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第三話 身体強化

 こどもの成長は早い。

 中身は三十ちょいのおっさんだけど。


 あれから訓練を続けていくうちに、木剣を持つだけで精一杯だったのが、自由自在に振れるわけではないが、それなりに様になるくらいには成長できていると思う。


 魔法もコツを掴んでからは使える種類が順調に増えて、ルミアも大喜びだ。

 まだ日常で使えたら便利くらいの威力しか出せないけど、いつかはアニメや漫画みたいに強力なのを出せるようになるかもしれないと考えるとやっぱりワクワクが止まらない。

 どうしよう、爆●魔法とか使えたら⋯⋯


「エ●スプロージョン!!」と、試しに叫んでみたが流石に何も起こらなかった。


 ただ、「どうしたの?」と様子を見に来たルミアにちょうどその恥ずかしい姿を見られたが⋯⋯危ない危ない。

 子供じゃなかったらただのヤバイやつと見られてしまうところだった。

 ああ本当に、子供で良かった⋯⋯


 そんな特大のダメージを受けた今日は、実は俺の五歳の誕生日。


 この世界では、誕生日は五歳、十歳、そして十五歳と区切りの良い五の倍数で盛大に祝うことが多いらしい。

 ちなみに成人は十五歳だそうだ。


 そのため今日は朝からお祝いムードだった。

 ダインからは「そろそろ渡さないと思っていてな」と普段使う木製のものではなく、鉄製の剣を一本受け取った。

 ちゃんと刃が研がれている本物の剣だ。


 ダインいわく、まだ使わせるわけにはいかないらしいが、これが似合う男になれという思いを込めてだそうだ。

 流石に前世でも一度も触ったことがない真剣を前に、興奮と緊張が混ざりあって複雑な気分だ。


 そんな気も知らずに、ダインは早く俺があげた真剣を使う息子が見たいからとかなんとかで、明日からは本格的な鍛錬を始めることにしたらしい。

 いまであれだけボコボコにされていたのに、更にフルボッコにされるのだろうか。


 ──不安で仕方がない。


 次にルミアからは魔法書をもらった。

 俺が今まで教えてもらっていた魔法はいわゆる基礎。

 威力もなく、比較的安全に使える。


 しかし、この魔法書に乗っている魔法は初級から中級魔法まで。

 威力もあがるが、その分必要な魔力量も上がってしまう。


 魔法には、制御するための方法として詠唱というものがある。

 詠唱を挟むことでそれが一種の制御装置となり、一定の火力で魔法を発動できるが、挟まなかった場合、術者自身の力で魔力量を調整しなければならないらしい。

 超級魔法とやらは、みんなが想像するように長ったらしい文言が必要らしいが、それ以外の魔法は、俺が初めて魔法を使ったときのように、その魔法名を呼ぶだけだそうだ。


 ちなみに制御できなかった場合、魔力暴走が起きてしまい、本人だけじゃなく周りにも被害がでてしまうそうだ。

 そのため、詠唱について書かれているこの魔法書は魔法を使い始めた者にとっては必要不可欠なのだそうだ。


 二つとも、今の俺にとっては必ず必要になってくるもの。

 一生懸命俺のことを考えて準備してくれたんだろう。


「ありがとう。お父さん、お母さん」

 そう言うと二人は俺をぎゅっと優しく抱きしめられた。


「あと、もう一つプレゼントとして⋯⋯」

 そう言うとルミアは特大の笑顔で。


「あなたに弟か妹ができるわよ!」

 と、超重大発表をした。


 ⋯⋯え?

 弟か、妹⋯⋯?


 どうやらルミアは、これまでのプレゼントが薄れてしまうほどのサプライズを残していたようだ。


 ///


 翌日からダインの宣言通り、本格的な指導が始まった。


 剣の素振りから、技、立ち回りまで。

 確かに今までの内容とはレベルが格段に上がっている。


 しかし、教えられている立場としては申し訳ないが、俺の頭は弟か妹ができるという話題でいっぱいである。

 もはや何一つ入ってこない。


 ダインは「カインの誕生日に間に合わせることができてよかった」と満足そうに頷いているが、それはつまり俺が寝ている間に今までその⋯⋯していたということだろう?

