27.三人でお昼ご飯を食べました。
微妙なテンションで掃除をしていたが今日はあれきりサタン……じゃなくて魔王様は来なかった。珍しいこともあるもんだ。
「二人とも、お昼にしましょ」
マリーさんが呼びに来てくれたので「はーい」と二人でマリーさんについていく。……今日も魔王様と食べるのか?その場合ファリ連れて行くの?と思ったら違った。
食堂について、マリーさんの向かいにファリと隣り合わせに座って、私が思っていたことがわかったのか、マリーさんが笑う。
「今日はサタン様はお出かけされてるから食堂よ」
「あ、そうなんですね。ああ、だから今日全然来ないんですね」
「そうよー」
「……?」
ファリが不思議そうな顔をする。マリーさんが「たまにサクちゃんがサタン様とお昼をいただくことがあるわ」と言った。
「え……っ」
「その時はファリちゃんも一緒に行きましょうか」
「そっ、そんな恐れ多いこと……!」
「大丈夫よサタン様ですもの」
「そりゃ、マリーさんなら大丈夫かもしれませんけど……」
「大丈夫よサクちゃんが何言っても全く気にしないもの」
「それはどうかと思います……」
「サタン様のお気に入りだから、あんまり外から言えないのよ」
「でも……」
色々言われて何ともいたたまれない気分になってきた。
「こ、今度からちゃんとした態度にします……」
「別にいいと思うわよ。……リュカがいるところはそれなりの方がいいかもしれないけど」
「気を付けます……」
今日のメニューはサンドイッチだった。カンパーニュに野菜とハム?が挟まっている。あと赤いスープ。トマトっぽくない赤さだけど何だろうこれ……。怖いから聞かないでおこう……。美味しいから何でもいいや。
「二人とも仕事は捗ってる?」
マリーさんの言葉に首を傾げつつファリと顔を見合わせる。捗っているんだろうか。
「サタン様いらしてないからいつもより進んでるかと思ったんだけど……」
「……一回、来た……いらしたんですよ。サ、魔王様」
「ええ」
「ちょっと色々あって……その……」
「一体何があったの……」
「マリーさん、何でサクに魔王様に対する態度とか教えてなかったんですか!」
たん、と机を叩いてファリが言う。「不敬極まりなくてすっごい焦ったんです!!」と騒ぐ。本当、ごめん。
「教えるタイミングもなかったし……むしろそういいところをサタン様が気に入ってるみたいだしで……」
「だからってあんな、本当びっくりしたんですからぁ!」
「そうよね……」
「何かすみません……」
ごめんなさい、と頭を下げるとマリーさんが苦笑する。
「もう少しファリちゃんに言っておけばよかったわね」
そういう問題なんだろうか。ていうか何を言っておくんだろう。魔王様にひどい態度とってるけど気にしないでねとか?それもそれで混乱すると思う。
「で、でもファリだってあんまり堅苦しくなくていいって言われてたし……」
「だからって急に態度変えられるわけないでしょ……」
「きっとサクちゃんがいたからね」
「え?」
「ファリちゃんに対してちゃんとしなさい、って言ったらサクちゃんもそれに従うしかないでしょう?だからそう仰ったんだと思うわ」
「…………」
「ほらー!!」
だからサクが特別なんだって!とファリに言われた。そんなんだとは思わないじゃないか……、ていうか私何でそんな気に入られてるの。どういうことなの。今更だけど、大変な状況なんじゃないのか、と知った。




