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23.やっと解放されました。



部屋を出ると心配そうな顔のマリーさんとリュカさん、それにユベールさんもいた。

「サクちゃん!大丈夫だった?」

「あ、マリーさん……。……疲れました」

素直に言うと苦笑された。「何事もなかったんならよかったわ」と。

「何か言われたか」

「い、いえ……?……何か?って?」

「……いや、詳しくはサタン様に聞くからいい」

リュカさんはちょっとだけ安心したような顔で部屋に入って行った。ユベールさんも「片付けてきましょう」と入って行く。

「サクちゃん、ちゃんと食べられた?}

「あ、はい。……何かよくわからなかったですけど……」

「そう。……とりあえず戻りましょうか」

「は

い……」

マリーさんとさっきまで掃除していた客間に戻る。どこまで何したっけ、と思ったらマリーさんに「どこまで出来たかしら?」と確認された。

「えーと……」

「覚えてなくてもいいわよ。ベリアル様がいらっしゃるなんてちょっと……いえ、かなり予想外だったもの」

「で、ですよね。……あ、この辺はやりました」

「そう。……この辺りもやってあるわね」

「あ、そうです」

「うん、やってあるところは大丈夫そうね。残りは一緒にやりましょ」

「は、はい」

「一人でいるのも嫌でしょう?」

「……はい」

ちょっと不安、というか何となく落ち着かなかったのでとても嬉しい。マリーさんは本当に優しいな。

「ベリアル様はサタン様のご友人でらっしゃるの」

不意にマリーさんが説明してくれた。そうなのか。道理でサタンに馴れ馴れしかった。

「ご友人って言ってもサタン様はあんまりよく思ってないんだけどね」

「ですよね」

サタンすんごい嫌そうな顔してたもん。態度もあれだったもん。と言うとマリーさんが笑う。

「そうね、一方的にベリアル様がサタン様に構いにいっている感じだし、性格的にも合わないわ」

「でしょうね……」

どう見てもあの二人の性格は正反対だ。一緒にいるだけでも苦痛だろう。

「あの人あれですよね、どうせサタンの反応が面白いとかそんな感じで構いにいってますよね」

「その通りよ。よくわかるわね。あと様つけてね」

「あ、すみません……。よく見ます。マンガで。……でもああいうのって根はわかりあってたりするんですよね」

「あ、それは無いわ」

「全否定」

「無いわね。本当、ベリアル様が一方的に構いに来るし気に入ったメイド口説くし連れて帰るしお腹空いた喉乾いた今日泊まっていいとかいきなり言うし……」

マリーさんの表情が凍っていく。人の家でそんなことしてるってやばい人じゃないかベリアル……。

この分だとお城の人達もいい印象は抱いていないのだろう。そう思えばリュカさん達が不安そうな顔をしていたとか、部屋から出た時皆さんが様子を窺っていたのも納得がいく。

「だから、ベリアル様には気を付けてね」

「ど、どのように……?」

「一番手っ取り早いのは、どんなものであれ約束をしないこと」

「約束……」

「悪魔との約束はどれだけ些細なものでも契約よ。だから不用意に約束をしたらどうなるかわからないわ。……特にベリアル様はこの魔界でも強い力を持ってらっしゃるの。純粋な力だけならサタン様とほぼ同じ。権力とか人望とかそういうのを加味したらサタン様が圧勝するけど」

「ベリアル様って一体……」

「不用心でした。すみません」

「ふぁ!?」

いきなり背後で声がして驚く。見ればサタンが立っていた。サタンはちょっと肩を落として、申し訳なさそうな顔をしている。

「サタン様……。ベリアル様は……」

「帰らせました。サク、すみません。ちょっと目を離した隙にキミを探しに行ってしまいました」

「い、いえ……」

別に謝られるようなことでもないと思う。それにマリーさんの話を聞く限り、サタンも被害者だろう。

「しょうがないですよ。あの人他人の言うこと聞かないタイプっぽいですし……」

「はい。何を言っても聞きませんし聞いたところで従いません」

「た、大変ですね……」

そんなのに懐かれるとは。……あれ、どこで知り合ったんだろう。

「……友達だったんですか?」

「は?」

「あ、いやどうやって知り合ったんだろうかと……。学校とか?ですか?あるんですか?」

「……そうですね。学校です。友人ではありませんが」

「そうなんですね」

「ええ。……関わりたくないのに関わってくるんです」

「あぁ……」

「当分来ないようにとは言いましたが……来る可能性が高いので気をつけなさい」

「はぁ……」

「……サク」

「はい」

「あれと二人きりにならないように。万が一なったら逃げなさい。何かされそうになったら大声を出して人を呼ぶこと」

「…………」

対処法がまんま不審者に対するあれで笑いそうになったけど我慢した。防犯ブザー持って来た方がいいのかしら。

「返事は?」

「は、はい!」

「マリーも出来る限りサクから目を離さないように」

「かしこまりました」

「……部屋付きにしたいですねぇ」

ぽつりとサタンが言う。そういえばそんなこと言ってたっけか。そうしたらサタンが常に側にいるようになるんだろう。ちょっと嫌だ。

「ですがサタン様、そうするとベリアル様がよりいらっしゃるようになるかと」

「…………面倒なのに目をつけられました」

はぁ、とサタンは深い溜息を吐いて「迂闊でしたね」と呟いた。

「サクを雇うに当たって城の者に周知させておいた方がいいと思ったのでそうしましたが……それを城外の者に口止めはしませんでした」

「だからベリアル様のお耳にも届いたんですね」

「ええ。あれの性格をわかっていればこうなることは予想出来ていたはずですが……。すみません」

やはり申し訳なさそうな顔でサタンが言う。別にサタンが悪いわけではないのにな。

「……じゃあ、もしまたあの人来て、何かされそうに

なったら呼ぶんですぐ来てください。それでチャラってことでダメですか?」

「…………」

サタンにびっくりした顔をされた。マリーさんもそれは同じようで、二人ともぽかんと私を見ている。

「……てっきり、私は嫌われているのだと思っていましたが」

「え?」

「遊びに来ても邪魔者扱いするじゃないですか。しかも十字架まで用意する始末」

「仕事の邪魔は邪魔なんで……」

「だからって」

「……というかサタン様、今は」

「ちゃんとサクにフォローしてくると言ってきました」

「許可出たんですか……」

「後でもいいんじゃないかとかそこまでする必要もないのではとは言われました」

これまたリュカさんが怒るパターンと違うか……。言うだけ言ってるからまだマシなのか?

「ですが……そうですね。戻ります」

「あ、はい……」

軽く私の頭を撫でて、サタンは去って行った。ちょっとしょんぼりしていたのが印象的だ。

「もうあんまり時間もないから、続き軽くしましょっか」

「あ、は、はい、すみません全然仕事してないですね……」

「今日はいいわ。しょうがないもの」

「すみません……」

つくづくマリーさんが優しい。怒ることあるんだろうかこの人ってくらい優しい。というか今のところここの人に怒られてないなぁ。リュカさんには脅されたけど怒られたことは今のとこない。いい人ばっかりだ。

「サクちゃん?どうかした?」

「あ、いえ、皆さん優しいなぁって」

「そうかしら?」

「はい。色々教えてくださるし怒られることもないし……」

「怒られるようなことをしていないからよ。真面目に仕事してくれるもの」

「……そうですか……?」

「ええ。だからサクちゃんは何も気にしなくていいのよ。出来ることをしてくれれば」

「……はい」

優しいマリーさんの言葉に頷く。迷惑かけないように気をつけよう。あと防犯ブザー持ってこよう……。


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