こんなに来なくても…
クソッ!俺はこんな所で負けるわけには…そうだ!
「集え!歴戦の勇者!」
歴代の勇者を集結させたら約100億人の勇者が集まってしまい収拾がつかなくなった話。
…呪文を唱えると、そこにはこの世界の人口を超える数の勇者が集結していた。魔王も俺も目の前の状況に理解力が追いつかず、ただただ困惑顔で呆然と立ち尽くすしか無かった。魔王は「えぇ…ヤバ…」といった様子で若干引いている。俺は流石に魔王が可哀想になってきた。いくら魔王といえど100億人の勇者が一斉に立ち向かってたらもう泣きたくなるだろう。案の定、無数の勇者たちは魔王めがけて一斉に突撃してきた。「もうやめにしよう!」俺は叫んだ、そしてこう言った。「今までは人間と魔物が敵対していたから争いが起きただけで、仲良く協力して暮らせば争いは起こることはないし、大切な人を失うこともなくなる。俺たちが魔物を殺して英雄気取りしてる裏で、殺された魔物の家族が悲しんで、復讐として人間を殺して、人間を殺した魔物を俺たちが殺して英雄気取りして…そんなことしているからいつまでも変われないんだ。だからもうやめにしよう!」…これでハッピーエンドにしながらも感動できるエンディングに1000年に一度並の神対応により一件落着のはずだったが…「何言ってんだお前!」「じゃあ誰が責任とるんだよ!」「お前の家族が魔物に殺されても同じことが言えるのか?」「お前それでも勇者か?」浴びせられたのは仲間の理解や同情、ではなくまさかの批判、非難。まるで大炎上でもしている気分だ。すると、まさにパニック状態だった魔王城に鶴の一声が響く…「仲間の危機に気付けないどころか罵声を浴びせる。それがお前の時代の『勇者』ってやつなのか?」声の主は伝説の始まり、初代勇者だった。「違うだろ?仲間の危機にいち早く気づき、救う。最終的に世界まで救わなくちゃいけない奴らが何で仲間を追い詰めてんだよ。」「…」その言葉にさっきまで暴言を吐いていた勇者たちも黙り込む。そして初代勇者は最後に言った「どうやら俺たちの跡継ぎは魔王に操られているようだ。新米、今から俺たちが救ってやるからな!」オイオイ!?なんか俺操られてる判定なってるし!自我あります!自我有り余ってます!オイ初代!「仲間が困ってるんだから助けて当たり前だろ?」みたいな顔して親指立てんな!何がグッジョブだこちとら自我バリバリあるわ!そんなこんなで魔王はボコられ、天空魔城は落ち、魔王討伐成功パーティーが開かれた。「俺の時の魔王は第四形態まであった。」とか、「俺の時は魔王を倒した後、別の世界の魔王を倒した。」とか、「この技を編み出したのは俺で、次の代の勇者がこの技で魔王を倒した。」とか、「一代目からほとんど魔法使いはリーゼル家の子だった。」とか、「俺の偉業が故郷の石碑に刻まれてあった。」とか。「勇者ならではの話題」がとても盛り上がった。100億人いる勇者たちは、村にある食糧を食い尽くした。倉庫にあった備蓄も、隣町の備蓄も、全て食い尽くした。こいつら魔王よりよっぽど厄介なのでは…そんなことを考えつつもその日は早めに寝ることにした。