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第四十九話 目的地

「第一王子⋯⋯」

 思わず確認も兼ねてその言葉を繰り返した。

 アイルに続いてルドベキアでも⋯⋯、俺はどうやら王族と因縁があるようだ。

 ⋯⋯うん、全然嬉しくない。


 もしあいつが本当に王子なら、彼の言う通り、試験は邪魔されるに違いないだろうな。

 でも、不思議と不安はない。

 もうあのときとは違うんだ、何事からも逃げてきた自分とは。


「だとしても関係ないさ」

「え⋯⋯」

 それに、仮にこうなるとわかっていたとしても俺は間違いなく彼を助ける。

 これは同情なんかじゃない。

 それで後悔するのが怖いからだ。


「行こう。一緒にあいつを見返してやろうぜ」

 俺は彼の手を掴んで一緒に立ち上がる。

 人を助ける理由なんてのは、自己満足で十分だ。

 だって俺は⋯⋯そんな立派な人間じゃないから。


「そうだ、俺の名前はカイン、カイン・レリウット。君の名前は?」

「⋯⋯」

 すると金髪の少年は土埃が付いた顔を上げた。


「ウィル」



 //////



 その後、俺はウィルとともにツバキたちのもとへ合流した。


「⋯⋯てなわけで、ウィルも一緒に行くことになった」

「それは構いませんが、どうやら厄介な人に目をつけられたようですね」

「すみません、僕のせいで⋯⋯」

「君が謝ることないさ、それに、うちのカインなら心配はいらないよ」

 謝るウィルにすぐさまツバキが反応する。

 ツバキの様子を見るに、慰めとかではなく本当に心配してないようだった。


「⋯⋯なにニヤニヤしてるんですか」

「えっ?!」

 どうやら顔に出てしまっていたらしい。

 あぶないあぶない。

 俺のクールキャラが崩れてしまうところだった。


「もう⋯⋯ほら、見えてきましたよ」

「⋯⋯おおっ!」

 モモの視線の先、そこにはうっすらと身長の何倍もの高さまで何重にも積まれた石レンガ造りの城壁がそびえ立っていた。

 その真正面には校門のようなものが堂々と立っており、その門をくぐって続々と俺たちと同じくらいの歳の人達が中へ入っていく。


 多種多様な種族、多種多様な武器。

 きっとここにいる全員が試験を受けに来たのだろう。


「さすが、父さんがああ言っただけあるな」

「ああ、そして⋯⋯ここで(うち)とは一旦お別れだな」

「え?」

「当たり前だろう? 元々ダインたちとはカインが試験を受けるまでっていう約束だったんだからな」

「それは、そうですけど⋯⋯」

 そうか、すっかり忘れていた。

 いつの間にかずっと一緒にいるものだとばかり⋯⋯。


 だってそれもそのはず。

 俺が師匠とあったのは六歳のとき。

 言い換えれば四年近くも一緒にいるのだ。

 それもただの四年じゃない。

 毎日が、前世では比べられないほどに濃い四年間だったんだ。

 今更師匠がいない日々は⋯⋯正直思いつかない。


 俺が言葉に詰まっていると師匠はフンと鼻を鳴らしてやさしく俺の頭に手を置いた。


「なに、落ち込むことはないさ。またすぐ会えるさ」

「⋯⋯そう、ですね」

 どうやらバレバレだったようだ。

 さすが、俺が考えていることなんてお見通しらしい。

 師匠の言う通り、これは一生の別れじゃない。


 ──すぐ会える、か。

 ⋯⋯ああ、ほんと、叶わないな師匠には。


「師匠は、これからどうするんですか?」

(うち)か? (うち)は──父の手がかりを探そうと思う」

「師匠の父、ですか⋯⋯?」

「そうだ、父は冒険者だったんだがある日、突然姿を消した。私が冒険者になったのはすこしでもその父の手がかりを見つけるためなんだ」

 その時の師匠はいつになく真剣な眼差しをしていた。

 その目を見て、俺はギュッと拳を握りしめる。


「きっと見つかりますよ、師匠なら」

「ああ、ありがとなカイン」

「⋯⋯はい、こちらこそ、ありがとうございました師匠」

「私からも、ありがとうございました、ツバキさん」

「おう!」

 それを聞いたツバキは微笑むと、ゆっくりと後ろを振り向いた。

 俺とモモもそれに合わせて回れ右をする。


「さあ、行こうかみんな」

 その声に合わせて、師匠と弟子は背中合わせのまま、お互い第一歩を踏み出す。

 それぞれの、目的のために。


「ここまで、あっという間だったな⋯⋯」

「ええ、そうですね」

 俺たちは人混みの中を進み、そして高い高い校門を抜ける。

 すると校門前の人混みが嘘のように広い空間に出た。

 中央には大きな噴水、その先にはザ・異世界の学園を彷彿とさせる時計台の数々。


「ああ、ここが俺たちの目的地⋯⋯!」

 俺は、高ぶる思いを乗せて、その名を言った。


『魔法学園 グレース!!』


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