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第六十二話 訃報

 それは突然やってきた。


「あなたがナガマサさんですね」

「ん? ああ、そうだけど」

 話しかけてきたのは、このシモウサでは滅多に見かけない豪華な装飾を施したアーマーを身にまとった男だった。だが、特に目を引いたのは、先頭に立つ一人がこれ見よがしに抱えている布で包まれた縦長の物体。


「こちらナガマサさんにと国王様からお預かりしたものです」

「国王が俺に?」

「見ていただければお分かりになるかと」

 その男はゆっくりと布を外す。その中から現れたのは一本の刀。


「おい、なんでてめえらが持ってるんだ⋯⋯?」

 柄の色、鍔の形、刃紋。すべてが見覚えのあるものだった。誰の刀か、即座に理解した。だが、侍にとって刀は命そのもの。それを他人が手にする理由が、どうしてもわからない。


「なぜてめえらが⋯⋯『リンドウ』の刀を持ってるんだ?」

 あいつは絶対に自分の命を他人に触れさせるやつじゃない。それがたとえ、あの度を超えた底抜けに優しいあいつでも、だ。

 なのに、目の前にあいつの刀がある。それから考えられる、可能性は一つ。


「リンドウ様は、お亡くなりになられました」

「⋯⋯ッ!!」

 考えるよりも先に手が出ていた。ドンッという音と共に、アーマーを纏っていた兵士は壁に強く叩きつけられ、そのまま力なく崩れ落ちた。


「⋯⋯あいつが、死ぬはずねえだろ。あいつの実力はおれが一番良くわかっているんだからな」

 ──そうだ、あいつがそう簡単に死ぬわけがない。

 でも、ならばなぜここにあいつの刀があるんだ? 

 どうしてこいつらが手にしているんだ? 

 こんなやつらに奪われたとでも言うんか。いやそれのほうがありえない話だ。


 じゃあ、本当にあいつは⋯⋯


「おい、本当なら説明してみろよ。なんで⋯⋯なんであいつは死んだんだ!」

「リ、リンドウ様は、殺されたんです⋯⋯!」

「⋯⋯ッ!!」

 一瞬で繰り出された拳が、兵士のヘルメットのすぐ前で止まった。その衝撃波だけで、周囲に砂埃が巻き上がる。


「おい⋯⋯それ以上冗談を言ってると、殺すぞ」

「──ほ、本当でございます!! リンドウ様は戦闘で消耗していたところを⋯⋯」

 あいつが誰かに殺される? そんな馬鹿げた話、あるはずがねえ。あいつは超がつくほどのお人好しだが、その欠点すら意味を成さないほどの化け物だ。それこそ⋯⋯


「リンドウ様のお『仲間』に裏切られ、殺されたのです!!」

「⋯⋯なん、だって」

 ──それこそ、オレが考えつく、唯一のアイツが死ぬ可能性だった。


「だが、いくら仲間だと言ってもあいつを殺すのは不可能だ。それも、すこし消耗していたぐらいじゃ歯が立たねえはず⋯⋯」

「リンドウ様は最難関クエストに挑まれていたのです」

「おいおい、最難関ていったら⋯⋯」

「──そうです、あの『黒竜』の討伐です」


 不意にリンドウの言葉が頭をよぎった。

『今度は師匠も腰を抜かすくらいの話を持ってきますね』


「⋯⋯だからあいつあんなことを」

「そしてその討伐に失敗し、重症を負ったリンドウ様をお仲間である『小人族・人族・異世界人』の計3名が裏切り、殺害したと国王様から聞き及んでおります」

「⋯⋯クソッ!!」


 ──なにが仲間に恵まれてるだよ。育ての親より先に死にやがって。


「おい婆さん!」

「はいはい、なんだね」

 リンドウの呼び声に応じて現れたのは、その言葉通り、一人の年老いた女性だった。


「このこと、ツバキには伝えないでくれ」

「わかったよ。それで、どうするつもりだい。止めたって聞きゃしないんだろ?」

「弟子がやられたってんだ、オレもこの村を離れる。その間、ツバキの世話を頼んだ」

 老婆はやれやれと息を吐きながら、深く頷いた。


「死ぬんじゃないよ」

「ああ、当たり前だ」


 ──そして、その半年後にオレは左腕を失った。


 ////


「黒竜って、そんなに強いんですか?」

「ああ、オレが奴と遭遇した時、すでに村が一つ焼き滅ぼされた後だった。⋯⋯歩く『災厄』、奴は間違いなく、最強だ」

 ナガマサの表情が一瞬、険しくなるが、すぐに「ま、気にすんな」と言いながら立ち上がった。


「それでだ、カイン。お前、来月にあるクラス対抗戦のことは知っているか?」

「いえ、初めて聞きました⋯⋯」

「なに、毎年ある学園の行事でな、簡単に言えばクラス別の総当たり戦だ」

「それがどうしたのですか?」

 そう問い返すとナガマサはニヤリと笑って答えた。


「いつもはな、オレのDクラスはCクラスと戦うはずなんだが、今年はなぜかAクラスと戦うことになったらしい。たしか、お前の仲間に空手バカと戦ってAクラスになった獣人がいたよな?」

「ベルの⋯⋯ことですね」

「なるほど、ベルっていうのか。あれは逸材だ。今のお前だと確実に負けるだろうな」

 否定できない現実に、俺は黙って「はい」と返事をした。すると、ナガマサは手に持っていた木刀の先を俺に向けた。


「ま、俺が鍛えてやるから、残り一ヶ月で、お前はそいつに勝てるようになれ。いいな」

「⋯⋯はいっ!」


 こうして、俺とナガマサの本格的な特訓が開始された。

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