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第十八話 攻略

「はあ、はあ」

 あれから何時間経ったんだろう。

 道沿いに進めば進むほど、モンスターが湧き出るように出現する。


 いつもならこのくらい平気なはずなのに、今になって実感する。

 俺がモンスターを簡単に倒せていたのはみんなのおかげだったということに。


 モモとミリアの魔法で相手の動きを制限し、グラジオ、ツバキが攻撃を引き付けてくれていた。

 それがどれだけ俺の負担を軽減してくれていたことか。

 なんで今まで忘れていたんだろう。

 本当に馬鹿だな、俺⋯⋯


 後でいっぱい感謝しとこう。

 いや、グラジオに謝るのが先か。


 ⋯⋯なんだか疲れてきたな。

 いやここで弱音吐いてどうするんだ。

 まだ、もう少しだけ頑張ろう──


「カインさん、大丈夫ですか?」

 疲弊した俺を見て、ミリアは心配そうにこちらを見つめる。

 心配させまいとなんとか笑みを浮かべて、「大丈夫ですよ」とだけ返事をする。

 正直、体力はあまり残っていないけど、少しでも早くみんなと合流しないと。


「無理しないでください。私も少し疲れたので休憩しましょう」

 ミリアは進もうとする俺の袖を引っ張って引き止める。

 どうやら思った以上に無理をしていたようだ。

 それだけで少し体がよろめいた。


「⋯⋯ありがとうございます。そうですね、そうしましょう」

 落ち着くため、ふぅ、とその場に座り込む。

 すると一気に疲れが押し寄せてきた。

 危なかった、このまま進んでいたら確実に倒れていた。

 ミリアには感謝しかないな。


 ミリアも隣にゆっくりとスカートに手を添わせながら座る。


「⋯⋯」


 しばらく沈黙の時間が続いたが、それを破ったのは意外にもミリアの方だった。


「私、つい最近までアイルから出たことがありませんでした。アイルにいる住人の殆どはエルフで、それ以外の種族は珍しかったんです。ですので最初、カインさん、ツバキさん、モモさんのことが怖かったんです。特に人族の男性の中身は獣だとお父様に教えられていたのでカインさんのこと、ずっと避けてしまっていました」


「ごめんなさい」とほほえみながら言うミリアを見て、俺もつい笑ってしまった。

 どおりで俺だけ、やけに避けられていると思った。


「じゃあ俺、すごく怖かったでしょ」

「確かに、ちゃんと話すまでは怖かったですよ。でも、今では全くそんなこと思っていませんし、こうして気軽に話せるくらいには信頼していますよ」


 にこっと笑ったミリアはお父さんがそう心配するのがわかるくらい、見惚れるほどに綺麗だった。


「その期待に答えてみせるよ」

 こんなダメな俺でも信じてくれると言ってくれるなら期待を裏切るわけにはいかないな。


「よし、十分休憩できたし、行こうか」

 そう言って差し出した俺の手を、ミリアは掴んで立ち上がる。


「はい!」


 ///


 あれからミリアと頻繁にコミュニケーションを取るようになって、少し前とは見違うほどの連携が取れるようになった。

 モンスターと遭遇する間隔は大して変わっていないのに、さっきとはお互いの消耗度が明らかに違う。


「よし、このまま進んでいけば絶対みんなと合流できるから、もう少し頑張ろう!」

「はい!」


 俺とミリアはダンジョンに入る前とは違い、頻繁に言葉を交わし、鼓舞しあって二人でこの困難を乗り越えようとしている。

 ようやく俺たちは本当のパーティーになれたと、そう思った。


「⋯⋯ん?」

 すると前方の曲がり角から何か足音が聞こえた。


「よし、戦闘準備!」

 掛け声に合わせて、それぞれ直ぐに対応できるように戦闘態勢に入る。

 音が近づくに連れ、緊張が走る。


 しかし、曲がり角から現れたのは魔獣でも、モンスターでもなかった。


「お、お嬢様──!!」

「グラジオ!?」

 ずっと探し求めていたみんなの姿だった。


「カイン!!」

「師匠!!」

 みんなして再会の喜びを抱き合って喜んだ。


「全く心配したんだぞ」

 そう言う師匠の服はモンスターの返り血ですっかり色が変わってしまっていた。

 グラジオの鎧も同じ様な感じだ。

 本当に、急いでここまで向かって来てくれたんだろう。


「でもどうしてここにいることがわかったんですか?」

 それを聞いたグラジオは「これだよ」と酒場で見せてくれたペンダントを取り出した。


「これに魔力を込めると、お嬢様のいる方向に宝石が動く魔法が仕掛けられているんだ」

 グラジオが説明どおり魔力を込めると、宝石がミリアに向かってぷかぷかと浮かびだした。


「なんだ、進まなくても良かったじゃないですか」

 気が抜けて崩れ落ちるように倒れる。


「いや、これは方向がわかるだけでカインくんたちがここまできてくれなかったら合流できていたかわからなかったよ」

「ありがとう」と言われて少し照れくさかった。


「傷は大丈夫なんですか?すみません俺のせいで」

「かすり傷だからモモさんに治癒魔法で直してもらったよ」

 ほらと傷を負ったはずの場所を見せられたが傷跡一つなかった。


「よかった⋯⋯」

「ちなみに終わった感がでているが、まだ目的の素材を手に入れてないぞー」

 ツバキの言葉にそういえばと頭を抱える。


「さっきたまたま最深部の場所を見つけたんだ。そこにはもちろん、このダンジョンの(ぬし)がいたんだが⋯⋯」

 ツバキはちらりとこちらを見る。


「私達と少しいない間に二人共すごく成長したんだな。せっかくここまで来たんだし、行ってみないかい?」

 師匠がそう言ったら俺は止められない。

 もうただでさえ体は限界を迎えているのに、ボス戦だと⋯⋯


 前回説明したとおり、ダンジョンの奥深くは魔力の濃度が高く、特殊な鉱石が育つ。

 そしてそこには鉱石だけではなく、その場所を住処とする(ぬし)と呼ばれるモンスターが存在する。

 (ぬし)は魔力濃度が高い場所にいることで、素材としても魔核をとるためとしても最高級なのだが、その分、巨大なことが多く、何より手強い。


「今のカインとミリアなら大丈夫だ。(うち)が保証する」

 強引な言い方ではあるが⋯⋯

 全く、師匠にこう言われてしまっては退けないな。


「わかりましたよ。そこまでいってくださるなら」


 こうして俺たちはこのダンジョン最後の戦闘に向かうのだった。

ここまで御覧いただきありがとうございます。

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