29.魔王様への応対がわからないままでした。
翌日、魔界に行くといつものようにマリーさんと魔王様がいた。
「おはようございます」
「おはようございます……」
「眠そうね」
「眠いですね」
はは、と苦笑すると魔王様も笑う。
「でも寝坊はしないんですね」
「頑張って起きますよ……」
命かかってるもん。比喩じゃなく、と心の中で言った。
「では今日も頑張りなさい」
「はい……」
◆◆◆
マリーさんの部屋で着替えて、今日も掃除だろう、と思ったら違うらしかった。
「今日はちょっと違う事をしてもらおうかと思って。……急に違うことするのってどう?難しい?」
「え、と……や、頑張ります」
「サクちゃんはいい子ねぇ」
うふふとマリーさんが笑う。嫌とか言っていいんだろうか。でも掃除ばっかも正直しんどかったのです。
「……ところで今日はファリはいないんですか?」
「ああ……」
何故かマリーさんが言いにくそうに視線を動かした。何かあったのだろうか。ドキドキしながらマリーさんの言葉を待つと、マリーさんはファリの口調を真似て言った。
「魔王様が頻繁にいらっしゃるし、サクの応対も適当だしで心臓が保たないからやだ。……ですって」
「…………」
これは私が悪いんだろうか。いや魔王様のせいも多少あるに違いない。そうだと言ってマリーさん。
「と、いうわけで……。ごめんなさいね」
「え?」
何故かマリーさんに謝られた。絶対にマリーさんは悪くないのに。
「本当はサクちゃんも同年代の子の方が楽しいかしらって思ってファリちゃんと会わせたんだけど、まさかこうなるなんて思わなかったから……」
「マリーさんは悪くないですよ!本当、……魔王様が9割悪いです」
「9割……」
「1割くらいは私のせいでもいいかなと……」
「悪い気はあるのね」
「……そもそも魔王様が来なければ応対しなくていいんだから私悪くなくない?とは思ってます」
「素直ねサクちゃん」
「だって……」
「まぁその通りよね。サクちゃんが予想外に気に入られてるから」
「巡り巡って私のせいなんでしょうか……」
「そうは言ってないわ。……そもそもの原因としてはサタン様だしね。さ、行きましょ」




