草島2
「草しかないぞー!」
草原の中心で私は叫びました。
あれからかなり歩いたのに、一向にこの翡翠色の大海原……原っぱには終わりが見えません。
これではつづる言葉もありませんね。
何かありませんかね?
……私の好きな食べ物でも答えましょうか?
「洋梨」
はい、言いました。
……で、その先になにがあると?
話のネタにもならない言葉に何の意味があると?
そんな言葉には用はなし、用なしです。
……おっ、今、上手いこといいませんでしたか?
え?
言ってない?
……そうですか、傷付きますね。
せっかくの梨が傷んでしまいました。
……もったいないので魔物のエサにでもしますかね。
強靭な胃袋の持ち主の魔物さんなら、食に当たらず召し上がれることでしょう。
……多分。
私は足元に梨を置くジェスチャーをしました。
で、何の話でしたっけ?
そうそう、私の好きな食べ物の話……。
……をしようと思ったのですが待ってください。
前方に人影が見えますね。
島人発見!
これは話かける他ないでしょう。
引っ込み思案な私ですが、勇気を出しますよー。
……しかし、間が悪いですね。
話を始めようとした矢先に登場とは。
もうちっと空気を読んで頂きたいものですねぇ、ええ。
ん?
間が悪いのは貴様の方だと?
御託はいいから早く話しかけろ、ですか?
やれやれ、せっかちな御人だ。
急がば回れ。
ここはひとつ深呼吸でもして、回り込みながら進みましょう。
……と、思いましたが、こんな障害物ひとつない草原では不可能な話でしたね。
仕方ない、話しかけてみますか。
「こんにちは」
私は少し歩くと、目の前の草原に腰を下ろしている女性に話かけました。
「おっす! こんちわぁ!」
振り返った女性が言いました。
……これは予想外ですね。
こういうキャラで来ましたかぁ。
いやはや人は見かけによらぬものですね、ホント。
と、女性のインパクトにやられて怖じ気づきかけました。
ここは気を取り直しておしゃべりしましょう。
「何をなさっているのですか?」
私も草原に腰を下ろして尋ねました。
「ああ、薬草を採っているのさ!」
女性がまぶしい笑顔と共に答えました。
しかし、すごい語気の強さ。
彼女の全身から、生命力というんでしょうか?
そんな感じのが溢れていますね。
私も見習わなくては。
しかし、薬草とはどういうことでしょう?
こんな草原にそんなものが存在しているものなのでしょうか?
「どれが薬草なのでしょうか!」
私も語気を強めて尋ねてみました。
……ちと、喉にきましたね。
やはり、慣れないことはするものではありませんね。