 確かに九時を過ぎたら眠気に耐えれず寝ていたが。


 意地悪として「どうやって作るの?」とでも言ってしまおうか。

 まさかこのセリフを言える日が来るとは思いもしなかった。

 どんな反応をするんだろうか。

 少し楽しみだな。

 と、そんな事を考えていたら。


「おい、集中しろ」

 とダインにコツンと頭を木刀で叩かれてしまった。


「これらはお兄ちゃんになるんだから守れるくらい強くならなくちゃいけないんだからな」

 これまで弟や妹なんていたことがなかったから実感がわかなかったが、まあ確かにダインの言うとおりだ。

 仮に弟だったとしたら、弟より弱い頼りない兄にはなりたくないからな。

 妹だった場合、そりゃあ、死ぬ気でいいところを見せなくてはな。


 どうしよう、お兄ちゃんとか言われたら。

 ⋯⋯おっと鼻の下がどうしても伸びてしまう。


 そんな俺の姿をみて、はぁとダインはため息を出す。

 ゴン!と次はもう少し強めに木刀を振り落とされたので、今度はちゃんと切り替えて訓練に集中した。


「よし、じゃあ今度は剣士だけじゃなく、戦う奴らだったら絶対必要になる身体強化について教えるぞ」


 身体強化はその名の通り、体に魔力を纏わせて身体を強化する技だそうだ。


 この技を使えるようになると多少の攻撃を受けても平気になるし、人によっては足の速さが上がったり、筋力が上がったりするのが特徴的だそうだ。

 それを使いこなせるようになると、それこそ超人のようになれるらしい。


 ダインが言うには、技自体は難しくないが一番の問題はそれを継続させることにあるそうだ。

 いくら超人になれたとしても、それが1秒だけとかだったらあまり使い物にならないからな。


「身体強化のコツは簡単だ。魔力を服とかに置き換えて、それを纏う感じだ」


 あれ、実は意外とダインは大人げないだけで教えるのは上手なのかもしれないな。

 すっと頭に入ってきた。


「それじゃあ、やってみろ」

 ダインの助言通り、魔力を手袋にイメージしてそれを、はめる動作をしてみる。


 するとイメージ通り、薄い光が手を包む。

 成功しているか確かめるためにも木剣を持ってみると、


「すごい⋯⋯!」


 今は手だけだが明らかに剣が軽く感じる。

 それに筋力不足も腕だけがないような感触だ。


 これが『身体強化』⋯⋯

 確かにこれは戦闘においてはこれほど便利なものはないだろう。


「大丈夫そうだな。それじゃあ、これを受けてみろ」


 そう言うとすぐに、ダインは地面を蹴って切りかかってきた。


「え、うそ⋯⋯!」

 あわてて剣で防いだ。

 さすがに全力じゃないのはわかるが、それでも子供にとっては強烈な振動が手に響く。

 いつもならここで剣を手放してしまっているだろうが、目を開いて手元を確認すると木剣はちゃんと手の平に収まったままだった。


「継続も問題なさそうだな」

 こちとら驚かせられたのに、その様子を見てケラケラ笑うダインに少しムカッときてしまった。


「お父さんせっかくですし、お互い身体強化した状態で戦ってみませんか」

 つい口走ってしまったことを俺はすぐに後悔した。

「いいぞ」と答えたあと、身体強化を使ったダインは体格に差があるとはいえ、想像以上の強さだった。

 動きが一切見えず、何もさせてもらえなかった。


 このとき、改めてダインの凄さを実感した。


「調子に乗ってすみませんでした」

 素直に謝った。


 またもケラケラと笑うダインだが、

「しかし、この調子だとそろそろ狩りに連れて行っても良さそうだな」

 とぼそっと何やら面白そうなことをつぶやいたのを俺は聞き逃さなかった。

ここまで御覧いただきありがとうございます。

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次話もぜひ読んでください。

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