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第七十八話 仲間との再会

 あれから何日たったのか。

 いつ休んだかも覚えていない。

 痛む脇腹、呼吸をするたび心臓が悲鳴を上げる。


「今、止まったら奴らの餌食だぞ」

「⋯⋯はいっ」

 密林の奥からは姿は見えないものの、魔獣の鳴き声が響いてくる。

 しかし、それ以上に、俺の背で荒い呼吸を繰り返すモモの苦しそうな声が耳に入る。そのたびに、感覚が麻痺した腕に力を込め、地面を踏みしめた。


「僕にはこれぐらいしかできませんが──『支援魔法 身体増強』」

「いや、十分助かるよ」

 先ほどまで感じていた身体の重さが、ふっと軽くなった。

 だが、体力もすぐに尽きるだろうし、この身体強化も、もうじき切れる。


 ⋯⋯なら、ここで魔獣を一掃するしかないのか。

 刀がない今、頼れるのは魔法だけだが、一掃するとなると一発が限界だ。撃てば、当分は動けなくなる。

 ライゼンさんをこれ以上消耗させたくないし、音で他の魔獣を引き寄せる可能性もある。


 何か、方法は──

 その時、肌を刺激する風の温度が変わった。


「これって⋯⋯」

「朗報だぞ、たしかカインと言ったな!」

 ライゼンがこちらを振り向き、にやりと笑った。


「森を抜けるぞ!」

「──分かりました!」

 魔獣は特性上、生息域から滅多に出てこない。

 つまり、この森さえ抜ければ、追ってこられることはない。

 残りの力を振り絞り、ライゼンと共に一気に飛び出した。


 木の葉が舞い、視界が遮られるが、それを払いのけると、ようやく視界が開けた。

 ここまでくれば、憂さ晴らしに一発ぶち込んでやってもいいだろう。


『上級魔法 隕石落下』

 巨大な岩石が木々をなぎ倒し、着地と同時に空高く砂埃が舞い上がった。

 もう、魔獣の姿はどこにも見えない。


「ちょうど、魔力も⋯⋯ウプッ」

 安心すると同時に強烈なめまいと吐き気が襲ってきた。

 これは当分動けそうにない。


「ここまでよく頑張ったな。見てみろ」

「あれが⋯⋯」

 ライゼンの視線の先には、この世界では初めて見る光景が広がっていたが、前世では教科書や映画で何度も目にしたものだった。

 瓦造りの平屋がどこまでも並び、その奥にはひときわ目立つ広さの屋敷がそびえ立っている。


「あとはなんとかモモをあそこまで──」

「ん? 何かこちらに向かってくるぞ」

 ライゼンの言う通り、二人ほど、手を振りながらこちらに向かってくる。

 目を凝らしても魔力切れのせいでうまく焦点が合わない。

 だが、声が聞こえた。馴染みある彼女の声が。


「カインさーん」

「どうして、ここ、に⋯⋯」

 しかし、ここで俺の意識が途絶えてしまった。



 ////



「ううん⋯⋯」

 目を開くとそこはどこか懐かしさを感じる天井だった。

 というか、最近こういう展開多くないか。

 それとも俺の気のせいなのか。


「お久しぶりですね、カインさん」

「⋯⋯ああ、久しぶり」

 声のした方を向くと、白く透き通った髪をなびかせながら、エメラルド色の瞳がこちらをじっと見つめている。


「──ミリア」

「はいっ!」

 その屈託のない笑顔は、数年経っても色褪せていなかった。


「そうだ、モモは?」

「モモさんは別室で治療を受けて、今はゆっくり休まれていますよ」

「そっか、それは良かった」

 その言葉を聞いた途端、体の緊張が一気に解けた。

 同時に疲れが一気に押し寄せてくる。


「それで、どうしてミリアがここに?」

「父がルドベキアに侵攻してしまったことはこちらもすでに把握しています。あのエドワード様もお亡くなりになってしまったと、斥候から聞いたときは驚きました」

「⋯⋯そう、か」

 信じていなかったわけではないが、これで本当に確定してしまった。

 学園に残った皆が、もうこの世にはいないということが。


「ですが、それと同じくらい驚愕の情報が入ってきたんです」

「それが──」

「黒竜」

「⋯⋯知っていたのですね」

 ミリアが意外そうな表情を浮かべたのを見て、俺は気づいた。そういえば、グレースに入学したことを彼女に伝えていなかったな。


「まあ、学園で直接見たからね」

「それは、すみませんでした。知らなかったとはいえ、配慮が足りていませんでした」

「いいんだ。それより、ミリアがここにきた理由を教えてくれないか」

「わかりました」

 俺がそう言うと、ミリアは頭を上げ、もう一度俺を見つめ直した。


「このシモウサには、その黒竜を倒すための兵器があるとの噂があるのです」

「──それは、本当なのか」

「はい。父が昔、そう言っていたので、確かだと思います。てっきり、カインさんもそれが目的でここに来たのだと思っていました」

「いや⋯⋯」

 ナガマサさんは、なぜその存在を教えてくれなかったのか。いや、そもそもその話が嘘である可能性もある。

 しかし、もし本当にその兵器が存在するのなら、これ以上求めるものはない。


「これから、シモウサの長老様にご挨拶も兼ねて、その話を聞きに行こうと思っていたのですが、カインさんもご一緒にいかがですか?」

「もちろん。俺もその兵器の話について聞きたいと思っていたところ」

「それは良かったです。それでは、申し訳ないのですが、今からでも大丈夫ですか」

「ああ、そのほうが都合がいい。今の俺たちには時間がないからな」

 俺はゆっくりと布団から起き上がり、全身の痛みをこらえながら、その長老の元へ向かった。

ここまで御覧いただきありがとうございます。

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