7.今日は上がっていいよと言われました。
ひたすら案内と説明。脳内がぱーんしそう。
城の中を一通り見たと思ったら今度は庭。と言ってもちょっとだけ、城の周りを歩く感じだ。
庭もまた広い。城壁があるらしいけど全然見えないってどんだけだ。サタンすごい。
魔界だけど空には太陽もあった。マリーさんに聞いたら昔からあるらしい。植物も多分普通。薔薇咲いてた。割と人間界と一緒に感じる。
一日色々と案内してもらって、気付けば夕暮れ。魔界でも夕焼けは綺麗だった。
……ん、今何時だ?十一時頃来たはずだから……八時間……九時間は働かないといけないんなら……ん?七時頃までいるの?嘘でしょ?
そう思ったら泣きそうになった。気付いた途端疲労が襲ってくる。ただ歩き回ってただけだけどしんどい。社会人になったらこんなんなん?大人すごい。一応合間に休ませてもらってはいたけれど、疲れた。
「サクちゃん?大丈夫?」
「……すみません……ちょっと疲れました……」
「少し休みましょうか」
「はい……」
「ああ、ここにいましたか」
不意に声を掛けられ、振り向く。そこにいたのはサタンだった。足音とかしなかったけどいつ来たんだろう。魔王スキルだろうか。
「サタン様、どうかされましたか?」
す、とスカートの裾を摘んで一礼するマリーさん。優雅だ。するとサタンは私の方を向いて言った。
「サク。そろそろ時間ですよ」
「え?」
「もうすぐ十七時です」
「でも私十一時頃来たんじゃ……」
「正確には十時四十八分でしたが、今日はいいですよ」
「本当に……?」
「初日ですし、条件を明示していないこちらにも不手際がありましたので」
「神様……!」
「魔王です」
「そうだった!」
「……っ、ふ」
サタンが吹き出した。本当、沸点低いよなぁ。
「……それでは城に戻りましょうか」
「はーい」
わー、とサタンの後ろについて……っていいんか?はっとマリーさんの方を見ると何だか不思議な顔をしていた。何か、すごい優しい笑顔。夕日に照らされて綺麗だ。
「マリーさん……?」
「いいのよ。サタン様がいいって仰ってるし、戻りましょう」
「はい」
マリーさんとサタンの後ろをついて行く。
意外と優しい雇用主と上司のおかげで、どうにかやっていけるかもしれないな、と思った。