第十一話 小人族のモモ1
家族からの手紙で俺は七歳になっていたことに気づいた。
内容はお祝いの言葉とベル、ルイの様子。
そして一向に手紙を寄越さない俺への忠告だった。
⋯⋯そういえば約束してたな。
これは完全に怒っていらっしゃる。
急いで最近あったことや、ツバキに教わったことを手紙にまとめる。
ベルは元気にしているだろうか。
結局、俺は今でもベルにどう接すればいいのか分からないままだ。
ただ、せめて成長した姿くらいは見せなきゃな。
手紙を片手に俺は宿から飛び出していった。
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あれから毎日、バース周辺で狩りを続けていた俺はツバキのおかげもあって、一人でも十分戦えるようにまで成長した。
「カイン、シャドーウルフが三体いるけど一人でいけそう?」
「やってみます」
ゴブリンを捕食するのに夢中でシャドーウルフ達はこちらに気づいていない。
草むらに身を隠し、剣を構えて、身体強化で足だけを強化して強く踏み込む。
「いきます!」
まずは手前の個体を一撃で。
突然のことに身動きが取れていない左右にいるシャドーウルフを、左手では風魔法で、右手ではそのまま二撃目で首を落とす!
抵抗の隙も与えないまま、一瞬にして三体のシャドーウルフは地面に死体として横たわった。
「もうここじゃ敵なしだね」
倒したのを確認したので、ツバキも草むらから出てくる。
「魔法も使わせなかったし、魔核にも傷一つついていない」
死体から拾い上げた魔核を確認して、カインに渡す。
「これならそろそろ別の町に移動しても良さそうだ」
満を持したような顔でこちらを見る。
「別の町、ですか」
「ダインに、経験を積ませたいから色々な場所に連れて行ってくれと頼まれていたんだ。ここだともう新しく得られる経験はあまりなさそうだからね」
新しい町か⋯⋯
確かに、ここらへんに出るモンスターはもうほとんど倒しているだろう。
例えば、さらに早くシャドーウルフやゴブリンを倒せるようになったとして、あまり意味はないように感じる。
俺に必要なのは様々なモンスターとの戦闘経験。
そう考えると師匠の言う通りだな。
「そうしましょう、師匠」
その言葉を聞いたツバキはニコっと笑って、
「思い立ったが吉日。明日、早速別の町に向かおう!」
うん、俺が何を言っても明日そうするつもりだったな。
///
出発の準備をするため、町に戻っている最中。
カンッ、と金属同士がぶつかる音が聞こえた。
「師匠、何か聞こえませんでした?」
カンッ、キンッ、と次第に音は増えていく。
「どこかで戦闘しているみたいだな」
「見に行ってみましょう」
音のする方へ、ツバキを先頭についていくと、三人の冒険者がゴブリンたちに囲まれていた。
しかも、ただのゴブリンだけじゃない。
後方から指示を送っているように見える、ローブのようなものに身を包む初めて見るタイプもいた。
「あれは、『シャーマン』だ」
「ゴブリンは大体の個体が魔法を使えないが、一部特殊な個体で魔法が使えるやつがいるんだ」
あいつはその一種だとツバキは深刻そうな顔になる。
「ゴブリンは数が多いが知性があまりないから初心者でも比較的容易に狩ることができるんだが、統率できるやつが現れた瞬間、討伐難易度が急激に跳ね上がるんだ」
囲まれている冒険者の内、剣と盾を持っている男二人が猛攻を食い止めているが、後ろに控えるまだ幼い少女の魔法師が足に怪我を負っていて身動きが取れない状況だ。
「お前が特殊個体でもゴブリンだからいけるって言って突っ込んだせいでこうなったじゃないか!」
「お前だって最初は乗り気だったろ!」
前衛二人の口論で大体の状況がわかった。
特殊個体は魔核も特殊で、普通より魔力密度が高い。
もし手に入れる事ができたら普通のゴブリンの魔核の何十倍もの値段はするだろう。
「まあでも、こういうときのために新人をパーティーにいれているんだけどな」
さっきまで喧嘩していたはずの二人はすっと負傷している魔術師の少女を見ると、「えっ」と困惑の言葉を少女が上げた瞬間。
──その少女を置いて、街に向かって走り出した。
「なっ!」
思わず声に出てしまった。
「カイン!!!」
ツバキは声を張り上げてシャーマンに向かって飛び出す。
「あの子を守れ!」
その言葉を聞いた瞬間、俺も少女のもとに飛び出した。
石で作られた粗末な武器を少女に振りかざすゴブリンを間一髪、武器ごと切り裂いてみせる。
「間に合った!!」
少女は無事だ。
他のゴブリン共も急いで対処し、ツバキの方を見る。
シャーマンは魔法陣から炎の球体を複数生成し、突進してくるツバキに向かって発射する。
しかし、勢いを止めることなく全ての魔法を斬り伏せ、そのままシャーマンを一刀両断した。
心配は杞憂だったようだ。
すぐに少女に治癒魔法をかける。
「大丈夫?」
「はい⋯⋯」
そう返事はしても体は震えている。
当然だろう。
魔術師は近接戦ができないから後方にいるのに突然前衛がいなくなったんだ。
これほど魔術師にとって怖いものはない。
「あの、あなた達は⋯⋯?」
「俺はカイン、後ろにいるのは師匠のツバキさん。たまたま通りかかったら、前衛の二人が逃げていくのを見て急いで駆けつけたんだ」
「あ、ありがとうございます」
ペコリと小さな体でお辞儀をする。
「私の名前はモモって言います。あなた達がいなかったら本当に、危ないところでした」
「にしても自分のパーティーメンバーで、しかもこんな幼い子を置いていくなんて」
モモと名乗る少女の見た目は俺よりも若い、もしくは同じ年齢くらいに見える。
「冒険者の中には新人に目をつけ、それを囮にするやつはよくいるんだ」
あいつらだけじゃない、と後ろからツバキがこちらに歩いてくる。
「このことはギルドに報告しておこう」
あと一応とツバキは付け加えて、
「その子は多分お前より年上だぞ」
「⋯⋯へ?」
何を言っているんだ、頑張っても同じくらいだろう。
「えっと、その人の言う通り、私これでも成人しています。私は小人族なので見た目は幼いままなんです」
よく言われます、と少し照れるように言う可愛らしい姿に混乱する。
魔術師がよくかぶっている三角のような形をした大きめの帽子。
透き通った桃色の髪とそれが似合う幼い顔立ち。
ローブもサイズが大きいせいでダボダボだ。
これで成人だと⋯⋯
「私は最近村から出てきたばかりだったので、あんな人達がいたなんて知りませんでした。本当にありがとうございました」
そう言って、にこっと笑った顔は天使のように可愛いかった。
でもこれで俺より年上だと⋯⋯
未だ信じられないまま、ギルドへの報告も兼ねてモモさんを連れてバースに帰還した。
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