別視点:食肉輸送部隊と豪商の娘
時間はオーガの部隊が天騎士の部隊を壊滅させる為に北へ向かった時まで遡る
・輸送部隊責任者オーク中級左官(無名)視点
ヴィラル殿の指示で取りこぼしを回収しつつ本国に部隊を移動させるために各所の指揮官を集め指示を出す。
「我々は一旦本国まで戻り、この肉共を養殖場に引き渡す事になった。ここからは逃亡を図った肉・反抗的な肉以外は喰わないように、いいな!徹底させろ!」
「「「了解しました!」」」
各々が仕事に戻るのを見ながら考える。
(仕方の無い事とはいえどの大陸も取りこぼしが多い・・・だがこの大陸は多すぎる・・・リッテン大陸に入ってから10日しか経っていないはずなのにもう帰還しなければいけないなど異常だ・・・何故だ?何故こんなに多い?・・・ミルダ様の創造した魔法陣の擬き共は戦闘力は低いと言っても数は多いし、疲れる事も無く睡眠も食事も必要としない労働力だ。見た目も本物と大差無いからあれが加護無しの造り物だなどと見分けられるはずも無く肉共は逃げていく・・・わざと逃がして隠れ家まで案内させる予定だったのに何故見つからない・・・必ず匂いが途切れる・・・ここまで多いならどこかに必ず隠れ家があるはずなのだが・・・)
そこまで考えた時、地面の下から何か音が聞こえた、小さい音だったが確かに聞こえた。反射的に音の方を向き気付く。
肉の匂い
見ている場所から重い石をこすらせて動かすような音が聞こえ・・・そこから出てきた肉と目が合った。
・商人の娘エリーカ視点
リッテン大陸には町や村の近くには必ず地下壕があり、ここは王都から近い商業が盛んな街の地下壕なので、地下壕の中でも2か3番目に広い地下壕だ。そのため人数も多く、ここだけで20万程の人口が避難している。
「私は果物が食べたいって言ってるでしょ!?地下暮らしになってからずっと野菜だらけ!一体いつになったらルーカが食べられるのよ!もう何ヶ月も地下暮らしだなんて!私は岩人みたいな原始人じゃないのよ!」
ルーカとは掌サイズで黄緑色の薄い皮に黄色い果肉の果物だ。
魔族達が軍を率いて街をいくつも襲い住人を連れて行ってしまったので、国中に御触れが出て非戦闘員は地下の避難所に移動する事になってから早数ヶ月。岩人達が作った地下壕は天井は明るく、色々な種族が不自由が無い程度には暮らせるよう色々な家が作られていて、川もあれば森や湖もあり、保管庫には食料(保存食)の備蓄もあり、公園には噴水もあった。まぁ森は太陽光の当らない場所でも育つような少々陰気に感じる植物ばかりだが。
「やめないかエリーカ」
果物を持ってこない使用人に正当な怒りをぶつけていただけなのに何故かパパが話しかけてきた。
「いいかい?今は国が大変な時期だというのはわかるね?今僕達がこうして無事でいられるのはエリーカの言うところの原始人である岩人達のおかげなんだよ?彼等がいなければこの地下壕は存在すらしていないんだからむしろ感謝しなければいけないよ、彼等の作った浄化石のおかげで魔族に僕達の気配や匂いが感づかれる事も無いからこそこうやって生活出来ているのに、彼等は「自分達は戦闘能力も高いから」と率先して地下壕を広げつつ地上の状態も監視してくれているんだ、そんな恩人達を原始人扱いするうえに不可能な事を使用人に要求するような事をしちゃいけないよ。いいね」
「どこが不可能な事なのよ!甘い物が食べたいなんて言ってるんじゃなくて果物が食べたいって言ってるだけでしょ!それにあんな岩の塊みたいなのになんで感謝なんかしなくちゃいけないのよ!意味がわからないわ!」
「エリーカ!」
「もういい!」
