20.試してみました。
寝室に移動して掃除を始める。上から埃を叩いて落として、と教わった通りにやっていく。
「ちゃんとしてますか?」
「っ、は、はいっ!」
抜き打ちでサタンが現れた。びっくりした。
「マリーは……」
「あっちのお部屋されてます」
「分担なんですね。少しは仕事覚えましたか?」
にこにことするサタン。「メモ見たり思い出しながらです」と返せば「頑張っていますね」と頭を撫でられた。
そういえば十字架って何の効果も無いんだろうか。普通に触られてるからまぁ効果無さそうだけど。
「どうかしましたか?」
「十字架って効果無いんですか?」
首に掛けていたものを取り出す。するとサタンは不思議そうな顔でそれを見た。
「……十字架、ですか」
サタンはふむ、とそれを手にした。一切効果無いなこれ。
「聖職者の加護を受けているわけではないので、ただの……金属ですね」
「そ、そうですか……」
ただの金属とまで言われてしまった……。確かにそういうものか、と納得はしたけれどただの金属って。
「……じゃあ、もしそういう、加護を受けたものなら効果はあるんですか?」
「…………」
サタンが黙る。笑みが消えて、冷たく見下ろされた。あれ、何か変なこと言った?
「……ある、と答えたら、どうするんですか」
「え……」
どうって……単に邪魔しに来なくなるかなってだけなんだけどそれはダメなんだろうか。
というか聖職者って何だ。神父?教会とか行ったらいいのか?行ったことないしとても行きづらい。他宗教の人が行っていいものなんだろうか。
サタンは無言のまま、私を見下ろし続ける。いつもとあまりに違った様子にちょっと怖くなった。
「……そもそも聖職者に知り合いいないんでどうもしないです」
そう答えればふ、とサタンが笑う。いつものようににこにことして、また私の頭を撫でた。
「そうですか。今日も昼は一緒に食べましょうね」
「あ、はい……。……え、またですか」
「嫌ですか」
「……ご飯一緒に食べるんならこうやって見に来なくてもいいと思うんですけど」
「嫌です」
「…………」
めちゃくちゃきっぱり言われた。どんだけ気に入られてるんだよ私。
「また後で来ます」
「ああ、はい……」
帰って行くサタン。もう何を言っても無駄だなと思ったのでそっとしておくことにした。




