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42.色々と決められたようでした。


「足腰が痛いです」

翌日、サタン様の部屋に着いて真っ先に言うと「私もです」と言われた。やっぱしんどかったですよね。

「思いの外、広かったですね我が城は」

溜息混じりに言うサタン様にリュカさんがぽつりと言った。

「……お言葉ですが、門から一度サタン様だけ城に戻り、馬車を拾って門に戻れば良かったのでは」

確かにそうだ。そうしたら無駄にあんな歩かなくてよかった。「本当ですよ。何でそうしなかったんですかサタン様」と言えば「……思い至りませんでした」と本当かどうかよくわからない事を言われる。

「まぁ、とりあえずは着替えてきなさい」

「はい……」

「行きましょう、サクちゃん」

「はーい」

今日は掃除かなー久しぶりだなーとマリーさんと部屋に行く。毎度毎度申し訳ないのと面倒なのとでメイド服を持って帰って着てくればいいんじゃないかと言ってみたことがある。

けれどそうすると洗濯を自分でやらないといけない。こっちにある分には洗ってもらえるんだけど、着て帰るとなるとそうはいかない。それにメイド服なんて洗濯しづらい。母さんに見られたらどんな曲解されるかわかったものじゃないし。

そういうわけで諦めてるけどもっといい方法無いかなー……。どのみち脱いで帰るなら着替えないとだから意味無いかー……。

着替え終わるとマリーさんに連れられて、着いた部屋にはサタン様がいた。執務室、というやつのような気がする。大きな机にサタン様が座っていた。

「……あれ?」

「どうかしましたか?」

「きょ、今日の仕事は……?」

マリーさんの方を見ると「私も聞いてないのよ。連れて来るように言われただけで」と首を傾げる。

「昨夜リュカには話したんですが、マリーを私の部屋付きに戻します」

「…………」

マリーさんがリュカさんの方を見た。するとリュカさんは頷いたので一応リュカさんもOKを出したようだ。

「で、サク。君はその見習いです」

「はい?」

「見習いです」

「…………」

今度は私がマリーさんを見た。マリーさんも予想外だったらしく、ちょっと目が丸くなっている。

「難しいでしょうか?マリー」

「……いえ、そのようなことは。ちょっと驚いただけです」

「そうですか。というわけで、今日は街に行きましょう」

「え?え?」

「かしこまりました。……サクちゃんはとりあえず見てて?どんな事してるのか」

「は、はい」

言われた通りマリーさんの様子を窺うことにした。

サタン様が立ち上がり、隣の部屋へ行く。マリーさんもその後をついて行ったので、慌てて後を追った。

隣は寝室だった。天蓋付きの大きなベッドがある。そして更に進んで別の部屋に入った。ウォークインクローゼットというよりは衣装部屋なのだろう。

色んな服がハンガーに掛けられていて、箪笥なんかもあった。私の部屋より広いなと思うとつくづくこいつ魔王だなと気付かされる。

「街に出るので、それなりの物を」

「お忍びでしょうか?」

「はい」

「かしこまりました」

サタン様と会話しながら、マリーさんはグレーのスーツを取った。そしてサタン様の所に持っていく。

そのままマリーさんはサタン様の着替えを手伝っている。何かマンガとかで見たことあるなこういうの。……え、こういうのやんのっていうかどこまで見ていていいんですかこれ?ローブのような物が脱がされサタンの肌が見えそうになった辺りでとりあえず目を逸らした。

「サク」

「は、はい?」

「いずれこれをすることになるかもしれませんよ」

「むっ、無理、ですっ」

「……マリーも、最初は顔を赤くしてましたねぇ」

「お、覚えていらっしゃるんですか……」

「ちゃんと、覚えていますよ。私の大事なメイドなので」

「……左様でございますか」

嬉しそうなマリーさんの声。やっぱマリーさんもサタン様のこと。……ん?『も』って何だ?誰と誰?ん?いや、サタン様と両思いって、そういう意味だ。うん。

「サク」

「はい!?」

「薄目でもいいから見てなさい」

「…………」

言われた通り薄目で見る。サタン様とマリーさんが吹き出す声が聞こえたけどしょうがないじゃん!見ないよ人の、それも男の人の着替えなんてさぁ!

薄目だからわかりにくいけどシャツを着せているらしい。それくらい自分で着ないんですかサタン様。……いや、何だろ、袖口留めてあげてるのか。それもそれで自分でやれよって思うけど。

あー、ズボンは普通に履くんだ。まぁ子供じゃないしな。ネクタイを締めてあげてから上着を着せてあげている。あ、もう普通に見ていいや。

「こんな感じで、お着替えを手伝うのも仕事なのよ」

「はぁ……」

「そのうち慣れるわよ」

「は、はい……」

慣れるものなのかというか慣れないといけないんですかマジですか。着替えくらい一人でやってくれよぅと思うけどそうもいかないんだろうか。

でも貴族って自分のことは自分でする的なの無いっけ。王族だとまた話は別なのか?

わからん。と思っているとサタン様が頭に手をやった。すると角の形が変わり、髪の色も変わった。大きかった角は小さくなり、綺麗な銀髪は真っ黒な髪になっていた。

「……短い方がいいでしょうか」

「背中で編みましょうか?」

「……サク、どっちがいいですか?」

「え?いや……どっちでも……」

「というより、どうでもいいと思っていますね?」

バレた、と思わず視線を逸らす。だってサタン様の格好とかどうでもいいよ。好きなのにしてよっていうか……あれ?短く出来るのか?

「……み、短い方がいいって言ったらどうなるんですか?」

「こうなります」

サタン様がまた髪に触れたかと思うとあっという間に短くなった。ショートカットだ。一気に変わった雰囲気に驚いているとサタン様は面白そうに「こういう風にも出来ますよ」と今度は肩口で揃った長さの金髪に変えた。これもしかして魔術的なあれ?えっすごい。そういうことも出来るのか。

「色々、変えられます。どんなのが好みでしょう?」

「え、えーと……さ、最初のよりちょっと長めで、金髪がいいです」

某マンガのとあるキャラクターをイメージしながら言うとサタン様はちょっとだけ真顔になって「こうですか?」と言った通りに変えてくれた。

「めっちゃいいです」

好み!と頷くとサタン様が吹き出した。マリーさんは俯いて笑いをこらえているように見える。

「ではこれで」

「かしこまりました」

では行きましょうとサタン様が言う。鏡を見ながら小さく「……こういうのがいいんですか……」と呟いていた。


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