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66.見つけてもらえました。

黙々と紙飛行機を作って飛ばした。けれど誰も助けに来てはくれない、というか誰も通らない。散々飛ばしまくったせいで紙は最後の一枚だ。もっと計画的に飛ばすべきだった気がする。

やっぱり私のしていることは無意味なのでは、と思った頃、空中に浮かぶ黒い影に気がついた。

「……?」

何だろうあれ。人のようにも見える。前テレビかネットで見た黒衣の騎士とかそんな感じに見える。悪魔って空飛べる……か。多分。となるとあの人に助けを求めるべきかもしれない。

窓から身を乗り出すようにしながら「助けてくださーい」と叫ぶ。聞こえているだろうかと不安になったがきょろきょろとしているのでどうやら声は届いているようだ。

「ここですー!助けてもらえませんかー!!」

出来るだけ大きな声を出すが影はきょろきょろするだけ。何で?この塔そんなに見えないの?

そこでふとサタン様のツリーハウスを思い出した。隠蔽の魔術だか何だかがどうこうって言ってた気がする。ってことはここも外から見えなくされている?

最後の一枚に、「助けて」と走り書いて、急いで飛行機を折る。今まで飛ばした距離よりもずっと遠くにいるあの人のところまで届くだろうか。不安だけどこれに賭けるしかないと思って、願いを託した。

指先から離れた飛行機は真っ直ぐにあの人のところへ飛んで行く。けれど徐々に失速して、緩やかに地上への弧を描き始める。もう少し、どうか、と祈った瞬間その人が気付いて飛行機の方へ飛んでくれた。

そうしてその人はこちらをしっかりと見た。私は見えないだろうけれど、まるで見えているかのような行動にじんわりと胸が熱くなる。

黒い人はそのままこちらへ飛んでくる。どんどん近付いてきて、その人の姿がちゃんと見えるようになって、それがリュカさんであることに気が付いた。まさかリュカさんが助けに来てくれるなんて思わず一瞬びっくりする。

「え、リュカさん……!?」

思わず声を出すとリュカさんは空中に止まり、こちらに手のひらを向けた。何か呪文のようなものを唱えると、周りの空気が変わったのがわかった。何となく隠蔽の術を解いたんだろうとわかった。だって、ちゃんと私と目が合ってるから。

「あ、……え?」

リュカさんが窓枠に足をかけると、急にその姿が変わる。瞬き一つした後、そこにいたのはサタン様だった。

「え、あ?な、何、え?」

混乱しつつ、まさかベリアルじゃないだろうなと不安になった。さっきやったから、ベリアルも変化出来る筈だ。目の前にいるのが誰だかわからずいると、彼は部屋に入り、私を思い切り抱き締めた。

「無事ですか、美夏!」

「……あ、……っ」

それでわかる。この人は本当にサタン様だ。だって、他の誰も私の本当の名前なんて知らないんだから。

「サタン様……っ!!」

しっかりとサタン様の背に腕を回し、泣きじゃくる。よかった、と安心して、助かった、と気が抜けて、立っていられない。けどサタン様に抱き締められているからへたり込むこともなかった。

「何もされていませんか。怪我なんかもありませんか?」

「…………!!」

上手く喋れないので何度も頷く。サタン様は私が落ち着くよう背中や頭を撫でてくれた。その大きな優しい手に余計涙が止まらない。

「サタン、様ぁ……っ」

「帰りましょう」

「……っ、はい、……っ」

ひょい、とサタン様は私を抱えると、そのまま転移した。


◆◆◆


「ベリアル」

そのままお城に戻るのかと思いきや、サタン様が向かったのはベリアルの部屋だった。

けどそこにもサタン様がいるって何これどういう状況。

窓を背にしたソファーにベリアルが横になるような形でいて、その真正面にサタン様?がいる。困惑はベリアルも同じらしく。「何で?」と二人を見比べていた。

「……ああ、こっちにいたのはリュカくんか……。君変化上手いね」

「サタン様にかけていただいたので」

サタン様?が答えると姿が変わっていく。そこにいたのは確かにリュカさんだった。

「ていうかよく見つかったねサクちゃん。結構頑丈に隠蔽したハズなんだけど」

「サクが教えてくれたので」

「何やったのサクちゃん。次からそれ出来ないようにするからさ……っ!」

サタン様が片手を振った。するとベリアルの頬を何かが掠めて窓を割った。ベリアルの頬を赤い血が一筋流れる。

「次はありません」

「…………そーんなに怒ることないじゃん?たかがメイドでさぁ」

「君にとってはそうかもしれませんが私にとってはそうではありません」

「魔王様ともあろう方が心が狭いなぁ」

「何とでも言いなさい」

「あ、じゃあこうしよ。ウチのメイド好きな子連れてっていいからさ、サクちゃんと交換!」

「…………」

ベリアルの提案をサタン様は冷ややかな目で見つめる。まさか悩んでる……?

不安になったのも束の間、サタン様は再度手を振った。すると何か大きな白い光の球みたいなのがベリアルに向かって飛んで行き、その目の前で止まった。

「そんな提案誰が飲むと思いましたか」

「あ、うん。だよねー。うん。えー、じゃあ、お金とか宝石とか」

「…………」

じりじりと球が動いてるのがわかる。ベリアルは「あー待ってわかったもう手出さないから!」と叫んだ。それを聞いたサタン様は手を動かして球を消してしまう。

「……その言葉、違えたら承知しませんよ」

「はい……。……あ、でもサクちゃんがコッチに来たいって言ったら」

「言わせません」

あっさりと否定して、サタン様は私を抱え直した。「それでは」と言い残して転移する。ベリアルがまだ何か言いたげだったけど見なかったことにした。


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