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別視点・開戦前

 リッテン大陸で人間を見つけたら殺すか食うか本国に送る、出来れば本国に送る事を優先、バルト大陸までの道のりの掃除と整備、人間以外は殲滅、それが今回の任務。そのための鼻が利くオーク主体の軍、ゴブリン主体だったグウィンゴルンの軍よりはマシだが臭くてかなわない。まぁあいつはデュラハンだから鼻が無くて匂いなどわからんと思うが・・・


 思っていたよりも多くの人間を見付けた、やはりどこの大陸も広く取りこぼしが多い。とりあえず見付けた人間はオークの部隊に任せて本国に送る、仮に逃げ出す人間がいてもオークの嗅覚と体力からは逃げられないし、逃亡すればそれは即座に食材だ、食料はどんなに多くても困らない。


「報告」


 オークの索敵班からのようだ。


「ここより北から人間らしき匂いが無数」

「無数だと?何故今まで気付かなかった」

「わ、わかりません、急に現れたものとしか・・・」

「それに『らしき』とはどういう事だ」

「それもわかりません、8割方は人間の匂いなのですが皆どこか違和感がある匂いだと・・・それに鉄らしき匂いも多量に混ざっています」

「また『らしき』か・・・まぁいい、ザラバンを呼べ!」


 部下に呼ばせるための指示だったが、丁度近くにいたらしく副司令官の白オーガ・ザラバンがやってくる。


「お呼びで」

「索敵班が北に見付けたらしい、全軍向かうぞ、準備を急がせろ」

「はっ!」


 元々移動する予定だったのもあり、10分程で準備が整う。全軍に向かって声を張り上げる。


「索敵班が北に食料庫を見付けた!食いたい奴等は休まず付いてこい!」


 軍から喜びの声があがるのを確認して北へ急ぐ。




 軍が崩れないギリギリの速度を維持しつつ休まずに進み何時間か経つ・・・進んでいる途中・・・オーク程の嗅覚は無い自分にすら解る程の人間臭が漂ってきた・・・たしかに違和感のある匂い・・・そして鉄のような匂い・・・だが血の匂いは全くしない・・・武器や防具だとしたら碌な訓練もしていない新兵の群れという事になる・・・戦にすらならなそうだ・・・




 見つけた・・・明らかに異常だ・・・風向きを考えればこんなにいたらもっと早く自分の鼻にも届く・・・こうやって見ている間にも少しずつ増えているように感じる・・・だが・・・


 笑みが深まる。


 血の匂いが全くしない・・・隊列の整え方も良くない・・・雑魚・・・ただの飯だ・・・陣形を整える価値すら無い・・・


 全軍に突撃の命令を出す為に振り返 っ!! 悪寒が走り飛び退く・・・今までいた場所に自分の身体程の黒い球体が現れ消える・・・


 なんだ今のは!?・・・明らかにやばい!・・・それにさっきまでは目の前の軍隊に気を取られて気付かなかったが誰かに見られている?・・・上?・・・敵軍の上方に目を向ける・・・なんだあの鳥は?・・・見た事が無いぞあんな鳥!・・・魔法使いが作った使い魔か!


 これが証拠と言わんばかりに鳥の方向から魔力を感じた直後、自分の位置で爆発的に魔力が増えたのを感じバックステップ、また黒い球体が現れては消える。左手を背中に回して投擲槍を取り出し、右手に持ち替え鳥に投げつける、鳥は避ける素振りすら見せず槍をうけて光の粒となり消えた。


 やはり作られた鳥だったか・・・だが他にも視線を感じるな・・・あれか・・・


 敵右翼上空


 さっきの鳥は避けなかったがこちらが槍を投げるのをあっちの鳥は見ているはず・・・ならこの距離では当らない可能性が高いな・・・それに向こうの攻撃も来るかもしれない・・・


「ザラバン!」

「はっ」

「俺はあの鳥を警戒する、全軍いつでも突撃出来るよう隊列を整えろ」


 ザラバンに軍を任せている間、鳥から目を離さずに警戒する・・・上空から音!上を向く、口を開け黒炎を噴く黒竜がいた。


 このタイミングでは避けられない!


