別視点:帰還して見た物
岩人部隊長グルー視点
なんてこった・・・
地下壕を広げる為の素材を取りに南東の炭鉱に行っていたのがまずかった。俺達の部隊が全員移動する訳にはいかないと言ったが、警備隊の「俺達だけで大丈夫ですよ、住民も大分ストレス溜まってきてますから少しでも広い空間にした方がいいしょ。それに最近は地上でほとんど魔族達を見ないんなら今がチャンスですよ」なんて言葉を聞いた俺の判断ミスだ・・・最悪のタイミングで遠征しちまった・・・その結果がこれ・・・
地下壕への蓋が開いているどころか入り口が壊され、人がギリギリで通れるくらいの広さだったはずの階段が、人どころか中型の魔族達なら通れる程雑に広げられている。こんな壊され方でよく階段が埋まらなかったもんだ・・・だが階段までなら埋まってくれた方がよかった・・・急いで降りてみればもう終わった後・・・綺麗に敷き詰めたはずの石畳は赤の色ばかり・・・胸を鎧ごとグチャグチャに潰された警備兵達・・・大きさからして子供の物であろう歯形の付いた下半身が複数・・・頭部が壁の染みにされ絶命した住民・・・木が突き刺さり壁が壊れた家屋・・・真っ赤に染まり水ではなく血を出している噴水・・・なんの生き物もいない牧場・・・まったくの無音・・・つい2日前まで街だったはずなのに・・・
「誰か!誰かいないのか!お前達も声出せ!全員探せ!たとえ1人だとしても生き残りがいるかもしれない!」
俺と同じように後悔している後ろの奴等にでかい声で指示を出す。全員声をあげながら散らばって生き残りを探す・・・大声を張り上げながら30分以上全力で走り回り探す・・・死体死体死体死体死体死体死体・・・いない・・・どこにも・・・誰も・・・すれ違った仲間に聞いても答えは同じ・・・仕方ない・・・次の指示
「全員出口に集合だ!」
でかい声で指示を出すと少し遠めの位置で「全員出口に集合!」と復唱し他にも指示が伝わるようにする者達がいる、そのおかげで集合にほとんど時間はかからなかった。
882名の誰もこちらを見ない・・・下を向いている・・・当たり前だ・・・惨状を見ればわかる・・・敵の主力はオークだ・・・俺達が残っていれば守れた可能性は十分ある・・・俺達から見ればほぼほぼ非力な個体しかいないオーク共に俺達の体は壊せない・・・ここは地下、俺達のホームグラウンド・・・どこを叩けばどこがどのように崩落するかなんて触った瞬間わかる・・・それに加えオークの体格では1匹ずつしか通れない階段はこちらにとって非常に有利な待ち伏せポイントだった・・・たとえ1万いたとしても必ずこちらが勝てる状況・・・嗅覚の良さと力押ししか能が無いオーク共・・・俺達の匂いを嗅ぎ付けても絶対に近付いてこないオーク共・・・絶対に許さん!
「地上に出るぞ!移動の痕跡を探せ!オーク共を皆殺しにするぞ!」
「おうよ!」「仇を取るんだ!」「ぜってぇに許さねぇ!」
各々了解の言葉は違うが全ての声から怒りが伝わってくる。
外に出て移動の痕跡を探すが非常にゴチャゴチャしているしどうもここで野営をしていたような痕跡まである。という事は自分達が出立してからそう時間が経たないうちにここに来てたと思われる。本当に最悪のタイミングだった・・・俺達が地下にいれば地上に敵がいるなんてその瞬間にわかっていたというのに・・・後悔しかでてこない・・・本当に何故このタイミングで行ってしまったのか・・・いつもなら階段には必ず俺達がいたのに・・・
「報告!北に向かう痕跡多数!」
「よし!一旦全い」
「報告!西側に移動の痕跡と血の跡を発見!」
「何!?」
「最低でも二方向ですか・・・外したら最悪ですな・・・一体どちらなのか」
補佐官のサリウラが話しかけてきたがその疑問にはすぐに答えを出す。
「西だ、奴等は食料として住民を捕まえたはずだ、全員集合!血を辿るぞ!」
集合し隊列を組んで西へ走る・・・ここが襲われて何時間経ったのかわからないが地下の死体や血の乾き具合を見た限りでは10時間は経っていないはず・・・それに人を食料として連れる以上そんなに速度は出せない・・・必ず追いつける!




