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52.婚約者さんが現れました。

リュカさんが不意にサタン様に近付き、言った。

「……サタン様」

「何ですか?」

「レヴィ様がいらっしゃったようです」

「……いないと言いなさい」

かしこまりました、とリュカさんが部屋を出て行く。レヴィ様?聞いたことない名前だな。知り合い?でも居留守使おうとしてる?

何だろう、と思っていたのがサタン様にも伝わったのか、「気にしなくていいですよ」と言われた。

サタン様が言うなら、と思ったのも束の間、すごい勢いで部屋の扉が開いた。入って来たのは真っ赤な長い髪に真っ赤なドレスの、綺麗な女性だった。

「サタン様ぁ!」

猫撫で声でサタン様を呼びながら女性はサタン様に、つまりは私がいる方へと寄って来る。近くで見るとやっぱり綺麗な女性だと思った。美人。

「やぁっぱりいらっしゃるじゃない!私に居留守を使うなんてつれないですわぁ。婚約者ですのに!」

「…………」

サタン様が扉の方を見るとリュカさんが物凄く申し訳なさそうな顔で立っていた。すぐにめちゃくちゃ深く頭を下げたのを見ると申し訳なさそうというよりかなり申し訳ないと思っているようだ。

「……いないと言われていながら入って来るのは如何なものかと思いますよ、レヴィ嬢」

「だぁってぇ、いつもいつもサタン様に会いに来ては門前払いをくらうんですもの!今回こそはお帰りになるまで待ちますわ、って上がらせて貰ったんですのよ?」

「……強行突破の間違いでは?」

サタン様がリュカさんに視線をやると、リュカさんは深く頷いた。強行突破してきたのかこの人……。

女性……レヴィ様?は私に目もくれず、大げさな身振りで溜息を吐くと、言った。

「多少無理はしましたけど、それもこれも会ってくださらないサタン様が悪いんですよ?婚約者を一年近く放ったらかしなんて!」

「……君は婚約者ではなく、“候補”でした。それも父が死んだ今は無効です」

「でしたら、今からでも婚約者にしてくれませんこと?」

押しが強い。肉食系女子ってこんなんか。というか婚約者?候補?どういうことだ?二人の関係に?マークを飛ばしているとサタン様が「……そういえば出かける用事を思い出しました」と私を見た。いや見られても困る。

それに合わせてレヴィ様も私を見た。ものすごく見下すような視線を感じる。

「……その小娘はサタン様の何ですの?私を差し置いてサタン様と一緒にいるなんて」

「彼女は私のメイドですが、今日は特別に休みを与えているんです」

「ただのメイド風情がサタン様と二人っきりですって……?」

レヴィ様の視線がより鋭くなった。身の危険を感じたのはサタン様も同じだったらしい。「君には関係ない」と私の手を取る。

「それでは。いつ帰るかはわかりませんので適当にお帰りなさい」

「あ、サタン様ぁ!!」

レヴィ様が騒いでいたが、それを全く無視してサタン様は私を連れて移動してしまった。




◆◆◆



「……サタン様、ここは……?」

気がついたら木造の小屋のような所にいた。小さな机と椅子と棚があるくらいで他には何も無い。

隙間から光が入っているのを見るとそういい造りでもなさそうだ。そして何だか埃っぽい。

サタン様は木で出来た窓を開けた。つっかえ棒をしてそれが閉じないようにする。埃が光を反射してきらきらと舞い上がった。

「……いわゆる秘密基地ですね」

「秘密基地……」

魔王の口から出たとは思えない単語に思わず復唱する。秘密基地て。大人でしょこの人。っていうか悪魔。

「……ここを知っている者はいません」

「はぁ。リュカさんとかも」

「はい。マリーも、ユベールも、誰も知りません」

「……そんな所に私来てよかったんですかね?」

「貴女一人では来られない所ですから」

「?」

サタン様が窓の外を指さしたので近付いて見た。……小屋、っていうか、これツリーハウスだ……。

下を見たらちょっと足が竦むくらいの高さにこのツリーハウスは作られていた。成程無理だ。

「なので勝手に入られるような心配もありません」

「そうですね……」

そもそも場所もわからんしな。色んな意味で無理だ。

「でもリュカさん達なら来れるんじゃ?」

「隠蔽の術をかけているので見えません」

「成程」

「外から見たらただの木ですよ。森の、奥の方にあるので尚更近付く者はいません」

「はぁ。何でそこまでして……」

「…………」

青い瞳が私を見た。じぃ、と見つめられて思わず目を逸らす。何かいけないことを聞いてしまっただろうか。

「……そうですね。時間もあるし、話しましょうか」

そう言って、サタン様は目を伏せた。


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