今打てる手
たった1匹の敵に全滅させられる可能性 たった1匹に全滅させられる軍。
そんな洒落にならない未来は来て欲しくないもんだ・・・どうする・・・いや・・・やりたくなかったがするしかないか・・・目を開ける。
「現地の誰かは岩人と交渉してくれ、駆け引きとかは一切いらない、こっちの状況を正直に伝えてアレを殺してもらってくれ。」
(それなら私が行ってまいります。)
「ん?智将さん?じゃあお願いね、こちらが出せるのは兵士と少しの野菜ぐらいしか思いつかないが何とか頼む。」
(微力を尽くします。)
(・・・智将殿を転移させました。)
5秒程で目の前の壁に映されていた映像が変わる、智将さんの視点になったようだ。目の前に10人の岩人がいる。
「ちなみに周りの敵は?」
(既にオーガは全滅、オークは全て敗走しています、あの1匹以外はすぐに終わらせられるかと。)
「捕虜の救助は?」
(そちらも順調です。)
「ならいい。」
映像に映っている岩人が1人だけ前に出てきた。
「助けてもらった事に感謝を言いたい、お前達の召喚主はどこだ?」
「我が主はここにはいない、だが主には私を通して君達の事は見えているし声も届いている。」
岩人が何かを考えるように右手で顎を掻く。
「礼や謝罪というのは本人に直接言って初めて意味が出るものなんだがな。」
「礼をしたいというのなら主の頼みを聞いて欲しい。」
「普通頼み事というのは相手に直接するものだと思うんだがな。」
「先程も言ったが主はここにはいない、主はここには来れない理由がある、今直接主が動けばバラバラに逃げた捕虜達の回収が遅れてしまうし敗走しているオーク達の殲滅も出来なくなってしまう、逃げた捕虜を追っていったオークもいるこの状況、武器持たぬ者が殺されるような事態は絶対に避けたいというのが主の意向です。」
会話を聞きつつ考える・・・少し嘘があるのはいいとして岩人はなんで・・・ああそういえば岩人は生き物とそうじゃないものがわかるんだもんな・・・
「主義に反するがまぁ仕方ないか、頼みとは?」
「オークを1匹殺してもらいたい」
「ん?1匹?それくらい自分達で出来るだろ?」
何故そんな事を言うのか本当にわからないという顔だ。
「残念ながら我が主の能力にとって天敵と言っていい加護を持っているオークなのです、主が今使える手札にはあれを殺す手段がありません、あの1匹を見逃すと次にいつどこで接敵して同じ事になるかわからない、オークの顔など見分けが付きませんしね。あれは今どうしても殺しておきたい存在なのです、どうか手を貸して頂きたい」
映像が動き地面だけが映る、智将さんが頭を下げたらしい。本当は俺が下げなきゃいけない頭だ、少し罪悪感を覚える。
「本当にその程度の事で恩返しになるのか?」
智将さんが頭を上げ岩人の顔が映る
「なります、我が主は欲が強いタイプではありませんので」
「まぁいいか・・・わしが行く、どっちだ?」
「あなたでよろしいのですね?」
「ん?ああ」
「なら今からあなたを転移させます」
「陣も無しに転移が出来」
岩人が喋っていると映像から岩人が消える・・・
(岩人をオークの前に転移させる事に成功しました)
「最後まで言わせてあげないのね・・・とりあえずすぐに倒してもらって」
(・・・終わりました、岩人を元の場所に戻します)
10秒も経たず映像に岩人が映る
「おまっ!転移させるならさせる瞬間をちゃんと教えろ!それになんだ今のは!寒さなど感じるはずがないこの体が怖気を感じて震えたぞ!あの1瞬通った空間は何だ!あれは普通の転移じゃない!」
そら抗議もするよね・・・智将さんが頭を下げてから話し始める。
「まずあのオークを討伐して頂いた事を感謝致します」
「ん?お、おう」
頭を下げた智将さんを見て少し落ち着いたらしい。智将さんが頭を戻し続ける。
「それと普通の転移じゃないという事ですが、我々は他の転移魔法を知りませんのであれ以外があると言われてもわかりかねます」
「答えになっていないぞ、俺はあの空間は何だと聞いたんだ」
「我々の転移は空間と空間を直接繋げるのですが、繋げた空間には弱冠の隙間のような空間が出来てしまいます。我が主も何故そんな空間が出来るてしまうのかはわかりませんし、あの隙間がどんな空間なのかは知りません。現在研究中ですのであなたがどう感じ、どう思ったのか教えて頂けると嬉しいのですが」
岩人は顎に指を当てて少し苦い顔をした。
「正直思い出したくもないくらいおぞましい感覚を覚えたな、あれは本能レベルで危険だと訴えてきた感じだ。あの空間には絶対に何か居て、しかもこちらが通ったのを認識していた。」
岩人さんも俺と似たような感覚だったらしい。
(主様、オークの殲滅が終了したのと捕虜だった者達の保護を出来ましたので皆岩人達の方へ移動中です)
「わかった、岩人さん達に伝えてあげて。それと兵士を常駐させた方がいいか聞いといてくれないかな」
智将さんが岩人に伝える。
「そうか、有り難う本当に助かったよ。」
「いえ、助けられたのはこちらも同じです。それと我が主からあなた方へ聞きたい事があると」
「なにかな?」
「ここに自分の兵を常駐させた方がいいか?・・・と」
「何故だ?」
「魔物達の襲撃があった時少しでもあなた方を守るのに役立つかと」
「その主様とやらに何か得でもあるのか?どんな下心で言っている?」
「先程あなたに殺して頂いたオークと同じタイプの加護を持っている者がいた時にまた御助力をお願いしたい」
「またあの転移を体験するのは嫌なのだがな・・・」
岩人は顎に手を当てて渋い顔をして考えている。
「それに兵士と言っても維持するのには何が必要なのだ?」
「維持は我が主自ら行ないますので心配は無用です、それに元々我々には睡眠や食事といったものは必要ありません。」
「その兵士というのはどれくらいの数だ?」
「10万でも100万でも、勿論数が増えればその分時間も掛かりますが。」
「その兵士はわしらの指揮下に入れて良いと考えても?」
「勿論です。我が主や人類に敵対行動をしない限りはあなた方に従うようにしましょう。」
「よし、なら100万だ。そちらが言った数字なのだから違えるなよ」
どうやら協力者を手に入れる事は成功したらしい。




