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草島3

「どれが薬草か、か? ハハハ! お前さん! 面白いことを聞くな!」


女性が腹を抱えて笑いながら言いました。


……そんなに私、面白いこと言いましたかね?


狙って言ったわけでもないことで笑われても、あまり嬉しくないですね。


まあ、私の存在自体がユーモアみたいなものですからね。


無自覚の内に彼女のツボを刺激してしまったのでしょう。


ほとほと、罪な女ですね、私は。


……って、誰が面白人間ですか!


……と、虚空にひとツッコミいれたところで、本題に戻りましょうか。


「面白いとは、どういう意味でしょうか?」


私はいかにもちんぷんかんぷんそうな表情で尋ねてみました。


「ん? どういう意味も何も、ここの草原の草は全部薬草だからな! どれが薬草とか、そういうのはねぇんだよ!」


例のごとく女性がまぶしい笑顔で答えました。


……はて、彼女は何を言っておられるのでしょうか?


私の聞き間違えでなければ、この方は天地も翻るようなとんでもないことを笑顔で宣っています。


まさかこの方、ヤバいや……いえいえ、そう決めつけるのは早計です。


詳しく話を聞きましょう。


「この草原の草が全部薬草と、それは本当ですか?」


私は精一杯の作り笑いで尋ねました。


「おう、ホントさ。ウチのこの瞳を見ろや! 嘘言ってると思うか?」


女性は爛々と輝きを放つ両の瞳を携えて、私に顔を向けてきました。


ああっ!


眩しい!


眩しすぎます!


こんなお天道様のような瞳を持つ者が嘘をつくはずがありません!


……どうやら、草全てが薬草というのは事実のご様子。


いやはや、世界とは広いものですね。


まるでこの一面の草原のよう……と、そういうのは別によかったですね。


話を進めましょうか。


「それはなんとも驚愕の事実ですね」


私は光にやられた目をこすりながら言いいました。


「そうかぁ? まあ、知らん奴からしたらそんな感じか!」


女性が豪快な笑い声と共に答えました。


いやはや、ホントに太陽のような方ですね。


こんな素晴らしい方を一瞬でもヤバい奴と疑った、過去の自分を恥じ入ります。


しかし、これだけの量の草が全て薬草だとすると……いささか、ゲスな算数がはかどりますね。


もしかしなくてもこの方、かなり、お財布の方がホクホクなのでは?


「も、儲かりまっか?」


動揺して、妙な口調で尋ねてしまいました。


いやぁ、恥ずかしいですね。


羞恥の極みに他ならないですね。


ちと前に掘った墓穴に全速力で駆け込みたいところですが、過去とは塗り替えられぬもの。


あくまで平静を装って会話を続けましょう。

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