表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/110

第十三話 ミリアとグラジオ1

 魔術師のモモが新しくパーティーに入ることになり、三人での旅がスタートした。

 モモの実力は、というと。


「いきます!中級魔法 バインド!!」

 この魔法は魔力で生成した鎖で敵を拘束するのだがどれだけ拘束できるかは術者本人の力量によって決まる。

 人によっては一秒と持たずに破られてしまうこともあるのだが。


「へえ、なかなかやるじゃん!」

 ツバキも認めるほど、腕は確かなようだ。

 イノシシの見た目をした魔物、ラッシュボアはその突進力からこの名がついたのだが、完全に動きが封じられている。


 動けない魔獣を仕留めるのは朝飯前だ。

 一瞬にして両断する。


「よし、これで晩飯は大丈夫そうだな」


 バースから旅立って数日。

 今の所、餓死しないで済んでいる。


 ツバキの食事量の多さのせいでバースにいたときの一番の出費は食費だった。

 旅は食材を自分で確保しないといけないため不安ではあったが、モモが入ったことで効率も上がって一日に取れる魔核も食材の量も大幅に増加している。

 流石のツバキも満腹になってくれるはずだ。 


 日も暮れてきたので今日のところはここにテントを立てて、料理の準備をすすめることにした。

 ふと、ラッシュボアの丸焼きの準備をしていたときに、大事なことを聞き忘れていたことを思い出した。


「そういえば俺たちってどこに向かっているんですか?」

「ああ、たしかに言ってなかったね」

 ツバキは微笑して次の目的地の名前を言う。


「今向かっているのは、精霊国アイル。エルフが治める国さ」


 誰もが知っている有名な種族の名前に俺とモモは驚きを隠せなかった。

 母親のルミアのハーフエルフと違い、エルフは純血。他の種族の血が入っていないことを指す。


「あのエルフですか⋯⋯」

 特にモモは一番衝撃を隠せないようだ。


 それもそのはず、エルフは又の名を「妖精族」と呼ばれている。

 その特徴は至ってシンプル。


 『少ない魔力で魔法が撃てる』だ。

 なぜそれが可能かというと、なんでも魔力効率が桁違いに優れているらしい。さらに、これだけでも強力なのに、それに加えて保有魔力量も多いときた。

 まさに、全魔術師の理想形。

 ツバキいわく、俺たちの初級魔法みたいに中級魔法をバンバン撃ってくるらしい。


「それにしても師匠、エルフに詳しいんですね」

「前のパーティーにいたんだ」


 前のパーティー、ということはダインとルミアも所属していたということだよな。

 もしかしたらルミアのあの自慢話は本当だったのかもしれない。


 アイルに行く目的はその人から魔法のコツを教えてもらうためだという。

 それを聞いた瞬間、モモの目が眩しいくらい輝いた。

 そういう俺もエルフから魔法を教われると聞いてワクワクしている自分がいる。


 俄然、アイルへの期待が高まっていたときだった。


 ガサガサ⋯⋯と近くの茂みから草をかき分ける音がした。


 俺たちは一瞬で戦闘態勢に入る。

 野宿する際、魔術師は魔除けの結界を張る。

 範囲魔法の一種で、魔獣は近づくためにはそれを破らないといけない。

 だから接近していたらそれによって気づくはずなのだが。

 もしかしたら盗賊の類か。


 徐々に近づいてくる。


 俺とツバキは目で指示を出し合い、ポジションを移動する。

 モモもすでに杖を構えている。


 一番近くの草むらから何かが見えた瞬間、俺とツバキは一斉に飛びかかった。

 しかしそこにいたのは、「えっ?」と突然のことに呆気にとられている俺と同じくらいの少女と傷だらけの大男がだった。


 少女の方は白髪の綺麗な髪に、翠玉色に輝く瞳を持っている。

 大男の方は緑髪で、体は鎧に包まれているが、そのガタイの良さが一目でわかる。

 そして、どちらも共通しているのが、人族ではありえないくらい長い耳をしているということ。


 ふむ、明らかに先ほど話していた種族と一致している。


「エルフ⋯⋯?」

 早すぎる登場に誰も理解が追いついていない。


「きゃ──!!」

 と少女が叫ぶと一瞬にして大男が立ちふさがる。


「あなた達はここらへんの冒険者か」

「⋯⋯そう、だけど」

 剣を向けて警戒していた大男は、その言葉を聞くと安心したように剣を下ろした。

 少女の方は見たところ大丈夫そうだが、大男の方は今にも力尽きて倒れてしまいそうだった。


 すると、ぐー、と少女のお腹が鳴った。

 どうやら食事も十分に取れていないようだ。

 ラッシュボアーの肉を見て少量のよだれを垂らしている。


 事情を聞くためにも、ツバキには我慢させて(にく〜と泣いてはいたが)思う存分食べさせ、大男には俺とモモで治癒魔法をかけた。


 にしても、師匠から聞いた話によればエルフは人里にはめったに降りてこないはず。

 何か訳がありそうだ。


「ありがとう、君たちがいなかったら大変なことになっていた」 

 治療が終わると大男は頭を下げた。

 それを見て隣の少女も食べるのをやめて真似するようにお辞儀する。


「さっそくで悪いのだが君たちは今、どこに向かっているのだろうか」

 なぜそんなことを聞くのかと問い返そうとしたが、それよりも先にツバキが答えた。


「精霊国アイルだ」

 ツバキの返答を聞くと大男はもう一度大きく頭を下げる。


「どうか我々も同行させてくれないだろうか」

 どうやら偶然にも目的地が一緒だったようだ。

 あの怪我の量、ただ事じゃないことがあったはずだ。


「まずは事情を説明してくれないだろうか」

「ああ、もちろん」と大男はうなずくと立ち上がって胸に手を当てる。


「私は精霊国一番隊隊長グラジオ」

「そしてこの方は⋯⋯」


「精霊国王女 ミリア様です」


「えっ⋯⋯」

「王女⋯⋯様?」

 俺と同い年に見える横に立っている少女が王女だという事実に「うそだろ⋯⋯」とつい言葉が漏れる。


 どうやら俺たちはとんでもない人たちを助けてしまったようだ。

ここまで御覧いただきありがとうございます。

よろしければ、


・ブックマークの追加

・広告下の「☆☆☆☆☆」から評価


をしていただければ幸いです。

次話もぜひ読んでください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