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第六十五話 休憩

「それじゃあ、いきます⋯⋯!」

「ああ、魔力の流れを意識するんだぞ」

「はいっ!」

 ナガマサのアドバイスを意識して、俺は全神経を集中させた。手のひらから伝わり、鞘へと流れ込む魔力の痕跡を辿りながら、慎重に操作していく。鞘全体にも刀気を纏わせ、過剰な魔力で崩壊しないように細心の注意を払う。


 ここで最も重要なことは、鞘に纏わせる魔力の加減だ。もしも鞘に魔力が行き過ぎてしまえば、内部の魔力密度が薄まり、技そのものが不発に終わってしまう。


 もう少し、鞘内部の魔力密度と刀気で補強した鞘の強度が均衡するギリギリを狙うんだ⋯⋯


 すると、薄っすらと刀と鞘の隙間から魔力が漏れ出し始めた。


 ──今っ!

 俺は勢いよく抜刀した。しかし、パリンという甲高い音が響くと、振り切る前に刀身が砕け散った。


「なっ、そんな⋯⋯」

「抜く直前まではよかったが、刀身自体を纏っていた刀気が途切れたな」

「くっ、頭ではわかっているんですけどね⋯⋯」


 俺は砕け落ちた刀の破片を拾うと、すぐに先程の感覚を忘れないようにと、新しい刀に持ち替えた。


 鞘とそれに収まっている刀身を同時に魔力で強化する。しかも、それを鞘内部を魔力で満たしながら行わなくてはいけない。


 ⋯⋯さすがは秘技といったところだ。今の俺じゃあ、できたとしても実戦では到底使えない。あまりにも、時間がかかりすぎてしまっている。

 それに、刀による個体差もある。ナガマサが感覚を掴ませようとしている理由は、おそらくそこにあるのだろう。常に同じ状態の武器なんて存在しない。だからこそ、どんな刀でも対応できるように感覚を磨け、ということだろう。

 もっとだ、もっと試行回数を増やして、感覚を掴まないと⋯⋯


「──おい、カイン」

 そのためには、まず鞘と刀身を同時に強化することに意識がいき過ぎている点を改善しないと。それに、魔力の消費量が多すぎるのも問題だ。これだとできても一回が限界⋯⋯


「おい、聞いてるのか!」

「は、はいっ」

 俺はすぐさまナガマサの方を振り向こうとした、が、足が思い通りに動かず、そのまま地面に倒れ込んでしまった。


「あ、あれ⋯⋯」

「はあ、お前、魔力切れを起こしていることにも気づいてなかったのかよ」

「魔力⋯⋯うぷっ」

 その事実を認識した途端、魔力切れ特有の吐き気が遅れてやって来た。

「は、早くポーションを⋯⋯」と手探りで周囲を探してみるが、そこに転がっているのは空になった瓶ばかり。


「ポーションならもうないぞ」

「そういえば、さっきので切れたんだった⋯⋯」

 その様子を見ていたナガマサは、はあ、とため息をつくと、懐から小袋を取り出し、俺の目の前に落とした。


「これで追加のポーション買ってくるついでに、今日一日休んでこい」

「⋯⋯まだ秘技を習得できてないのに休むだなんて」

「オレの言うことが聞けないのか?」

「⋯⋯わかりました」

 正直、ここで休んでいる暇なんて俺には無いはずだ。

 ──納得はできない、でも従うしかない。


 俺は、小袋を持ってゆっくり立ち上がると、渋々街に向かって歩き出した。

 校門前まで来ると、そこにはちょうど見知った人影があった。


「⋯⋯あれ、ウィルがなんでここに?」

「カインさん、実は先程まで学園長と特訓していたのですが、今日一日休めと言われてしまって」

 どうやら、ウィルも俺と同じ境遇だったようだ。


「それなら、少し買い物に付き合ってくれない?」



 /////



「なんだか久しぶりですね。こうしてゆっくり休めるのも」

「ああ、ここ最近はずっと特訓づけだったからな⋯⋯」

 厳密には、特訓が開始してから二週間ほどが経過しているのだが。ナガマサの話によると、対抗戦の日まで残り一週間を切っている。それなのに、俺は未だに秘技の発動すらできていない。対して、今もベルは着実に力をつけているはずだと思うと、気が気でならない。


 ──ただ、それはナガマサも気づいているはずだ。わかっていて休むように言ったということは、それほど俺に余裕がないように見えたのだろう。

『休むのも訓練』

 昔、グラジオにそう注意されたことがあったな。


「せっかくだし、なにか気分転換でもしようか」

「そうですね、僕も学園長にそう言われましたし。しかし困りましたね、僕はあまりそういうことに詳しくないので⋯⋯」

「うーん、困ったな。俺の場合はこの街に詳しくないからな」

 俺はなにかないかと周囲を見渡していると、視界にふとよく見知った建物が飛び込んできた。


「ここはたしか⋯⋯」

「どう、されましたか?」

 ──ふっ、今日はやけにグラジオとの思い出が蘇ってくる。そうだ、たしかに気分転換するならここ以外ありえないな。


「ウィル、気分転換に最適な場所、見つけたよ」

「本当ですか! それでは早速、そこに行きましょう」

「ああ、ところでウィル⋯⋯」

「はい、どうされました?」

 純粋無垢なウィルに向かって、俺は最悪な一言を放った。


「お金、持ってる?」

「へ?」

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