70.決意が固まった気がしました。
翌日、「昨日の魚のお礼に」と野菜と西瓜を持ってたっくんの家に行った。
「おー、西瓜」
「うん、西瓜。とあと野菜もどうぞって」
「さんきゅー。渡しとく。今から暇?」
「うん、暇」
「川行こうぜ」
「いいけど」
たっくんが野菜を置きに行くのを待って、二人で川まで歩く。今日も今日とて暑い。日差しは痛いし風は吹かないしでしんどい。
「ていうか何で川?」
「涼しいから」
「家でエアコンつけてる方が涼しいじゃん」
「家だとマジでアンテナ立たねーの」
「わかる」
「川ならアンテナ立つんだろ?」
「でもすぐ消えたよ」
「いいよ。送りたいだけだから」
成程彼女さんに昨日撮ったやつを送りたいのか。でも私を連れて行く意味はどこに。「一人で行けばいいのに」と言うとたっくんは「誘われたら宿題やんなくてもギリ許されるだろ」と親指を立てた。
「許されはしないでしょ……」
「お前宿題やってんの」
「向こうである程度済ませてきた」
「お前が……そんな進歩を……」
「どういう意味よ……」
でもそういえば毎年宿題やらずにたっくん家行って遊んでたっけか。そして怒られていた。そりゃそんな反応にもなるか。
「あ、好きな人にいいとこ見せたい的な?」
「そういうんじゃ……」
ない、けど遠くもないだろうか。出来たらサタン様に褒められるのが嬉しかった。それで黙々と問題を解いてたっけ。いいとこを見せたいわけではないけど頑張りたい理由ではあった。
「……」
思い出に浸っているとたっくんが「悪いな。別れ話の後で」と言い出した。
「違うって。別れてないっていうかそもそも付き合ってないっていうか」
「にしちゃあ考えすぎだろ。どうしたよ本当」
やはり心配してくれているらしい。ふと、意見を聞くだけなら聞いてもいいだろうかと思った。
「……たっくんはさ」
「ん?」
「もし、彼女さんと会えなくなったらどうする?」
「どういう理由かによる」
「理由……。……特に理由は教えてくれず、もう会いたくないって言われたら?」
「そりゃー理由聞くまで粘るわ」
さらりと言われた。それが当然だろうとでも言うように。
「自分が納得出来ないのに諦められるわけないだろ。ちゃんと話して、納得出来るまで聞く。そこまでする気になれなかったらそこまでの存在だったんだろうし」
「……そっか」
「実体験?」
「違うって。付き合ってないって」
そもそも付き合えるような相手ではないし。……魔王と付き合うなんて出来るんだろうか……?どうなんだろう、魔王様の恋愛事情。ちょっと気になる。
レヴィさんは好みじゃないぽかったけど他の人、例えばマリーさんとかはどうだったんだろう?わからない。それに自分がそうなりたいのかどうかも。
けれどたっくんに言われて心が決まった、ような気がした。




