砂島2
「あら、人? 珍しいわねこんな場所に」
振り返った女性が言いました。
こっちの台詞じゃい!
……なーんて当たりの強い言葉を吐いたりしませんよ、私は。
なぜなら私は常識人だからです。
……いや、こんな砂漠を孤独に徘徊している時点で常識の欠片もありませんでしたね。
常識の欠片、いつか集めきってみたいものです。
きっと何個か集めれば素敵な願い事のひとつやふたつを……。
あっ、そんなロマンチックな設定はございませんでしたね。
フィクションの読みすぎです。
ノンフィクションには夢も希望もありませんから。
……なーんちゃって。
少し毒が強すぎましたね。
さながら砂漠に潜むサソリの様に。
あっ、上手いこと言ってしまいましたね!
……。
……なんですかそのゴミでも見るような眼差しは?
分かりましたよ、脱線はここまでです。
本題を進めましょう。
「ハハハ。おっしゃる通りです。しかし、その感想は私も抱きました。失礼ですが、こんな場所で何を?」
私は迫り来る暑さを振り切って、満面の笑みで尋ねました。
いきなり道を尋ねたりしませんよ。
まずはジャブから。
世間話から始めましょう。
「何って、パートナー探しだけど?」
女性が額の汗をぬぐいながら答えました。
……パートナー……人生のですか?
流石にこの僻地で婚活はいささか無理な気がしますが……。
あっ、そう意味じゃないですか。
いや、普通そうですよ。
分かっていますよ、私を舐めすぎですよ。
で、そのパートナーとは何を指しているのでしょうか?
……ペットとかかな?
「そうでしたか。しかし、パートナーとは、誰のことでしょうか?」
私は食い入るように尋ねました。
「誰? んー、誰というかペットよ、私のペット」
女性が答えました。
あちゃー、当ててしまいましたね。
これは大ひんしゅくものですよ。
数多くの皆様の珍回答を遮って、正解を答えてしまいましたね。
いや、やってしまいましたね。
これはレギュラー下ろされますね。
今回が私の卒業式となりました。
今までありがとうございました。
……なんて言うと思いましたか?
そんなわけないじゃないですか、私はプラナリア並にしぶといんですよ。
意地でもレギュラーの座に居座りますよ。
知ってますか、プラナリア?
私もよく知らないんですけどね。
知ってる方いたらぜひ教えて下さい。
なんか切ると増える奴ですよ。
おっと、また脱線してしまいましたね。
この鉄道会社は廃業確定ですね。
誰もこんな電車乗りませんよ。
まあ、話を続けましょうか。