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第九話 冒険者のもとへ

 馬車で走り続けて一週間。 


 ダインから聞いた話ではツバキという人は今、首都の北に位置する街、バースで活動しているそうだ。


 見た目は確かダインが言うには──


「うーん、長い黒髪に、間抜け面って言われてもな⋯⋯」


 馬車に揺られて野宿も含めれば更に丸二日、ようやくバースについた俺は早速、例のツバキとやらを探し始めたのだが⋯⋯


「一向に見つかる気配がない」

 この世界で黒髪というのはあまり見ないからすぐに見つかるものだと思っていたのに。

 バースは大通りに宿場、酒場など主な施設が集中しているが、大通りから外れた場所はいわゆるスラムという構造をしている。

  ダインは大通りで待っているはずと言っていたが見渡してもそのような人物は見当たらない。


 まさか、スラムにいるわけないよな⋯⋯?

 流石にダインの元パーティーメンバーが今はスラムで暮らしてるとは考えづらいし。

 うーん、と頭を抱えていると。


「──少年、何か食べるものを⋯⋯」

 後ろから突如誰かに話しかけられた。

 咄嗟に振り向くとボロボロのコートのようなものを羽織った女性が地面を這いつくばっていた。

 しかしよく見てみると、フードの先からはみ出して見えるのは黒い髪。

 ゆっくりフードを取ってみると、髪は後ろで簡単に結んでも腰に届くほど長く、瞳は宝石のような透き通った紅色をしている。

 そして、「食べものを⋯⋯」と懇願している顔はなるほど、たしかに少し間抜け面だ。


 これらのことから考えられることは一つ。


「⋯⋯もしかして、あなたがツバキさん?」

「えっ、私を知っているのか?!」


 ⋯⋯どうやらダインはとんでもない人を紹介してくれたようだ。



 ///////


「いやーまさか、たまたま話しかけたやつがダインの息子だったとはな!」

 結局あの後、しょうがないので近くの酒場に行って食事をごちそうすることにした

 ベルにも負けない速さでテーブルの上にあった料理を平らげると、何事もなかったかのようにツバキは姿勢を正した。

 ご飯粒が口元についているがな。


「それでは軽く自己紹介といこうか。ダインの元パーティーメンバーのツバキだ。ダインから話は聞いている」


 堂々としているが一応ご飯粒のことを伝えると、気づいていたかのようにツバキは口元を布で拭う。

 本当に大丈夫なのか、という俺の不安をよそにごちそうさまと手を合わせると「ではっ!」と言って立ち上がった。


「料理もごちそうになったことだし早速行こうか」

 俺のことなんて構わず行くものだから慌てて荷物をもって彼女の後ろを歩く。


「えっと、行くってどこにですか?」

「ん? そんなの決まってるじゃないか」

 すると彼女はニッと笑って言った。


「冒険者ギルドだよ」


 //////


 行き交う屈強そうな人々。

 入り口ではパーティー募集の呼びかけ。

 中に入ってすぐ見えるカウンターに居るのはもしかして受付嬢というやつか!


「ここが、冒険者ギルド⋯⋯!」

 あるのは知っていたがいざ目の前にするとテンション爆上がりだ。


「知っていると思うがここでは主に、依頼を受けたり、素材を換金してもらうことができる」

「ただしそれはこの冒険者証がないと利用できない」

 ツバキはポケットから金色に光るプレートがついたネックレスをとりだす。

 これが、冒険者章⋯⋯


「これにはランクがあって、一番下からブロンズ、シルバー、そしてこのゴールドがある。まあ、更に上のプラチナもあるが、それは伝説程度に思っててほしい。そしてこれはカイン、君の分だ」

 そう言って俺の前に差し出されたツバキの手にはさっき見たものとはまた違う光沢を放つ冒険者章。


「これが俺の⋯⋯」

 取ったばかりだからプレートの色はブロンズ。

 つまり一番下ってことだ。


「ランクアップの方法は単純だ。とにかく依頼をこなすこと。一見簡単に見えるよな? でも十年近く冒険者をやっていてもブロンズのままのやつもいるぐらいには一筋縄では行かないんだ。ま、そうならないためにも私がいるんだけどな!」

 えっへんと胸を張る姿はどこか無邪気さを感じるが、心強いことには変わりない。


 ──にしてもこの世界の住人は美女しかいないのだろうか。

 コートの上からでもわかる大きい胸。

 顔立ちはどこか日本人を彷彿させる。

 今考えればツバキって名前も日本人っぽい。


「あのツバキさんってどこ出身なんですか?」

「ん?ああ、私はここじゃあ珍しい名前だからな。それで気になったんだろ」

 あと私のことはツバキじゃなくて師匠と呼ぶようにと彼女は付け加える。


「私はここからずっと東にあるシモウサというところから来た。そこでは先祖は()()()から来たと言われているんだ。少し変わった顔立ちも名前も、そのせいだって言われてる」

 おかしな話だろと笑うツバキ。

 確かに普通の人からしたらそうだろう。

 しかし、俺にとっては何もおかしい話ではない。


 そっか、俺以外にもいたんだ。

 日本からこっちの世界に来た人が。

 シモウサ、たぶん昔の日本の地名だ。

 そしておそらくツバキの先祖は俺と同じ転生者ではなく、()()()の方。


 別に前の世界に戻りたいとかそんな事は考えていない。

 ただこの話をきいて行きたくならないわけがないだろ。


「ツバキさ、いえ師匠!いつか俺をそのシモウサに連れて行ってくれませんか」

「ん?ああ、いいぞ。でもその前にまずは強くならないとな!」

「はい!」


 高ぶる気持ちを抑えながら、こうして俺の冒険者生活が始まった。

ここまで御覧いただきありがとうございます。

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