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第三十九話 時間稼ぎ

「オラオラ!もっと来いよ!!」

 仲間を傷つけられ頭に来ていたダインは数多の衛兵が襲ってきても、その勢いは衰えることを知らずただただ蹂躙していく。


「ふんっ⋯⋯!」

 ベルもそれに負けじと持ち前の速さを生かして敵を翻弄する。


 そのおかげで俺とミリアは最低限の衛兵の相手をしながら順調に進むことができている。


 よし、この調子なら⋯⋯!

 そう俺が考えた瞬間だった。


「まさか、そう簡単に行かせるとでも思っているのかい?」

 それは耳元のすぐ近くで聞こえた。

 急いでその方向を見ると目の前には奴がいた。


「やあ」

 ザクはまるで知り合いとすれ違ったときに交わす軽い挨拶を俺にすると、気づいたときには俺はわけも分からぬまま吹き飛ばされていた。


「ぐはっ⋯⋯!!」

 壁に強く打ち付けられ身体に衝撃が走った。


 な、何が起こったんだ⋯⋯


「カインさん!」

 ミリアはこちらに振り向いてすぐさま俺のもとに駆け寄ろうとする。


 ⋯⋯が、

「来るな!」

 強い言葉でミリアを停止させる。

 俺のせいでここで立ち止まらせるわけにはいかない。

 刀の先を地面に付け、それによりかかりながら立ち上がる。


「先に、行っててくれ」

「⋯⋯っ!」

 その言葉を聞いたミリアは黙って振り向き、そしてまた走り出した。


「おや、仲間を置いていくとは薄情な妹だ」

 ザクは鼻で笑うように言うが、それはちがう。


「何いってんだよ、ミリアは置いていったんじゃねえ。

 ⋯⋯俺を、信じただけだ」

 黒い光沢を放つ刀をかまえ、早く波打つ心臓の音を落ち着かせるため、一度深呼吸を挟む。


「ん?まさかこの僕に君一人で挑むつもりかい?

 さっきの一撃でわかったよ。君、そんなに強くないよね」

「⋯⋯」

 どうやらさきほどからザクは、明らかに俺の癇に障ることばかり言うようにしている気がする。

 恐らく俺を苛立たせようとでも考えているのだろうか。


 だがそれなら残念だったな。

 俺はすでに前世で耐性が付いてるんだ。


「⋯⋯ああ、そのまさかだよ」

 俺は身体強化してバフがかかった足で一気に踏み出して接近した。

 一応これは俺の中では奇襲、のつもりだった。

 突然のことに反応が遅れ、魔法の展開も間に合わないはずであると。


 俺はコンマ数秒にも満たないうちに、刀を大きく振りかぶり、そのまま振り下ろそうとした。

 だが、それよりも先に俺とザクの間に土の壁が突如として出現した。


「くそっ⋯⋯!」

 刃がカキンと音を上げて弾かれるが、その勢いを使って、俺はそのまま後方へと着地する。


 今のは俺も何度か使ったことがある。

 中級魔法『アースウォール』

 いくら俺とは違って詠唱が必要ないからといって、まさかあの一瞬ですらダメだとは⋯⋯


「ほらね、君じゃ僕に敵わないのわかったでしょ?」

 なんとか余裕をなくそうとしたのにどうやら逆効果だったみたいだ。

 むしろ、これで自信がついただろう。

 俺には負けることはないだろうって。


 ⋯⋯まあ、俺もはなから勝てるとは思っていないけどな。


 俺の役目はただの時間稼ぎ。

 ミリアがたどり着くまでザクの邪魔さえ出来ればいい。


 覚悟しろよ。

 俺の全てを使って1秒でも長く足止めさせるからよ。


「へえ⋯⋯」

 ザクはすぐさま武器をまたかまえる俺を興味深そうに見つめる。


「おもしろい、君の作戦に乗ってあげるよ」

 薄ら笑みを浮かべながらザクは両手にそれぞれ別々の魔法を展開する。

 右手には炎属性の球体を。

 左手には風属性の球体を。


 どちらもおそらくは中級魔法レベルの威力はあるだろうか。

 普通一度に複数の属性魔法を出すのは難しいはずなんだが、さすが良くも悪くもミリアの兄だ。

 あれをもろに喰らえば軽傷では済まないだろうな。


 最悪の想定をしながら、俺は戦闘態勢に入る。

 さあ、集中しろよ俺。

 一歩間違えればゲームオーバーだ。


「どうやら準備はいいようだね。

 頼むから──()()()()()()()()()()()()()()

「⋯⋯ああ、言われなくても」


 ツーと緊張と焦りが混じった汗の水滴が俺の頬をつたい、最後は地球の重力に負け、それは地面に落ちる。


 ──ポチャン。


 それが、開始の合図だった。


 ザクの両手から放たれた二つの物体が発射されるのに合わせて、俺は回避だけを考えて行動する。


 間一髪のところで避けたあとに、着弾した跡を確認する。


「やっば、威力高すぎだろ⋯⋯」

 先程までいた場所の悲惨な光景を見て、分かっていたとはいえ、これだとどうやら反撃する暇はなさそうだ。



 /////


『フレイムアロー』

『ウォータースピア』

『ロックショット』

『ウィンドカッター』

 これは先程からザクが使っている魔法の名前だ。

 これらにはひとつ共通点がある。


 全て中級魔法なのだ。

 それがどうしたと思うだろうが、考えてもみてくれ。

 確かに威力はあるが、俺を倒すならこんなばかりを使うより、上級魔法を使った方が手っ取り早いはずだ。


「⋯⋯頼む!『アースウォール』!」

 あとみんなは忘れているかもしれないが俺だって中級魔法までなら使うことができる。

 中級魔法と中級魔法がぶつかったらどうなるか。


 相殺だ。

 出現した土の壁はザクの魔法と衝突し、ボロボロと崩れていくが、それで防げてしまう。


 ミリアから聞いた話だと、ザクは十中八九上級魔法を使えるはず。

 なのに使わない。


 まるで、俺が少しづつ傷つくのを楽しむためにそうしてるかのように⋯⋯


「⋯⋯どうして、お前は戦争なんか始めようと思ったんだ」

 俺はずっと気になっていたことを聞いてみた。

 時間稼ぎとかではなくただ単純に興味として。


「なんだい、グラジオのやつは言ってなかったのかい。

 ──なら、教えてあげるよ」

 ザクはすんなりと答えてくれたが、それと同時に、ザクの表情から今までのは嘘だったかのようにすっと笑みが無くなっていった。


「僕の目的はただ一つ⋯⋯」

 この時、俺は初めてザクから明確な殺意を向けられた。

 それもただの殺意じゃなく、一朝一夕では産まれることのない、底が見えないくらい深い憎悪が詰まったものが。


「君たち、『人族』を滅ぼすためさ」

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