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37.ベリアルの屋敷に行きました。


「とーちゃくー」

ててーん、と自分で効果音を口にしながら、ベリアルは手を広げた。ベリアルの馬車で連れて来られたのは、まぁ大きなお屋敷だった。よくマンガで見る豪邸、って感じだった。

「三十分したら帰りますよ」

「せめて一時間くらいいてよ……」

僕どんだけ嫌われてるのさ、とベリアルが言った。心底嫌われてると思う。

「……サク、私から離れないように」

「は、はい」

一歩、サタンに近寄る。離れたら何かされるんだろうか。……何があるかわかんないからとりあえずくっついてよ。きゅ、とローブの端っこを握ると何とも言えない顔で見下ろされた。

「?……ダメでしたか……?」

不敬とか言われはしないだろうけど近い物はあるかもしれない。手を離そうとしたけど「そうしていなさい」と言われたので安心する。

「見せつけてくれるねー」

「文句があるなら今すぐにでもお暇しましょう」

「やだー。とりあえず上がって上がって」

気さくに言いながら、ベリアルが案内したのは豪華なお部屋だった。

「こちらへどうぞ。お荷物はこちらへ」

不意に王子様か何かのような動きで椅子を引かれた。サタンの方を見れば「かけなさい」と言われたので大人しく座る。

「こういうエスコートとかもちゃんと出来るんだよ?見直した?」

「はぁ……」

「貴族なら出来て当然です。一々誇ることではない」

「サタンの風当たりが強い」

「今更です。……あと二十五分」

「カウントとかするかな普通。しょうがないな」

ぱちん、とベリアルが指を鳴らすとタキシードのお兄さんが出てきた。左手に銀のトレーを持っていて、その腕には白い布がかかっている。めちゃくちゃかっこいいウェイターさんって感じだ。

「失礼いたします」

トレーに乗っていたお菓子が並べられていく。マカロンにパウンドケーキにショートケーキ。マドレーヌやタルトもある。

「サクちゃんの好みがわかんなかったから色々用意させたんだけど、嫌いなものある?」

「い、いえ……」

どれもこれも美味しそうですと釘付けになる。そういやグミの存在忘れてたな。帰りでいいか。

「ついでに美味しいミルクも手に入ったから皆強制的にミルクティー。ちなみにサクちゃん紅茶は何が好き?」

「……レモンですかね」

「えーごめーん。でもアレルギーとか無いなら今日はミルクで我慢してくれるかな。今度は美味しいレモン用意しとくからさ」

「…………」

今度があるのか、と思いつつサタン様を見ると「今度はありません」と否定してくれた。よかった。

「また誘わせてよー、ねぇ」

「…………」

「まさかのだんまり。いいけどさ。飲んでよ」

「……カップ、君のと替えなさい」

「はい」

す、とベリアルとサタン様がティーカップを入れ替えた。そして元ベリアルのカップは私のと替えられる。え待って何か入ってたらどうなるの私死なないこれ。

「サクちゃんは人身御供かい?」

「元々生贄でしたから」

嘘でしょとサタン様の方を見る。

「……もし、何か入っていればベリアルは止めるでしょう」

「本当ですか……?」

「僕死体も愛せるよ」

ベリアルの言葉を聞いてサタン様が速攻で私のカップと自分のカップを入れ替えた。よかった優しい!

「えーと、結局どれが誰のだったかわかんなくなったよ。元々僕のはサタンのとこかな?」

ベリアルが言うとサタン様は何かを思いついたようにベリアルのカップも引き寄せ、くるくると適当に入れ替えてしまった。見てはいたけど途中でわからなくなった。フェイント混ぜてくるから……。

「この方が都合がいい。もしも何か入れたなら早く言いなさい」

「ひどいことするなぁ。別に害のあるものは入れてないからもう何でもいいよ」

「…………」

「疑いの視線が痛い」

「……君から飲みなさい」

「とことん疑うねぇ。まぁいいけど」

ベリアルがカップに口を付けた。小指を立てているのはわざとだろうか。ベリアルはそのまま一杯飲み干してしまった。

「……ほら、何とも無いだろ?」

「そのようですね。いただきます」

「はい……」

サタン様が飲むなら大丈夫だろう、とティーカップに口を付ける。ほんのりと甘くて美味しい。砂糖も入ってるのかな、と思ったらがしゃんと音を立ててサタンが突っ伏した。

「……え?」

「…………」

「え、ちょ、サ、サタン様?」

肩を掴んで揺するが起きない。ベリアルの方を見ればベリアルはにんまりと笑っていた。


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