 背中の大剣を取り出し盾にして自分の身体を守る。多数の味方が黒炎に巻き込まれる。


 熱っ!・・・くない・・・?・・・痛さも然程ない・・・なんだこれは・・・虚仮威しか?・・・だが火が身体を纏わり付いていて消えない・・・よくわからんが・・・


 大剣を地面に突き刺して背中に背負っているもう1本の投擲槍を取り出して黒竜に投げつける。あっさりと竜を貫き、さっきの梟と同じように消えた。


 魔法で作った竜・・・ちっ・・・という事はこの消えない火は何かしらの呪いと考えた方が良さそうだな・・・さっきの竜は呪いをばら撒く為の装置といった所か・・・


「ヴィラル様!」

「被害は?」


 聞いた瞬間、急に空気が張り詰めたのを感じて振り返る。茶色のフードを付けた人間が立っていた。いつの間にか敵軍はその人間の左右に別れるよう陣形を整えている。


「ザラバン」

「はっ!」

「すぐに軍を2つに別けろ、敵と同じ形にだ。左翼はお前が指揮して右翼はハベルグに指揮させろ。俺が突撃したらお前達も軍を突撃させろ」

「どうやらあれは一騎討ちをしたいようですが・・・あのような雑魚にわざわざ合わせなくてもよろしいのでは?」

「俺の命令が聞こえなかったか?」

「ッ!!差し出口を叩き申し訳ありません!すぐに準備します!」


 準備が整うのを待つ、理由は単純。


 たかが雑魚人間ごときが俺と戦えるつもりか!これほど頭に血が上ったのは産まれて初めてだ!一瞬で塵芥にしてやる!


 人間がオーガに一騎討ちを仕掛けるなど有り得ない事だった。ましてやオーガのトップである彼には特に。




 ルーファスは考えていた。


 「勝ち目は0」・・・「いるだけで味方に補正が乗るユニット」・・・「ヴラダムルの能力で墓地から場に戻せる」・・・なるほど・・・期待されていない悲しさというのはこういう感情なのだな・・・


 敵を見る、赤いオーガ、憤怒と言っていい表情でこちらを見ている、隣に立つ白いオーガよりも身体は大きく見えるが、視界共有で見た時よりは小さく感じる、威圧感もあれば圧迫感もある、おそらくそれで身体を実物よりも大きいと錯覚していたのだろう、顔は四角気味で3本の角、地面に突き立てた大剣は刃渡りだけであのオーガの身長程はありそうだ、右手でその柄を掴んでいる、腰にも2つの柄が見えるがここからでは小剣なのか斧なのか別の何かなのかわからない、防具は金属製のブレストプレートと急所隠しにすね当て、ブレストプレートは左胸だけを守るタイプ、毛皮で作られた服の上にそれらを付けていて、身体には黒炎が残っている。


 メイザス殿はしっかり仕事をしたようだな・・・なら次はこちらが果たさねば・・・メイザス殿は前のデッキで出した・・・つまり主殿が言うところの墓地にいかないから場に戻せない・・・「君を送るメリットが無い」・・・その通りだ・・・既にメイザス殿を失うというデメリットが発生している・・・そもそもガーゴイルを呼び戻せばいいだけだったのだから・・・だがそれでも・・・こちらの意を汲んでくれた・・・たかだか代えのきく存在の我が儘のために動いてくれた・・・君主としては落第点な判断をさせてしまったが・・・仕える側としては言葉を聞いて頂けるというのは喜びや救いになる・・・それに・・・私は騎士なのだから・・・自分の具申で出た損害分は働くのは当たり前だ・・・「君の思うように動きなさい」・・・許可は貰っている・・・武を振るい全うする・・・主の為に・・・


 敵も味方も準備が整い・・・そして・・・ルーファスとヴィラルがお互いに向けて走り出す。

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