10.前途多難なことを知りました。
翌日、八時に合わせ鏡をして魔界に行ったら微妙な顔のサタンがいた。
「おはようございます」
「……おはようございます。……普通、八時から仕事ならせめて五分前には来るものだと思いますが」
「えっ…………そう……言われてみるとそうです……ね……」
五分前行動とか、あるよね。うわぁまたやらかしてしまった。
「……まぁいいです。着替えてらっしゃい」
「はい……」
「行きましょ、サクちゃん」
「はい!」
昨日同様マリーさんについて行って着替えて、今日は掃除をしてもらう、と言われた。掃除かー。
「というわけで、暫く使う予定の無い客間を掃除してもらおうと思うの」
「はい」
掃除道具を持って、何とも綺麗な部屋に来た。マンガで見るような、豪華な部屋である。大きなベッドにドレッサー。……客間ってことはサタンの部屋はもっとすごいんだろうか?
「ここならゆっくり掃除出来るから、じっくり教えられるわ」
「他は急ぐんですか?」
「毎日使う所はきっちり掃除しないといけないでしょ?限られた時間で綺麗にしないといけないから、それ相応に急ぐのよ」
「な、成程……」
メイドって大変なんだな。何か甘く見てた。サタンの隣でにこにこしてればいいんだろくらいに思ってた。全然違った。
「じゃ、始めましょうか」
「はい」
「はい」
「うぇ?」
何でか返事が二つあった。横を見れば何故かサタンが立っていた。いつの間に?
「うわ!?」
「サタン様!?何してらっしゃるんですか!?」
突然の出現に流石のマリーさんも驚いているらしい。あわあわとしていた。
「いえ、ちょっと様子を見に」
「…………」
マリーさんがとても怪訝な顔をした。そしてちら、と私を見る。いや見られても困る。
「今日は一日此処の掃除ですか?」
「はい。そのつもりです」
「そうですか。頑張りなさい、サク」
「はい……」
よくわからんけどとりあえず返事はしとこう、と頷いた。すると何故か頭をぽんぽん、とされた。子供扱いされている……。
サタンは満足したのかそのまま部屋を出て行った。帰る時は普通に帰るらしい。というか何しに来たんだ。
「……あの人何しに来たんですかね」
「気に入られてるのよ。サクちゃん」
「そうなんですかね……」
だからってわざわざ見に来るか?よっぽど暇なのかあの人?魔王なのに。仕事無いのかしら。
「掃除、しましょっか」
「はい」
まぁいいか、と掃除を始めるのだった。




