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30.大型犬の定義が知りたくなりました。


苦笑するマリーさんと部屋を出て歩いて城を出る。今日はいい天気だ。庭仕事とかだろうか。

「ところでサクちゃん、動物ってどう?」

「え?動物……?」

「犬とか、好きかしら」

「ああ、好きですよ。可愛いですよね。もふもふしたくなります」

「そう。……大型の犬とか、どうかしら。怖い?」

「ゴールデンとかラブラドールとか、いいですよね!抱きつきたくなります。小さい頃アニメで見たみたいに乗れたらいいのになーなんて思いますよ」

「ああ、ならよかったわ。実はサタン様ね、ペットも飼ってらっしゃるの。今日はちょっと気分を変えて、そのお世話というか、遊んだりする感じにしようと思って」

「そんなんでいいんですか?全然仕事っぽくない……」

「お散歩とか、小屋の掃除とかあるから普段の掃除よりは重労働よ」

「あ、そうなんですね……」

話しながらてくてく歩いて。ついたのは小屋、というか何か大きな家にも見える建物だった。

「……小屋……?」

「ええ。ケルベロス様の小屋よ」

「……ケルベロス?」

ケルベロスって確かあれだよな。頭が三つの地獄の番犬……。え?いや?そういう名前つけてるだけだよね?ガチのケルベロスじゃないよね?

「じゃあ入るわよ」

「え、はい……?」

きぃ、と扉を開けてマリーさんが入る。やっぱり普通の家にも見える。マリーさんはすたすたと歩いていく。二階建てではないけれど広い。

「ああ、いたわ。ケルベロス様」

「…………」

マリーさんが言う方には丸くなっている、大きな獣。獣は耳を動かすと、起き上がり、立ち上がった。それは大きな獣、ライオンとかそれくらいだと思う。それで、頭が三つあった。

「あの、マリーさん」

「なぁに?」

「ケルベロスって」

「ええ。ケルベロス様。サタン様のペットよ」

「…………」

にこ、と笑うマリーさん。ケルベロスはぐるる、と唸った。

「…………」

怖かったのでずさ、と退いて壁の陰に隠れる。

「サクちゃん?」

「いや、あの、怖いんですけど」

「動物平気って……」

「限度がありますよ!?大型犬のサイズ明らか越えてるじゃないですか!!」

「でもこの大きさなら乗れるわよ?」

「そういう問題じゃないですって!!」

わたわたしているとケルベロスが寄って来た。鎖とか無いの!?小屋だから無いか!そうか!!

こういう時は逃げたらまずいんだったか。ととりあえず動きを止める。ケルベロスは興味深そうな顔をしながら近付いて来る。その様子はとても怖い。ゆらりゆらりと来るその背後にどす黒いオーラが見える気がする。

「あ、あの、マリーさん」

「何かしら」

「ケルベロス、さんは噛みますか……っ」

「噛まないわよ」

「人間も、ですか……?」

「…………」

あ。と聞こえた気がした。その点は考えて無かったわ、とでもいうような。

その頃にはケルベロスは私の目の前に立っていて、ふんふんと私の匂いを嗅いでいた。怖いけど下手に動くのも怖い。じっとしてその様子を窺うしかない。

真ん中の頭が揺れる。お腹の辺りから、足下から、匂いを嗅いだかと思うと、濡れた鼻先を押しつけて私を見上げた。

「……わん」

「…………」

思いの外可愛い鳴き声だった。わんて。犬か。いや犬だわ。犬だけど。

「わん」

「わふ」

「きゅーん」

三つの頭が鳴く。何だこれ、と思いつつ手を出した。上からいくと怖いだろうと下から、そっと。真ん中の頭の首を撫でる。すると真ん中の頭は気持ちよさそうに目を細めた。

「…………」

「わん」

もっと撫でて、というように尻尾がぶんぶんと振られる。人なつこいのかよこの見た目で。思いながら両手でもふもふしてやった。

「わふ。わふ」

「きゅーん……」

両横の頭も鳴くのでもふもふしてみる。どの頭も嬉しそうにもふもふされてくれた。

「ちょっと焦ったけど……大丈夫そうね」

「そうですね……」

思った以上に大丈夫でしたとケルベロスを撫でる。慣れると普通に可愛い。犬だ。これ。

「可愛いですね」

「わふん」

「そうでしょう?」

声の方を見れば、いつの間に来たのか魔王様が立っていた。仕事はいいんですか魔王様。

「今日はケルベロスの世話をしてくれると聞いたので遊びに来ました」

「……リュカさんには言って来たんですか?」

「今日は仕事をしませんから大丈夫です」

どういうことだ、と思ったら「緊急性があるものは昨日やりました。それ以外は明日するということで今日は休みです」と魔王様が笑う。嘘でしょちょっと。

「それもあって今日はケルベロス様のお世話なのよ。遊び半分サタン様のお相手半分」

「あ、そういう……」

納得した。これは仕組まれていたらしい。

「ですから、今日は一日一緒ですよ」

何でそうなったのさ、と言いたいのをこらえて「わー嬉しいですー」と棒読みで言っておいた。マリーさんが苦笑して、魔王様が一瞬微妙な顔をしたけど「嬉しいならよかった」と本気かどうかわからないことを言った。

「じゃあサクちゃん、ケルベロス様のお散歩をお願いするわね」

「ああ、はい。わかりました」

犬のお散歩か。やったことないけどリードとかいるのかな、と思っていたらボールを渡された。

「ボール?ですか?」

「ええ。お散歩っていうより遊んでもらう、かもしれないわね」

「はぁ」

「庭は広いから、たくさん遊んでらっしゃい」

「はい!じゃあ、行こうかケルベロス……様」

様付けはしないといけないんだろうかと思ったけどマリーさんがしてるしなということで付けておくことにした。敬語の方がいいのか?まぁいいか。遊ぼう。


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