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二十九 幼馴染からまだまだ目を離してはいけないので私は、



 葉月と幼馴染ではなく、恋人として過ごす初めての夏は、あっという間に終わってしまった。

 なんだかもっと色々なことができたような気がするけど、でも、べつにいい。

 だって、私と葉月の夏は来年も来るし、再来年も来るから。

 なんてことを考えながら、私は昼下がりの教室で配られたプリントをクリアファイルにまとめていた。


「ねーねー、さゆぴーほんとに今回のトウ選でないのー?」


「だから出ないってば。私はもう引退しました」


「えー! まじもったいないって! 今回朽織先輩いないから絶対一位とれるよ? ねーねー、出なよー。ぴちぴちお肌の持ち腐れじゃん!」


「ちょ、変なところ触んないでっ!?」


 すると私の親友の榎本綾えのもとあやが横から何やらちょっかいをかけてくる。

 彼女の言うトウ選というのは、うちの高校で定期的に開催されるミスコンみたいなものだ。

 前回は、葉月に私の女子力をアピールするために、綾の推薦に乗ってこのトウコウ選抜総選挙に参加したんだけど、もうアピールする必要もなくなったので、今回は参加を見送りしていた。


「だいたい私、優ちゃん推しだから。なんか最近優ちゃんどんどん可愛くなってるし、もう私の付け入る隙はないよ」


「えー? まあ、たしかにゆちょぱも激きゃわだから一理あるけどさぁ。仕方ない。今回は熱いゆちょぱ推しに全力を注ごっかな」


「そうそう、それがいいって」


 この夏でわりと私の周囲には変化が起きていた。

 蕪木優かぶらぎゆうという新しい友達ができて、ひょんなことから仲良くなった朽織先輩は海外に留学してしまった。

 朽織先輩に関しては、個人的にはとても好きな人だったけれど、正直心のどこかで安心してしまったのも、誰にも言えないけれど本音だ。

 自分でもあまり気づいていなかったけれど、私は結構独占欲が強いみたい。


「でも実際、最近のゆちょぱわりと人気出てきたよね? さゆぴーも負けてらんないんじゃん?」


「負けてらんないもなにも、べつに勝負とかしてないし。私には葉月がいるから、それで十分」


「でたー! さゆぴーの隙あらば惚気! どんだけ好きなの?」


「う、うるさいな。言うほどいつも惚気てないし」


「惚気てますぅ」


「の、惚気てない!」


「きゃははっ。そんなムキになんないでよ。冗談だって。さゆぴーってほんと、はづきちの話題の時だけ普段の落ち着きなくなるよね。なんか、本当に惚れてんだなって感じで、まじ微笑ま椎茸」


「なぜに椎茸?」


「なんか可愛いくない?」


「可愛い、かな?」


 よくわからないことを言いながら、綾は今日もご機嫌そうだ。

 そんなに私っていつも惚気てるのかな。

 なんか恥ずかしくなってきた。

 ちょっと自重しよ。


「あー、いいなー。うちも彼氏欲しいー」


「綾はなんかいい人いないの? その気になれば、いつでもつくれるでしょ?」


「うーん、なんかビビッとこないんだよねぇ。さゆぴー紹介してよー」


「えー? 私もそんなに知り合い多くないからなぁ。風間くんに頼んでみたら?」


「じゅんじゅんはダメ! あいつにこの前紹介頼んだら、あのはづきちのオマケのキモい奴とお似合いとか言ってきたんだよ!? まじありえなくない!?」


「葉月のオマケ? ……ああ、井浦くんのことか」


「まじじゅんじゅんセンスない。てか舐めてる」


 葉月の友達の井浦くん。

 あんまり直接喋ったことはないけど、わりといい人だった気がする。

 というか、この流れ的に本人に言えないけど、私も綾とお似合いというか、結構相性良いんじゃないかと密かに思ってたりする。


「あのキモ浦のこと考えてたらムカついてお腹空いてきた! さゆぴーはやく打ち上げ行こ!」


「ムカついたらお腹すくんだ……」


 今日は仲の良い女友達数人と打ち上げでカラオケに行く予定だった。

 そして夜は葉月と軽く夏休みの反省会をする予定。

 特に反省することなんてないけど、会えればなんでもいい。


「……ってあれ? ねね、さゆぴー。あれ、はづきちじゃない?」


「え? どこどこ?」


 葉月のことを思い浮かべて、にやつきを我慢していると、綾がふと窓の外を指差す。

 どうやら、私の幼馴染で彼氏を見つけたらしい。


「あ、これ、バヤいやつかも。さゆぴーの彼氏、浮気してるよ」


「はぁ!? どういうこと!?」


 綾がニヤニヤと頬を緩めて、窓の外の覗く。

 私は慌ててその視線の先を追う。

 するとそこには、見知らぬ金髪の可愛らしい女子生徒と一緒にどこかへ歩き去る葉月の姿があった。


「あの人、三年生だった気がするなー。さゆぴー、どうする?」


「当然、追います」


「きゃはは。さっすが鬼嫁。はづきちって実は隠れモテ男? こんな可愛い彼女を妬かせるなんて罪な男だねぇ」


 一難去ってまた一難。

 そこまで目立つタイプじゃないし、決して女友達が多いタイプでもないのに、どうしてか葉月はこんなふうに女性絡みの問題を時々起こす。

 どうも私の幼馴染はまだまだ目を離してはいけないらしい。

 とりあえず今日の反省会の議題は決まったみたいね。

 

 

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