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第三十五話 対戦開始

 同じ一番隊として寝食をともにした仲間たちが目の前で殺されていくのを見た。


「ここは私達が食い止めます!隊長、ミリアお嬢様をお願いします」

 アイルから脱出して逃げていく間に一人また一人と減っていった。


 どんなに私が相手しようとしても、笑って自分が行くと言って聞かなかった。

 相手は最恐の暗殺者無音(サイレント)

 一人だと時間稼ぎはできても、勝てないのは明らかなはずなのに。


 馬鹿な人たちでした。

 でも、私はそんな君達がミリアお嬢様と同じくらい、大切で大好きでした。


 あなた達は私からそんな人達を奪ったのにも関わらず、さらにお嬢様まで奪おうとする。

 無音(サイレント)、あなたはただ依頼をこなしているだけ。

 全ての原因はザク様にある。


 ⋯⋯そんなのわかっていますが、この胸の奥からたぎってくる怒りはそれを許しません。

 自分勝手で申し訳ないのですが、仇を──取らさせてもらいますよ。


「いきます」

 グラジオがその言葉を放った瞬間。

 彼は無音(サイレント)の目の前から姿を消した。


 そして、気がついたときには彼は無音(サイレント)の背後に立っていた。


 無音(サイレント)は即座に振り向くが、そのときには既にグラジオの攻撃の準備が整っている。

 片手で振り抜かれた一撃は、槍で防御したのにも関わらず、無音(サイレント)はそのまま数十メートル先の壁まで吹き飛ばされた。


 これは無音(サイレント)にとって初めての経験だった。

 今までにもフルアーマーの敵は何人もいた。

 だが共通してそれらは全員動きが大きく、遅かった。

 だがそれもそのはず、何十キロという鉄の塊を纏っているのだ。

 俊敏に動けるはずがない。


 そのはずなのに、今相対している敵はなぜ私すらも追えない速度で動けるのだ。

 理解ができないまま、壁に強く体が打ち付けられ、 ドゴォォンという音と吹き上がる大量の砂埃がその威力を証明する。


「⋯⋯すごい」

 ミリアも初めて見る光景だった。

 これがグラジオの全力⋯⋯

 今の彼を見て、実感する。

 彼は一番隊隊長、この国でお父様に次ぐ実力者であると。


「もう容赦致しません。ザク様、ご覚悟を」

 ミリアお嬢様を守るためにも、ためらってはいけない。

 剣を静かに構え、ザク様に振り抜こうとしたときだった。


 突如、ヒュンッと砂埃の中から複数の暗器が現れた。

 そして、その矛先はグラジオではなく──ミリアだった。


「くっ!!」

 急遽グラジオはザクに向けるはずだった剣の方向を変え、間一髪のところで切り落としてみせる。


「ふふっさすがだよ、グラジオ。やはり君は恐ろしいほどに強いね」

 先程の暗器、流石に最恐と恐れられる暗殺者がたったこれだけで倒されるはずがない。

 パッパッと服にかぶった砂を手で払いながら、何事もなかったように無音(サイレント)はまたザクのそばに現れる。


「どうやら僕は間違っていなかったようだ」

「何が⋯⋯言いたいのですか」

 不気味なまでに焦ることのないザクを前にグラジオはより警戒する。


「グラジオ、僕が暗殺者に依頼したのは本当はミリアじゃなく⋯⋯」


「──君なんだよ」

「なっ⋯⋯」

 予想外の事実に思わず声が漏れる。


「どういう、ことですか」

「お父様を封じた今、この国で一番の脅威が君だからさ。『一番隊』、この国の最高戦力こそ支配する上で邪魔なものは無いだろう?」

 どうなっているんだ。

 無音(サイレント)は確かにお嬢様を狙っていたはずだ。

 今だってお嬢様に攻撃が⋯⋯


「ここまで大変だったよ、僕がなぜミリアが狙われていると思わせたかわかるかい?」

 グラジオの返事を待たずして、ザクは続ける。

「それは、君がミリアから離れられないようにするためさ」


「グラジオを私から離れられないようにするため⋯⋯?」

 ミリアは理解できなかった。

 なぜグラジオを私の近くにいるようにしなければならなかったのか。

 王女の私を殺して、完全にこの国を支配するのでは無かったのか。


「あれ、気づいていなかったのかい?」

 ザクはあざ笑うような目でミリアを見る。


「君こそグラジオの唯一で最大の、()()なんだよ」

「私が⋯⋯」

「そうさ、殺す気でミリアに攻撃をすればグラジオは死ぬ気でそれを防ぎに来る。たとえ自分を犠牲にしても。

 これほどわかりやすい弱点が他にあるかい」

 ザクは端からミリアなど眼中になかった。

 最初からグラジオを殺すための優秀な駒としか見ていなかったのだ。


「それにたとえ君を殺したとしてもグラジオが生きてたらそれだけで脅威だ。その点、グラジオが死んで君がたとえ生き残ったとして、()()()()()()()()()()()()?」

「え⋯⋯」

 ミリアはそれに何の反論もできなかった。

 私がここまでやってこれたのは全部グラジオのおかげだ。


 思い返せば、私はグラジオに守られてばっかりで、何かグラジオの役に立てていたことがあっただろうか。

 アイルから無事脱出できたのも、冒険者として活動していたときも。

 私は⋯⋯


 何も言わず俯くミリア。

 だがそれで良い。

 ミリアはいるだけでグラジオの弱点になるのだから。


「さあ、ここからが本番だよグラジオ。ちゃんとミリアを──」


「守ってあげなよ」


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