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64.探してもらえるようでした。

「サクが消えたというのは本当ですか!?」

唐突に帰って来た城の主、サタンにメイド達は居住まいを正した。整列こそしていないが背筋を正したメイド達の間から、マリーが一歩前に出る。

「申し訳ありませんサタン様」

「状況は」

「ケルベロス様と庭で遊んでおりました。私が誰かに呼ばれたのでサクちゃんと離れました。その隙に何かがあったようです」

「ケルベロス」

「わん!」

ケルベロスがサタンの前に座る。サタンはその額に手を伸ばした。言葉はわからないが、記憶を辿る事は出来る。そうして一部始終を知ったサタンは顔を歪ませ、リュカを呼ぶよう言った。メイドが一人、命に従い駆けて行く。

「サタン様、一体何が……」

「……ベリアルが攫っていきました」

「!」

「メイドに扮して近付き、そのまま転移しています。ですからケルベロスも追えなかった」

「……申し訳ありません。私が目を離さなければ……」

「いえ……こんな手段を取るとは思っていなかったので……注意を怠った私にも責任があります」

悔しげな表情のサタンにマリーはどう言葉をかけていいかわからない。それでも自分が目を離さなければ、と繰り返そうとした時、リュカがやってきた。

「お呼びですかサタン様」

「サクがベリアルに攫われました。取り戻しに行くのでついて来なさい」

「……御意」

「サタン様、私も参ります」

「……いえ、マリーは城を頼みます。二人ともいなくなっては困りましょう」

「……かしこまりました」

「それでは」

くるりと踵を返すサタン。その後をリュカは黙ってついて行く。

「転移は使われますか」

「はい」

「先方に連絡は」

「しません」

「……左様ですか」

「行きますよ。……着いたら、任せます」

「…………かしこまりました」

二人の姿はそのまま消えた。



◆◆◆



「ねー、何あげたらサクちゃん懐くかなぁ」

「わかりかねます……」

カウチに横たわるベリアルの言葉に老齢の執事は眉を下げた。主が連れて来たのは人間である筈なのに野良猫か何かを拾ってきたような口振りだ。その態度のせいではと言いたいのを抑え、再度「わかりかねます」と言った。

「やっぱ若い子に聞くべきかなー」

「左様ですね……」

解放される、と執事が胸を撫で下ろしたのと同時だった。唐突に部屋に現れたのはサタンとリュカだった。

それを見てベリアルが面倒臭そうな顔で起き上がった。

「他人の屋敷にアポ無しで来るのってどうなのさ」

「他人の城に無断で侵入した上にメイドを攫った方に言われたくありません」

「思った以上に早くバレてびっくりしてるよ」

「…………言いたい事はそれだけですか」

部屋の空気が張り詰めたのがわかった。流石のベリアルもまずいと思ったのか「怒んないでよー」と誤魔化すように笑う。

「サクを何処へやりましたか」

「えー、わかんない」

「は?」

「連れて来たのは連れて来たけど何処かへ行っちゃったんだよねぇ」

へらへらと言うベリアル。それを聞いてサタンが顔を引きつらせた。

「……では、探しに向かっても?」

「んー?まぁいいよ見つけられるものなら見つけるといいよ」

何せウチ広いからさぁとベリアルは手を広げた。確かにベリアルの有する敷地は広い。それでもそんな事に構ってはいられなかった。身を翻して出て行った男にベリアルは首を傾げる。

「……あれ、てっきり君が探しに行くんだと思ったけど」

「私はこれ以上余計な事をされないように見張ります」

「ひどい言い草だなぁ」

見つからないと思うけどねーと言うベリアルを、冷ややかな双眸が見つめていた。


◆◆◆


ベリアルの敷地に黒い影が浮いていた。先程ベリアルの部屋を飛び出し、空へと上がったのだ。

ベリアルは貴族である。故にその領地は広い。なので美夏を捜す為にと空から地を見下ろしていた。

「…………」

屋敷を真ん中に、右手に小高い丘。左手には大きな池や森がある。広大な領地であるが故に幾つか小さな屋敷もあるようだ。それらを虱潰しに当たるしかない。全体像を把握してから、影は飛んだ。


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