端ない。

「今日の用件は吸血鬼(ヴァンパイア)の方々の服に関してでしょう? 準備はできていますわ。付いてきてくださいなぁ」


 くるりと向きを変え、建物の中に入っていくラリアと、その背に乗せられたままの私。その後ろをそろそろと吸血鬼(ヴァンパイア)たちがついてきた。





 案内されたのは、水晶が並んでいる奥の部屋。かなり広い部屋であるのにも関わらず、水晶が大量に並んでいるため、全員が入ることは出来ず、その手前に集まった。

 ラリアは握りこぶし大のそれを見やすいように掲げる。


「貴方がたにはこの水晶に魔力を込めてもらいたいんですの」


 無色透明の水晶に、ラリアが見本をとして魔力を入れていった。じわじわと薄紅に染まっていく様子に、吸血鬼(ヴァンパイア)たちが驚きの表情になる。


 水晶は、その者の魔力をはっきりと色として表す性質がある。そして魔力を大量に貯め込むことが出来る。


「あの、質問しても良いですか?」

「いいわよぉ」

「何故そのようなことをするのですか?」


 ひとりの吸血鬼(ヴァンパイア)が行動の意味を問う。まあ、やる意味はわからないだろう。当然の質問にラリアは説明を欠いていたことに気付き、私の方を振り向いた。

 私、説明はちょっと…………………………と書いている顔に思わずその頭を撫でた。滑り台を滑るように彼女の背からおり、水晶を受け取る。

 それと同時に、一匹の蜘蛛が肩に落ちてきた。紅い身体に白の脚を持つ水晶と同じ大きさの、朝霞(アサカ)という名の蜘蛛はぺこりと頭を下げた。

 突然降ってきた蜘蛛にギョッとしている吸血鬼(ヴァンパイア)たちは私、クモギリ、水晶を順に見ていた。


『ご自分の魔力で自分専用(オーダーメイド)の服を作るためでございます』

「!?!?」


 突如頭の中に直接響く声に驚きと警戒が混じった顔が量産された。


『突然の思念、失礼いたします。わたくしはアサカと申します。〈獣魔連邦国(カリヴィア)の服飾部門の長の位を頂いております。今後とも宜しくお願い致します』

「…………………………………………………………………」

「ええと、よろしくお願いします……………?」


 呆気にとられて黙り込む者と、驚きながらも挨拶を返す者。二極化した反応にアサカはコロコロと笑った。


『わたくしは蜘蛛であります故、声帯を持ちません。ですので、こうして思念でお話させて頂いております。皆様を驚かせてしまい、申し訳ありません』


 上品な女性を想像させる声色。それによって意識を戻し始めた彼らにアサカが改めて説明をする。


『水晶については、母上と主様に代わりわたくしが説明をさせていただきます。まず、わたくしの種族から。わたくしは糸織(いおり)蜘蛛と呼ばれる種族です。東方の島国に生息している蜘蛛に生態が似ております。その特徴に、魔力を()って糸を生み出すことが出来る、というものがあり、わたくしも同じことが出来ます』


 見せるほうが理解できるだろうと、薄紅色の水晶から同色の糸を作り出した。それをラリアが受け取ると、不思議な現象がおきた。垂らした糸の先がひとりでに動き出し、輪っかを作り始めたのだ。


『このように、魔力から織られた糸は魔力の持ち主の意思である程度は動かすことが出来ます。また、強度が増すので防具などを作るのにうってつけなのです』


 今度は端と端を持って引っ張るも、びくともしない。


『〈カリヴィア〉では自分の魔力でできた糸を使い、服を作ることを義務としております。どうか、ご協力お願いしますね』


 アサカが喋り終えると同時に人数分きっちりの水晶が飛んで来た。慌ててそれを受け止めている様子を横目に見ながら、ラリアに話しかける。


「ラリア。ちょっと頼みたいことがあるんだが」

「? 珍しいですわねぇ、主様が頼み事をするなんて」

「すまないな」

「謝る必要はございませんわぁ、喜んで受けさせてもらいます」

「ありがとう。内容なんだが…………………」


 ボソボソと話し合った後、ラリアが満面の笑みになる。


「最高のものを用意します!!」


 

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