18.目標を決められました。
サタンの部屋を後にして客間に戻る。そしてまた掃除だ。
「本当、サクちゃんは気に入られてるわねぇ」
「そうですね……」
さすがに昼ご飯まで一緒に食べるとなると気に入られてると自覚せざるを得ない。まさかそんな方法取られるなんて思わなかった。
「じゃあ、サクちゃん」
「はい?」
「頑張ってサタン様お付きのメイドになりましょうね」
「……はい?」
「頑張ってサタン様お付きのメイドになりましょうね」
「何で繰り返しました?ていうか何でそうなりました?」
「その方がきっとお互い楽だから……」
「えぇ……。で、でも昼一緒に食べたからもう邪魔しには来ないと……」
「邪魔でしたか?」
「…………」
「…………」
急に男の人の声がした。マリーさんと二人でそちらを見れば、勿論というかなんというか、サタンがにこにこしていた。
「サタン様!?」
「え、何しに来たんですか……」
「様子
を見にきました」
「まだ戻ってきたばかりですよサタン様。それにサタン様もお仕事があるのでは」
「リュカがまだ戻って来ないので、時間が空きました」
平然と言うサタンにマリーさんと顔を見合わせた。どうしてくれようこの魔王。
「私のことは気にしなくていいですよ」
「気になりますよ……」
見られるっていうのがとても恥ずかしいし気になる。そう言うとサタンは「私の存在に慣れないとお付きになるのは難しいですね」と言った。
「……それもそうですね……。サクちゃん、早めに慣れる為にも丁度いいかもしれないわ」
「マリーさん!?」
納得された!?お付きって……そうか、常にサタンの側にいるんだとしたらそうなるのか。て、いうかちょっと待て。
「え、いつから話聞いてたんですか」
「マリーの『気に入られてるわねぇ』の辺りですね」
「ほとんど最初ですよ!?どこいたんですか!?」
「魔王ですから。気配を消すのは容易いですよ」
魔王って何だよ。悪魔か。いやそういう問題じゃないってこれ。
「とはいえそろそろリュカも戻っていそうなんで戻ります。また後で来ますね」
「え、はい」
「それでは」
すっと消えるサタン。いやマジ何しに来てんのっつかまた来るの?一緒にご飯食べたんだからそれで満足するとかじゃないの?
「……サクちゃん。頑張ってね」
「何をですか……」
「色々ね。掃除の手順とか、メイドとしての心構えとか」
「…………」
私どこに向かってるんだろう。そう言いそうになったけどやめた。そもそも悪魔に雇われてるとか意味がわかんないし。
「……頑張ります」
結局、そう答えるしかなかった。




