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65.悪足掻きすることにしました。

ひとしきり泣いて頭が冷えた。というか段々白けてしまった。とりあえずここにいるということを外に知らせようと袖で涙を拭う。誰か助けてくれるかもしれないし。

窓から再度外を見るとまぁ高かった。よくマンガで見るような石造りの塔、だと思う。壁は煉瓦が組まれていて、部屋は丸い。

ならよく見る逃げ方、と真っ先に思いつくのはシーツをロープ代わりにして伝って降りる方法だ。

「…………高いなぁ」

サタン様のツリーハウスより高いと思った。そっと窓から離れる。怖い。あとシーツ裂こうにも刃物が無い。探して見たものの何故かナイフやカッターは勿論ハサミすら無かった。危ないから、とか?

武器にされないように?わからない。なのでどのみちシーツで脱出は出来なさそうだ。というかしたくない。

部屋の中に何か使えるものはないかと再度歩き回ったが今一つ無い。というか出る方法を考えてから使えるものを探すべきではなかろうか。

こんなことならサタン様に転移とか魔術を教えてもらっておけばよかった。素質があるかどうかはわからないけど千春が使えてたくらいだし頑張れば何とかなったんじゃないかと思う。無事に戻れたら何か習おうかな……。

部屋にあるのはベッド、ソファー、テーブル、それとドレッサー、本棚にクローゼット、チェスト。普通に生活が出来そうな感じではある。したくないけど。お風呂場とかにはタオルとかくらいで使えそうなものはなかった。

チェストを開けてみると下着類やタオル、謎の瓶(多分香水)や爪切りにメモ帳とペン……色鉛筆にスケッチブック?ベリアルは私を何だと思ってるんだろうか……。

適当にいりそうな物を入れてあるだけっぽいなこれは。雑貨というか。

本当にここに住まわせるつもりなんだなと背筋が冷えてくる。どうにかして逃げないと。

「……紙とペンか……」

助けてって書いて窓から投げてみようか。通りかかった人が助けてくれるかもしれない。通りかかる人がいるのかわからないけど。

試しに『閉じこめられています。助けてください』と書いて、丸めてみた。……丸めるとゴミっぽいな。丸めずそのまま落とす?それも微妙だな。

なので広げ直して紙飛行機を折ってみた。遠くに飛ばす必要も無いけど……いや、広い範囲に飛ばせたら助けて貰える確率も上がるかもしれない。よし飛ばそう。

えい、と窓から飛ばしてみた。一度丸めたせいだろう、紙飛行機はへろへろと落ちていく。やっぱ丸めたのはダメだな。

なのでまた紙に同じ事を書いて、紙飛行機を折る。あ、翼に書くべきだったかもしれない。その方がぱっと見でわかるもんな……。次はそうしようと二号機を飛ばす。今度はふわりと飛んで行ってくれた。ゆっくり宙を舞って落ちていく紙飛行機。あんまり遠くには飛んでくれなかった。

距離を出すべきだろうかと小さい頃遊んだのを思い出しながらメッセージを書いては折り、紙飛行機を飛ばしていく。少しずつ飛ばした方がいいのかもしれなかったけれど、どうせベリアルに見つかったら止められるだろうから、今の内に飛ばしきってしまうことにした。

ちらちら外を見てはいるけど誰かが通りかかる様子は無い。というか、ここ人が通るような場所なのか……?

道のようなものも見えないということはもしかしたら誰も通らないような所にいるのかもしれない。となると私のやっていることは大変に無意味なのでは。

それに気付いた途端自分が情けなくなった。本当に何も出来ないんだな。また鼻の奥の方が痛くなって、じわりと視界が滲む。頭が冷えたと思ったがそんなことは無かったらしい。

「…………」

泣きながら、それでも他に出来ることも思いつかないから、ひたすらに紙飛行機を飛ばす。

誰か気付いて、誰か助けて。そう願うが頭の中に思い描くのはただ一人、サタン様だった。誰か、なんて不確かな存在よりも、サタン様に助けて欲しくてたまらなかった。


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