間話 ウィル対カルロ
「その舐めた態度をこのオレにとったこと、今すぐ後悔させてやるよ」
「⋯⋯そうですか」
「てめえっ!」
カルロは走り出してウィルに接近するも、振り下ろした剣は空を切る。
「な、避けてんじゃねえよ! ウィルのくせに」
⋯⋯ずっと、兄が怖かった。
同じ年に生まれたはずなのに、兄には恵まれた身体があって、力があって。逆らっても、その体格差の前に僕は何もできなかった。だからいじめられても、抵抗はできなかった。
⋯⋯いや違うな、しなかったんだ。ただ早く終わることだけを祈って、我慢してた。そのほうが、楽だったから。
「おいっ、なんで、当たらねえんだよ! 」
でも、そんなときに彼が現れた。彼は僕を助けてくれた。でも、兄がいなくなった後、彼は僕以上に震えていた。
彼は強かった。カルロなんかと比べるまでもなく、強かった。でも、震えていた。
その時にわかった。彼は怖がりなんだと。
「いい加減にしろ! お前とあいつのせいで全てが台無しだ。大衆の前で、恥をかかせてやる予定だったのによ!!」
なにかに怯え、誰よりもなにかを恐れている。最初は僕と同じだと思った。でも、それはすぐに否定された。
彼は強かった。僕なんかと比べるまでもなく、強かった。彼には立ち向かう勇気があった。
怖いはずなのに、そのせいで震えているはずなのに、それでも彼は歩みを止めなかった。
──僕は、そんな彼に憧れた。彼みたいになりたいと思った。
だから、これは第一歩だ。憧れに近づくための。
もう、兄に構っている暇はない。彼はこうしている間にも、どんどん前に行くから。
でも⋯⋯
「おいっ、なんか言えよ!!」
「──ありがとう」
「は?」
「兄さんがいたから、僕は強くなれた。『支援魔法 身体増強』」
体が白い魔力で覆われる。
兄という恐怖の対象がいなかったら、僕は彼に会えていなかったかもしれない。自身の才能に気付けなかったかもしれない。その点では感謝してる。
「もう、終わりにしましょう」
たった一振り、それだけで勝負は決まった。
兄は弱かった。今思えば、いつも僕を複数人でいじめていたのは、怖かったのだろう。
自分より下だと思っているやつに抵抗されることが。
──そして、それに万が一にも敗北することが。
「カインさんはどうなったかな」
すると、爆発音がした。
急いで向かうと彼の姿があった。兄と同じように横たわる彼の姿があった。
彼は今日、敗北するかもしれない恐怖と闘った。兄と違って、真正面から立ち向かった。
僕はすぐさま目の前にあった水晶を破壊した。
「素晴らしい勝負でしたよ、カインさん」
彼は僕の憧れだ。
彼が敗北しても、その気持ちが揺らぐことはなかった。
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