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88.英雄、休日を過ごす



 吸血鬼の王を討伐し、そのウワサを聞きつけた冒険者達からスカウト合戦を喰らった。


 それから、2週間ほどが経過した。


 朝。

 今日は定休日だ。


「ふぁー……よく寝たわ」


 窓からはかすかに、朝日が差し込んでいる。


 そろそろ初夏にさしかかってきた。

 この時間でも普通に明るく、そしてじっとりと暑い。


「……ふふっ、おはようございます、ジュードさん♡」


 ふと声のする方を見やると、キャスコが笑顔で、俺を見上げていた。


 胸板に頭を乗せて、無防備な姿を俺にさらしている。


「おう、キャスコ、おはよう」

「ん~♡」


 子猫がじゃれつくように、キャスコが目を閉じて唇を近づけてくる。


 俺は彼女の甘い果実のようなそれをついばむ。


「今朝は早いな」


「……ええ、少し目が冴えてしまって」


「なんだ寝てなかったのか。大丈夫か?」


「……お気遣いありがとうございます。でも、キャスコはとても元気です♡」


 すりすり、と彼女は俺の胸板に頬ずりをする。


「……ずっとあなたを見ていました。寝顔は可愛いんですね♡」


「照れますな。っと、そろそろ起きて良いかい?」


「……もう少し、このままで」


 俺はキャスコの、汗で湿った髪の毛をなでる。


「もう夏だなぁ」

「……そうですね。みんなで海でも行きたいです」


「そうだなぁ。時間作ってみんなで行くか」

「……では、そのときまでに、水着を厳選しておきますね♡」


「ネログーマに行ったときの水着があるじゃないか?」

「……ジュードさん、わかってませんね。女の子は好きな人に、色んなお洋服を披露したいんですよ」


「ふーん、そういうもんかい?」

「……ええ、そういうもんです」


 そんな風にしているうちに、日が昇ってくる。


 俺とキャスコは一緒にシャワーを浴びて、まあ少しイチャついて、お風呂を出た。


「じゃ、俺は掃除してくるな」

「……わたしは少し寝ます」


「おう、お休みキャスコ」


 俺は彼女に顔を近づけて、口づけを交わす。


「……最近ジュードさんからしてくれるから、とてもうれしいです♡」


 ふにゃりととろけた笑みを浮かべるキャスコと別れて、俺は外に出るのだった。



    ☆



 店は定休日ということで、朝は非常にゆっくりしている。


 10時頃に、寝ぼけ眼のハルコが降りてきた。


「ふぁ~……おふぁよー……ごじゃいますぅ~……」


 しょぼしょぼ、と目をこするハルコ。

 ピンクの半袖パジャマを着ている。


「おはようさん」

「ふへへ~……今朝もジュードさんは、かっけぇ~なぁ~……♡」


 ふらふらとハルコが、喫茶店のカウンター席に座る。


 朝ご飯とコーヒーを、彼女の前に出す。


「いただいきまーす!」

「はいよ、召し上がれ」


 もりもりとハルコがパンやらスープやらを食べる。


 この子はとても美味しそうに食べてくれるから、作りがいがあるというものだ。


「あれ、タイガちゃんとロゼちゃんは?」


 うちの娘と竜王の娘は、休日だろうとバッチリ朝早く起きる。


「もう外へ遊びにいったよ」


「ふぇー……元気だにぃ、ふたりとも」


 ハルコがアイスコーヒーをくぴくぴと飲む。


「ハルちゃんおかわりいるかい?」


「はいっ!」


 俺はスープをついで、ハルコの前に出す。

 彼女は美味しそうに、ポトフをガツガツと食べる。


「そういやキャスコがさ、今度みんなで海に行こうって」


「わぁ! いいですね! おらも……ハッ!」


 ハルコが自分の脇腹を、ぷにぷにとつまむ。


「どうしたの?」


「えっと……行くのは1ヶ月くらい待ってほしいかやーって」


「そりゃまたどうして?」


「今のおらのぷにぷにお腹は……見せられないなと」


 うう……とハルコが身を縮める。


「そんなの気にしなくて良いのに」

「けど……女の子は好きな人に、いつだって綺麗に思われたいんです」


「ハルちゃんはいつだって綺麗で可愛いよ」

「あうぅ~……♡ ジュードさぁん♡」


 まあ頻繁に彼女のお腹は見ているけど、そんなに気にするほどではないと思う。


「でも……やっぱりこのお肉は、いかんともしがたいです」


「そんなにお肉なんてついてないよ」


「うう……うう~……じゃ、じゃあ……触ってみて、確かめてください」


「え……?」


 ハルコが耳の先まで真っ赤にする。


 自分のパジャマの裾をめくる。

 白いお腹が見える。


「ど、どうぞ!」

「お、おう……」



 俺はカウンターから腕を伸ばして、彼女のお腹を少し、つまむ。


「ひゃっ♡」

「ほら、あんまりお肉ついてないよ」


 ふにふに、として気持ちが良い。

 別に脂肪がたっぷりついてる感じはしないな。


 俺は手を離そうとする。


「もっと……触ってほしいです……」

「え、うん」


 ふにふに。

 ふにふにふに。


「あう……ジュードさん……♡」

「健康的で大変よろしいじゃあないか。気にすることないよ。君は君のママで良いさ」


 ハルコは輝くような笑みを浮かべる。


 もじもじと身をよじると、ん……♡ と目を閉じて、顔を近づけてきた。


 俺はハルコの顎を少し持ち上げて、軽く口づけを交わす。


