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34.試験が終わりました。


それから毎日サタン様の所に通った。平日は夕方ちょっとだけ、土日は朝からずっと。正直嫌だったけど割と楽しかった。悔しい。

何せ教え方が上手いんだ。数学なんてそもそも何を問われてるのかわからなかったのに、どの公式を使えばいいかというところまで理解出来るようになった。

英語も前置詞の使い分けとか覚えにくい単語の覚え方とか、わかりやすかった。しかも例文を読んでくれることもあったのだがとても流暢な発音だった。さすが西洋の悪魔。

生物や世界史なんかもまぁわかりやすく覚えやすく教えてくれた。息詰まったら休憩と称してちょっとだけ庭で遊んだりケルベロス様もふもふさせてもらったりと飴と鞭の使い方も上手かった。

実際に試験も今まで以上に解けたと思う。いつもなら三十分くらい残してもうわからん。って投げてたのに時間ぎりぎりまで問題用紙に向かっていた。今まで邪険にしてすみませんでしたとちょっと謝るくらいに助かったと思う。

そして今日で試験も終わったので、週末からまたサタン様のとこに……またってのも違うか。毎日行ってたし。まぁ、行くんだけどその前にお礼を言いに行こうと思い立ったのである。

何だかんだ試験勉強が楽しかったのって初めてだしなーとコンビニでお菓子を買って帰った。他に何かお礼らしいものが思いつかないんだけどこんなんでいいだろうか。魔王だからこんなもの食べないかな……。

とりあえず、お礼は言いに行こう、と手鏡を立て掛けて色の変わった姿見に手を突っ込んだ。


◆◆◆


「何しに来た」

「え、うあ、すみません……」

サタン様の部屋にサタン様はいなかった。代わりなのかリュカさんがいて、書類の束を抱えていた。

「え、えーと、サタン様は……」

「来客中だ。今日はお前来る予定だったか?」

「いえ、違うんですけど無事試験も終わったんでサタン様にお礼言いに来ました……」

「ああ……。……伝えておく」

「ありがとうございます。あとお菓子買って来たんですけどサタン様食べますかね……」

「…………」

ビニール袋をがさりと鳴らすとリュカさんが近付いて来て覗いた。「……恐らく召し上がるだろう」と呟く。

「サタン様は珍しい物が好きだからな」

「人間界の物ってやっぱ珍しいですかね」

「ああ。お喜びになるだろう」

「…………」

スーパーでお菓子を数種類買っただけだけど果たしてそんなに喜んでもらえるんだろうか。安すぎない?大丈夫?

思っているとドアが開いた。立っていたのはサタン様だった。

「サクが来ているような気がしたんですが」

「!?」

「ああ、やっぱり」

謎の台詞と共に現れたサタン様。いつものようににこにこと寄って来る。何となくケルベロス様の寄って来方を思い出してちょっと笑ってしまった。ケルベロス様も尻尾振りながら寄って来るもんな。あんな感じに似てる。

「どうしたんですかサク」

「試験終わったんでお礼言いに来たんですけど……何で私来たのわかったんですか?」

「感覚でわかりますよ。異質なものがあるなと」

「異質……」

「悪魔でない、という意味です。悪い意味ではないですよ」

「ああ……」

ていうかサタン様は来客中じゃなかったのだろうか。それを察してくれたのかリュカさんが「サタン様、パイモン様は……」と声を掛ける。

「ちょっと待ってもらっています」

「左様ですか」

やっぱり来客中ではあるらしい。なら邪魔になるしなとお菓子を渡して帰ろうと思ったら、サタンに腕を掴まれた。

「ちょうどいいから来なさい」

「はっ!?」

思わずリュカさんの方を見るとリュカさんは何とも言えない顔をしていた。もう好きにすればいいと目が言ったような気がする。

「え、いや、でも」

「大丈夫ですよ。友人なんですがベリアルとは全く違うタイプなので」

「で、でも……」

「では行ってきます」

ずるずると引きずられるように、サタン様に連れて行かれてしまった。部屋を出る直前、リュカさんの溜息が聞こえたのは絶対気のせいじゃない。


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