91.
ハルコのもとを去ったあと、俺は着替えて外に出る。
ホウキを持って、外の掃き掃除だ。
「ふぅ~……ちょっとずつ、あったかくなってきたなぁ」
しゃしゃしゃっ、とホウキで店の周りを吐きながらつぶやく。
季節は移ろい、冬から春になりかけていた。
でもまだまだ寒い。うー、寒い!
「……ジュードさん♡」
後ろから、なんだか温かいものがくっついてきた。
いやでも、この声は……。
「キャスコ。おはよ」
「……はい♡ おはようござます♡」
元勇者パーティで、賢者だった少女、キャスコ。
彼女は元々俺のことが好きだったらしく、パーティ離脱後、ついてきたのだ。
彼女は嬉しそうに笑いながら、ぎゅーっと抱きついてきた。
「おいおい掃除ができませんぞ」
「……すみません♡ 久しぶりにジュードさんにあえて、うれしくって♡」
「いやいや、昨日顔会わせたでしょーに」
「……夜、会えなくて、すごくさみしかったので」
キャスコとハルコの間で、取り決めがあるそうだ。
かわりばんこで俺と一緒に寝ることになってる。
昨日はハルコの番だったので、一日おあずけのキャスコは、さみしい思いをしたみたいだ。
なるほど……そりゃ申し訳なかった。
「じゃあ、ええと、よしよし」
俺はキャスコのふわふわとした銀髪をなでる。
彼女は子猫のように、気持ちよさそうに目を細める。
ぐいぐいと体をくっつけてくる。
ほんと、控えめな見た目をしてるのに、積極的だよなぁ。夜のほうだが。