パパが珍しく大きな声を出したがそれよりももっと大きな声を出して部屋を出て行く。外に出ていつも暇を潰している広場まで行くと9人の下っ端庶民達が木剣を振って遊んでいる背中が見えたので話しかける。
「ねぇあんたたち」
「なんだエリーカかよ、何の用だ?」
真ん中にいた浅黒い肌で一番背が高い下っ端庶民が答える。
「何してるのよ?」
「見りゃわかるだろ」
「わからないわよ、何の遊びよ?」
「遊びじゃねぇ!訓練だよ!」
「訓練?何の為によ?」
「決まってんだろ!そのうち地上に出てクソ魔族共をこの国から追い出す為だよ!」
「はぁ?何言ってんのよ。そんなもん岩人共にやらせりゃいいのよ」
「その岩人達がやられちゃったらどうすんだよ!」
「はぁ?やられる訳ないでしょ?あいつら戦うしか能がないのよ?やられちゃったら本物の能無しじゃない。そんな事よりあんた、そんな元気があるならちょっと地上に行って果物取ってきてよ」
「お前・・・」
「何よ?取ってくれば代金はちゃんと払うわよ」
「お前の頼み聞いて見張りに見つからないよう地上に出たエリックとバートン達はどうなった?」
「誰よそれ?庶民何号の事?」
「てっ・・・もういいてめぇなんかと喋ったってムカつくだけだ、みんな!やっぱ詰め所に行って俺達も訓練に混ぜてもらおうぜ」
「でもどうせまた」
「いいから行こうぜ」
下っ端庶民1号が2号の体の向きを変えて背中を押し始める。
「ちょっと!」
「うるせえ!」
下っ端庶民の分際で私に無礼な態度を取りながら下っ端庶民達は詰め所の方に移動する。
「なによあいつ!私を誰だと思ってるのよ!庶民なら美人でお金持ちの私の言う事は聞くもんでしょうが!何が詰め所よ!」
ん?詰め所?
「あ!」
少し経ち、詰め所にて
「なぁ部隊に入れてくれって頼むよ、俺達だって役に立ちたいんだ」
「そうは言っても君達はまだ12・3歳で何の訓練もしてないじゃないか」
「訓練なら毎日ちゃんとしてるよ」
「木剣を振っているだけだろ、基礎体力を付けようとしてる訳でもなく精神力を鍛えようとしている訳でもないしそもそも素人が適当に木剣を振ったところで何の訓練にもならないよ」
「だったらせめてそのちゃんとした訓練を付けてくれよ頼むよ」
などというやり取りが見える。詰め所兼見張り小屋の兵士達は下っ端庶民達の相手をしながら笑っていてこっちには気付いてもいない。
「あいつら役に立つじゃない」
計画がうまくいった事に喜びつつ、見つからないように隠れながら地上への階段まで行く。岩人達の作った浄化石で作られた階段は綺麗な水色をしている。しばらく階段を上ると地上に繋がる浄化石の蓋が見えた、蓋まで行き蓋に書かれている魔法陣に触れて魔力を流す。鍵を開けるような小さな音が鳴り蓋が開く、久々の外を見ようと階段を上り地上に上半身が出て顔を上げた瞬間・・・豚と目が合った。
・輸送部隊責任者オーク中級左官(無名)視点
正直何故こんな近くに隠れ家があった事に気付かなかったのか全くわからなかったが、とりあえず出てきた雌肉を掴まえて放り投げる。我々が通るには狭すぎたのでオーガの部隊を呼び階段周りの壁を壊して広げながら進んでもらう。匂いでわかる、大量の肉が隠れている。垂れてくる涎を手で拭いながらオーガ達の作業完了を待つ。
オーガ達の作業が完了してからは早かった、数が多すぎるからとりあえず殺し回る。戦意を無くしへたり込んだ肉だけを残して全て殺す。遠征でもしてたのか厄介な岩人共がいないのもあり本当に楽だった。
だが一つ悩みが出来た。
肉の数が増えすぎて管理が面倒くさい・・・一気に5倍超えて・・・早く帰ろう・・・




