55.着せ替え人形状態でした。
一週間後。私は魔王城にいた。鏡の前に立たされて、ドレスを取っ替え引っ替えするマリーさんと何故かファリ。あれやこれやと体の前に当てては外しを繰り返す。
「ドレス、何色がいいかしら。サクちゃん色が白いから原色寄りの方が似合う気がするのよね」
「でもピンクも可愛いと思いますー」
どっちでもいいです。そう言いたいのを堪える。だって二人ともめちゃくちゃ楽しそう。水を差すのもなぁ、と様子を窺っているけれど本当楽しそうですね……?
私を蚊帳の外に置いて二人はきゃっきゃきゃっきゃとドレスを選ぶ。というか、これサタン様が用意したんだよな多分。あれから体のサイズ測られたもんな。ほんの一週間でここまで用意出来るのすごくない?魔王だから?それとも魔術的なので何とかしたんかなぁ。一着でよかったんじゃないかなぁ……。
「魔王様は何をお召しになられるんですか?やっぱり黒のタキシードです?」
「いえ、ミッドナイトブルーのタキシードだから……そうね。青系はやめておきましょうか……。オレンジなんていいかもしれないわね。淡い……、これとか」
「あ、可愛い!」
「じゃあこれ着てみてサクちゃん」
「………………」
決まっただろうか。やっと解放される、と思いつつドレスを受け取り、着替える。背中のファスナーはマリーさんが上げてくれた。っていうかこれ鎖骨とか肩とか出てて恥ずかしいんですけど……!!
「も、もう少し大人しいの無いんですか!?」
「大人しいのって?」
「か、肩が出ないようなやつ……」
「無いわ」
「!?」
「ドレスってそういうものだよ」
「えー……」
二人に否定された。確かに色々見てたけど肩が出てないようなデザインは無かった気がする。我慢するしかないの……?
戸惑う私を後目に二人は「……もう少し色が濃くてもいいかもしれないわね……」だの「アクセサリーとか……ショールに濃いめの色乗せたら似合う気がします」だの言い合っている。羽織るものは欲しいです……。
「ボレロでもいいかしらね」
「そうですね」
まだ終わらないというかまだ選ぶんですか……と完全に諦める。もう好きにしてーと遠い目をした。
淡いオレンジのドレスには何色が合うかしら、やっぱりオレンジはやめますか。と振り出しに戻りかけたのを慌てて止める。
「こ、これがいいです」
「あらそう?」
「でも肩出てないのもあるよ?」
「あるの!?さっき無いみたいなこと言ってなかった!?」
「よく見たらあったよ」
確かにファリは肩の出ていない長袖のドレスを持っている。「じゃあそっちに……」と手を伸ばそうとしたらマリーさんに止められた。
「これがいいんでしょ?サクちゃん」
「…………はい」
謎の圧を受けた。そして今度はショールやらボレロやらを当てられる。小さい頃着せ替え人形で遊んでたけどあの時の人形もこんな感じだったんだろうか。人形に魂宿ってなかったとは思うけど。
「ちょっと濃いめの、この水色がよさそうね」
「そうですね」
赤や緑、黄色。色々と試されて、結局水色のショールに落ち着いたようだ。よし、これで解放される、と思いきや今度はドレッサーの前に座らされる。
「次はヘアメイクね」
「アップにしますか?」
「下ろしてる方が大人びては見えるけど……」
……まだまだ着せ替え人形タイムは終わらないらしい。




