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48.夏休みの予定を立てました。



「おはようございます」

「はい、おはようございます」

翌日は普通にサタン様がいた。マリーさんとリュカさんもいる。今日は普通にメイドをしないといけないようだ、ってもまぁ私普段から特に仕事してないんですけども。

「あ、そうだサタン様」

「何でしょう」

「テスト返ってきたんですけど、すごい点数よかったです」

「私が教えたのですから当然でしょう」

ふふん、と胸を張るサタン様。確かに魔王が頭悪いとか嫌だわな。仮にも王様なんだからそれなりの知能はあってほしい。

「それで、これお礼です。昨日渡そうと思ってたんですけど忘れてましたっていうかサタン様いなかったんで」

「おや。それはそれは」

昨日渡せなかったお菓子を渡すとサタン様は嬉しそうに目を細める。チョコ菓子だけどどうだろう。船の絵が書いてあるやつ。気に入ってもらえるかなぁ。

「後で、……そうですね、お茶の時間にでもいただきましょう」

「はい。召し上がってください。それとですね、おかげさまで夏休み補習とか無いんでちょっと来る日増やせます」

「毎日ですか」

「しゅ、宿題あるんでそれはちょっと。っていうか週三って言いましたよ……」

「宿題ならここですればいいんじゃない?」

ふっとマリーさんが話に入ってきた。見れば何とも楽しそうに笑っていらっしゃる。

「ここで……って……さすがにそれは」

リュカさんの視線も痛いですしと言うがマリーさんは「別にいいわよねぇ」と押し始める。絶対ダメなやつだって、とリュカさんを見ればリュカさんは「サタン様がお許しになるなら言うことは無い」と目を伏せた。いいというよりは諦めといった仕草だった。最近のリュカさんは優しい気がするって思ったけど絶対サタン様が何言っても聞かないから諦めてるやつだな。別に私悪くないけどごめんなさい。

「ではそうしなさい、サク」

「え、いや、でも」

「家でするんですか?宿題」

「…………」

「試験勉強と同じでしょう?どうせ息抜きと称して出かけて一日をフイにしたり休憩と称して……」

「あーそうですその通りです!」

これこの間試験勉強の時にもやったな!?と悔しく思いつつ肯定する。そうですよどうせしませんよ。よくわかってらっしゃる!

「……でも本当にいいんですか?」

「ええ」

「……じゃあ、来ます」

「そうなさい」

満面の笑みで言われたのでもういいということにした。サタン様がね、いいって言うから。うん。いいんだこれで。

「それじゃあ……土日と月曜は働きます」

「はい」

「火曜と水曜は宿題しに来させてください」

「木曜と金曜はどうするんですか」

「そこはまぁ普通に休みというか夏休みなんで休ませてください」

「…………何かすることが?」

「最近買うだけ買って本読めてないんですよ。だからそれ読みたいしネットとかしたいしゲームもしたいし」

「…………」

「というわけで」

「……わかりました。……我慢します」

一体何を我慢するんですかと言いそうになってやめた。面倒なことになりそうな気がしたので。けどサタン様はふといいことを思いついたというように目を輝かせた。

「……読書くらいならこちらですればいいのでは?」

「何でそんな来させたがるんですか……」

「…………」

ふっとサタン様の顔が曇る。けどそれも一瞬で、「そちらの世界のものを読んでみたいので」と笑顔で言われた。やだよ異世界転生ラノベとかチート無双マンガとか魔王様に読ませたくないよ……。

「いけませんか?」

「……や、サタン様が読んでも面白くないと思うので……。子供向けなんで……」

「それは私が決めることです」

「…………」

何も言い返せなかった。仕方ないから何か適当なの持ってくるか……。

「ではそういうことで」

「はーい……」

何はともあれ夏休みが楽しみだと思い、ふと気付く。サタン様って休みないのか?そもそも私が来ているのは土日だ。にも関わらず何かしらしている。休めないくらい忙しいのか……?

「まだ何か不満が?」

「……サタン様って休み無いんですか?」

「…………」

「夏休みみたいな長いのでなくても、普段っていつ休んでるのかなーと」

「ああ……。基本的には休んでいません。色々滞るので」

「大変ですね……」

「ですが……そうですね。少し休みを取っても?」

サタン様がリュカさんの方を見た。リュカさんは「多少でしたら問題はありませんよ」と返す。

「では、そうですね……。カレンダーを」

「はい」

日付を見ながらサタン様が「この辺りで休みましょう」と言った。ちらっと見たけどお盆の辺りだった。そういえばお盆のこと言ってないけど……休むならちょうどいいよね。

「サクを連れてどこかへ行きましょう」

「えっ」

「……何ですか」

「いえ、言い忘れてたんですけどその辺は田舎に帰るんで……来れないです……」

「…………」

すん、とサタン様が真顔になる。明らかに嫌そうだ。早く言わなかった私が悪いですけれどもそんな顔されるとは思わなかった。

「で、でもお休みならいいじゃないですか……」

「……貴女の休みと私の休みは直接関係がありません」

溜息混じりに言われてしまった。確かにそうか……。

「なので」

「で、でも田舎は帰りたいんで……。お墓参りとか行かないとですし……」

「…………」

「や、休ませてください……」

「…………」

「お土産買って来ますから……」

「…………」

無言のままのサタン様。ダメなんだろうか。流石にこれは断られると困る。久しぶりにおばあちゃん達にも会いたいし。

ちらちらサタン様を見ていると物凄く深い溜息を吐かれた。圧がすごい……。

「……わかりました」

「あ、いいんですか」

「その代わり何かしてください」

「何か……とは……」

「何かです」

「…………」

自分で考えろということか。何すればいいのさ、と考えてふと思いついたことを口にした。

「じゃあ肩たたきでもします」

「…………」

きょとんとした顔をされた。あれそんなに変なこと言ったかな……。一般的じゃないのだろうか。

「……どんな感じですか?」

「え」

「肩たたきとやらは」

「どうって……普通に、…………失礼します」

言葉で説明するよりも実際にやった方がいいだろうとサタン様の後ろに回る。……椅子の背もたれ大きいな……。

とはいえ叩けなくはないかー、と肩の辺りを叩く。いきなり強いと嫌かなと力を抜きながら軽くとんとんと叩いた。

「…………」

無言のサタン様。気持ちよくないんだろうか。でもわざわざ聞くのも何かなとこちらも無言のまま肩たたきを続ける。

もしかしたら力が弱かったかなと少し強くしてみたら、「…………存外心地がいいですね」とぽそりと言われた。どうやら気に入ってもらえたようだ。

「……これ、いつまでするものなんですか?」

「え?そりゃ……されてる側がもういいってなるまで…………でもなく十分くらいですかね」

「…………」

何となくサタン様が不機嫌になった気がする。でもしょうがないじゃんもういいって言わなさそうなんだもんサタン様。だから慌てて誤魔化してしまったけれどもダメかー。

「……休憩を挟めば引き続きしてくれますか?」

「まぁ休ませてもらえるなら……」

「疲れたら休んでいいですよ」

「あー、そういう。……はい、わかりました」

じゃあ暫くはたたいておこうか、と適当なリズムで肩たたきを続けるのだった。


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