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第1話 転生

どうもー、新作です。

 手で包み込んだコンポタージュ缶から温かみを感じる季節に、葛西 華珠は公園のブランコに乗りながらうらんげに呟いた。



「……疲れた」



 時刻は午後9時半。

 女子高生である華珠は午後10時までしかバイトは出来ない。

 授業があって長時間バイトはしていないにも関わらず、何故こんなにも華珠は疲れていたのか。



 "美少女"過ぎたのだ。



 親の言い付けで接客業はやっといた方が良いと言われ、高校で1番近くのお店でバイトをし始めたのは良い。


 しかし、それが間違いだった。

 華珠がレジに居れば、そこが他よりも列を成し、ナンパをされる。自分の通っている女子高の近くの為、同僚にはその女子校の生徒が多く居るのだが疎まれる事も多く、どうにも居心地が悪い。


 ナンパされた時、上手く誘いを断れないので回転率が悪くなる。


 両親にはこれまで良くして貰ったが、心配されて女子小・女子中・女子高に通っていた事が仇になった。しかしその代わりに華珠のお陰で来客数は確実に増えている。


 華珠が居心地の悪さに辞めようとしても、来客数が増加している店側としてはウハウハ。店長が、不当にも辞める事を認めないのだ。


 そんな同僚、店長に挟まれながら働くのだから精神的にも、ナンパから逃れようとする体力的にもどうしても厳しくなってくる。


 華珠にもその様な事を相談する友達は()()

 居たのだが、高校入学時に疎遠になってしまった。

 高校を入学してからは、学校で"男を弄んでいる"という噂が飛び交い、相談する友達も居ない"ぼっち美少女"の出来上がりである。



 そんなぼっち美少女の唯一の楽しみ。


 それはーー



「あ"ぁー…セシム……イケメン過ぎるよぉ」



 乙女ゲーである。

 男子と昔から関わりのなかった華珠は、友達に勧められ乙女ゲーを始め、あっという間に沼にハマってしまった。

 そして乙女ゲーの次には、勧められてBL本にまで手を出すという、まさかの事態になってしまっていた。



 華珠の属性は美少女、ぼっち、腐女子という三拍子。


 何と残念な事であろうか…。



(男の人はこうやって眺めておくだけで良いよね〜、話すなんてもっての他だよ〜)



 タン タン っと片手でスマホをタッチして乙女ゲーを進め、華珠は頭の中で色々なゲームのキャラをBL化させて楽しむ。



「ーーーーて」



 そんな時、何か声が聞こえた気がした華珠はブランコから立ち上がり周囲を見渡す。


 そこには俯いて深く帽子を被った女性が居た。



「どうして…」

「な…!!?」



 女性がただそこに居るだけなら、何ら問題はない。

 しかし、その女性の手には鋭利な物が握らされていた。



「何で貴女ばかり…私だって翔君に…!!」



 華珠は避けようとするが、それは腹部に深く突き刺さる。


 熱い、痛い、どうして。


 そんな事を思いながら華珠の視界は暗転した。

 寒い冬の夜、空に浮かぶ月が綺麗に輝きを見せる。

 そんな空の下、周りには赤い水たまりが出来ていた。


 * * *



「…カーシュ・アルザ・ファテル」



 全てを思い出したカーシュは朧げにベッドの上で呟く。


 ファテル王国。ユー大陸でも最弱国と称される国の第1王子、5歳。

 泣き虫で、引っ込み思案の特に突出した所も何も無い、そんな平凡な()()()


 性別が変わってる、そもそも地球人であったという記憶が戻ったカーシュは、最大級に混乱していた。



(…私…いや、僕? ……いや、今はそれを気にしてる暇ないよね……だって此処……異世界っぽいし)



 カーシュは、ベッドから起き上がると、前の自分の身体との違和感を股間に感じながら、少し頰を染める。

 そして違和感だらけの、小さな美少年の体で部屋の窓を開けて外を見た。



(馬車…奴隷…西洋風な建物…そして地球上の生物とは思えない生物…あと何か違和感が…)



「魔物に興味がおありですか?」

「ふえっ!?」



 カーシュは情け無い声を上げて、後ろを振り返る。



「…えーっと……"ラル"?」

「そうです、カーシュ殿下。カーシュ殿下愛しのメイド、ラルです」



 黒髪ロングの妖艶な女性、カーシュの専属メイドであるラルが笑顔で話しかけて来る。


 彼女はカーシュの母、つまり王妃の分娩の時、カーシュを取り上げたその人らしい。


 カーシュにとっては、昔から遊び相手になってくれる姉の様な存在であるのだが…とてつもなく可愛い。



「何をなされてたんですか? 魔物を見ていた様ですが……どれか欲しいものとか?」

「え…別に欲しくないよ?」

「そうですか…何か欲しい物があったらラルにお教え下さいね?」



 ラルはそれに少し悲しげに微笑む。


 カーシュは多くを望まない、至って謙虚で、そして心優しい子供であった。



 しかし、両親はそれに不信感を覚えたのだ。



 王族の癖に欲はないのか。

 私の昔の頃だったら我儘だった。

 本当に私達の子だろうか。


 カーシュは、5歳の子供に言うべきではない言葉を意図せず、度々聞かされていた。


 我儘を言わない、子供らしくないカーシュは、両親の言葉から段々と引きこもりがちになってしまった。

 1、2年前までは庭で駆け回るように元気だったカーシュ、そんなカーシュが急に弾き篭りがちになったのを不安に思って、ラルは悲しみの表情を浮かべているのではないか、という考えがカーシュの頭に思い浮かぶ。



「そ、そうだな…私は移動とかの時に乗れる魔物が良い。出来れば赤ん坊の時から育てられたら良いかもしれない」



 さっきまでとは違う、咄嗟に出た王族らしい口調、我儘だった。

 赤ん坊から育てれば、怖い魔物だったとしても愛着持って接する事が出来るかもしれない。

 それにユー大陸の中で最弱と言われるファテル王国。だからこそ大人の魔物を購入するには金銭的な負担が掛かるだろう。


 そんな考えをしたカーシュ。


 しかし、ラルは違う風に捉えてしまった。



「…赤ん坊の時から育てれば、的確な指示を受ける、比較的従順な魔物になると言われている……カーシュ殿下、それを何処で…」

「え、今何か言った?」

「いえ……ですが分かりました。ラルが責任を持って殿下に相応しい魔物の幼体を見つけてきます!!」



 ラルは勢いよく敬礼すると、凄い速さで部屋から出て行った。



(ふぅ。取り敢えずはこれでラルの機嫌は取れたかな? それにしても…今の私の現状をちゃんと理解しないと。5歳とは言え記憶してるのはどんな風に過ごしてきたぐらい…図書室にでも行ってみようかな…?)



 カーシュは開きっぱなしの部屋の扉から、外を伺いながら図書室へと向かうのだった。






『聖王』


 それは偉業を成し遂げた、稀代の国王に付けられる称号である。

 その偉業は多岐に渡り、魔物の大群から国を救済、不治の病の治療法発見、災害民を何万という数助ける等々ーー。


 王という才能以外に、何らかの才能を見出せなければ『聖王』という称号は付けられる事はない。




 これはーー



 いずれ『聖王』の称号を得る、中身は腐女子、外見はイケメンの王子が、国を良くする為、自分の安全、欲望を満たす為に奔走する物語である。

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