第4話 王へのお願い
投稿したよ。
カーシュにとって男は、BL化を楽しむ為の娯楽であり、日常の一部であった。
前世でもある時には複数人のナンパが来た時に、頭の中でBL化させる程には日常の一部にはなっていたのだ。
そんな日常が根本的に出来ないとなると、王子の口調も忘れる程のショックだった。
「う、うぅ…男が居ない…」
王城を走り回っても居るのは女、女、女。
男は誰1人と居なく、自然と血の涙が流れる。
「そう言えば何か変だったんだ…この姿になって最初に見た外の景色…男の人が見当たらなかった! 何でこんなにこの国には男が居ないんだ!!」
悲痛な叫び声を上げ、カーシュは王城の中庭へと飛び出して寝転ぶ。
「ん? そこに居るのはカーシュ、カーシュか!!」
すると、少し離れた所から少し太い声が聞こえて起き上がる。
「…父上?」
そこに居たのはカーシュの父、ファテル王国現国王、ビクター・アルザ・ファテルだった。
まだ20代前半、服装はラフな格好をしており、どうやら中庭にある畑を見に来た様だ。
「おぉっ! 遂に部屋から出てきたのだな! 私も嬉しいぞ!!」
「ち、父上、苦しいです」
ビクターはカーシュを強く抱きしめ、カーシュはそれに苦しそうに応える。
その王とは思えない硬い筋肉に、カーシュは内心心躍らせていた。
(…細身だけど締まった良い筋肉…しかも良いビジュ…セシムと合わさったら…むふふっ♡)
カーシュの父親なだけはある、そのイケメン度。
それにカーシュがほくそ笑んでいると、ビクターは抱き寄せていた体を離す。
「ラルから聞いたぞ、どうやら魔物の幼体を欲しがっていた様じゃないか」
「あ、あぁ…まぁ」
もうその話が伝わっているのかと、カーシュは狼狽する。
その話をしたのはこっちの世界に来た時、つまり約2時間前の事だ。
カーシュは王族というのはこんなもんなのかと、無理矢理に納得させる。
「それじゃあ私はこれで…」
何故か自然とそんな言葉が出る。
自分が自分である前、つまり華珠がカーシュとなる前のカーシュの意識に、ビクターから離れろと言う意識があるのかもしれない。
「まぁ、待て」
「……何ですか?」
「魔物の幼体はラルが捕獲してくると言っておったし、どうだ? 私には何かお願いはないのか?」
ビクターは目を爛々とさせながら聞いてくる。
(ここは大人しく何かお願いしとくのが正解みたいだなぁ…何にしよう?)
今まではこの人に散々な言われようをして来て、カーシュは傷付いてきた。
今更どの面を下げて言ってきているのかと疑問に思うが、わざとではないのだろう。
親とはそう言うものだ。
気を許せる者だからこそ、心にも無い事を言ってしまう事もある。
(ま、それを5歳の子供に言うのはどうかと思うけどね)
声には出さず、ビクターの前で目を瞑って考える。
どうせなら前のカーシュにとっても利益になる様なものをお願いしたい。
そう思った今のカーシュは深く考えた。
そしてーー。
「……魔法の教師が欲しい」
「ま、魔法の教師か…」
魔法の教師はこの国にとって希少。雇うにはそれなりに金は掛かる。つまりビクター、国にとって負担になる事は確実なのである。
これで前のカーシュの恨みは少しでも晴らせただろう。
そして今のカーシュである願い。それは男である。
男であるカーシュが男が欲しいと言ったら卒倒しかねる話になるが、魔法の教師である人を雇うなら、それは必然的に男となる。
これで過去のカーシュ、現在のカーシュにもwin-winな願いになっただろう。
「…ダメですか?」
カーシュが上目遣いでビクターを見ると、少しぐぐもった声を上げた後、ゆっくり頷いた。
「分かった…息子の初めての願いだ。明日には用意しよう!!」
「本当ですか!? ありがとうございます!!」
カーシュは頭の中で猛烈なサンバを踊りながら、ビクターの暑苦しいとも言える筋肉に飛びつくのだった。
「面白い!」
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