「ふへへへ~♡ ジュードさんとちゅーしちゃった~♡」


「……それは良かったですね♡」


 キャスコが2階から降りてくる。


 ばっちりメイクをして、髪の毛は寝癖一つない。


「キャスちゃんおはよ~」


 賢者様が、ハルコの姿を見て、キュッと目を三角にする。


「……ハルちゃんっ。なんてだらしのない格好をしてるのですかっ」


「え、だ、だって……寝起きだから……」


「……いくらお付き合いしているとは言え、そんなだらしのない姿をさらしていたら、いつかジュードさんに愛想を尽かされてしまいますよっ」


「ええっ!? そ、そんなぁ~……」


 この世の終わりみたいな顔をするハルコ。

「そんなことないよ。ハルちゃんは今のままで最高に可愛いよ」


「ほ、ほらぁ!」


「……ジュードさんっ。甘やかせてはいけませんっ」


 ぴしゃり、と俺とハルコは、キャスコに一喝される。


「……ハルちゃん、女は自分磨きをやめた瞬間にだらしのない体のおばさんになってしまうのですっ」


「ひぅ……! そ、そんなぁ……」


 キャスコはハルコの背後に回り、お腹をぷにぷにとつまむ。


「……今はギリギリです。こんなだらしのないお肉を愛しの彼にさらすのですかっ」


「で、でもぉ……ジュードさんは今のままで良いってぇ」


「……駄目です。今日からダイエット敢行ですよ! 目指せ5kg減!」


「ふぇー……無理だよぉ~……」


 そんなふうに、楽しく午前中を過ごした。


    ☆



 昼飯を食い、午後。


「おとーしゃんおとーしゃん」


「んー? どうしたぁ、タイガ」


 午後のコーヒーを飲む、俺の膝の上に、タイガが乗っている。


「あたちね……ついに、デビューを考えてるの」


 真剣な表情で、タイガが俺を見上げる。


「ほぅ、タイガさんは何にデビューするのですかい?」


「あたち……コーヒーデビューしたい!」


 ビシッ! とタイガが自分の獣のしっぽで、俺の飲んでいるアイスコーヒーを指す。

「ほぅ……ついにか。けどタイガよ、苦いぞ」


「いけるもんっ。あたち、違いのわかる女だもんっ」


 ふふん、とタイガが胸を張る。


「なるほど……じゃあ用意してくるから、ちょっと待ってな」


 そのときだった。


「ジュードぉ! われもコーヒーを飲むのだー!」


 対面に座っていたロゼが、ビシッと手を上げる。


「あー! ロゼがまねっこするー!」


「いいでしょ? 別にわれが飲んでもっ」


 俺は言い合いをするふたりを遠目に見ながら、コーヒーの準備をする。


「知ってますかね、コーヒーは……とても苦い!」


「しってるのだっ。でもわれは大人だからな、飲めるぞっ」


「へんっ。ロゼはまだお子ちゃまだから無理ですなっ」


「なぁーにー? こんにゃろー!」


 ふたりがほっぺを引っ張り合う。


「はいはい、ケンカはやめなさいって。2人分作ってきたぞ」


「「わーい!」」


 2人の前にコーヒーを出す。


「いくぞ……てりゃー!」


 タイガがガッ! とグラスを掴んで、ごくりと飲む。


「お、おまえ……そんなたくさんのんだらやいばいのだっ!」


「うっ……!」


 タイガがクワッ、と目を見開く。


「う……うう……」

「だ、だいじょうぶなのか?」


「うまーい!」


 ぴかー! とタイガが笑顔になる。


「で、ではわれも……うん! うまーい!」


 わー! と2人が手を上げる。


 それもそのはず、アイスココアだからなこれ。


 さすがにまだ幼女のふたりに、カフェインは早すぎる。


「あたちも大人になったもんだなぁ~……」


「われだって大人だもん! ごくごくー! おかわりー!」


「あ、ずるーい! おとーしゃん、あたちもー!」


 俺は2人のグラスを持って、2杯目のココアを作るのだった。



    ☆



 そしてその日の夜。


「……ふふっ、ジュードさぁん♡ 一緒に寝ましょう♡」


 俺の部屋に、ネグリジェ姿のキャスコと、ハルコがやってきた。


「うう~……キャスちゃん……これスケスケ……」


 ピンク色の薄い生地は、ハルコの美しい裸身を完全に透けて見せていた。


「……殿方のやる気を引き出すことを考えるのも、いい女の仕事ですよ?」


「うう~……うぅ~……ど、どうかや、ジュードさん?」


「ああ、すっごい似合ってるよ。可愛いぞ」


「ふへ、ふへへ~……♡」


 キャスコとハルコが、俺の左右に座る。


 顔を近づけてきたので、俺は2人にキスをする。


「……今日も良い休日でした。のんびりしてて、ジュードさんとイチャイチャできましたし」


 俺の体に抱きついて、キャスコが小さくつぶやく。


「……ちょっと前では、考えられませんでした」


「そうだなぁ。まあ、いろいろあったもんな」


 キャスコの髪の毛をなでていると、ハルコが腕にしがみついて、ぎゅーっと抱きつく。


「じゅ、ジュードさんずるいですっ。キャスちゃんばっかり……い、イチャイチャするの……ずるい!」


「……まあハルちゃん。焼き餅ですか? ふふっ、可愛いですね♡ ほらジュードさん、ちゃんと可愛がってあげないと」


 俺はハルコに再度キスをする。


 そして一緒に寝て……また朝を迎える。


 こんなふうに、俺はいつもの休日を過ごす。


 竜王とバトルして、新しい力を手に入れたけど、基本俺は、こうしてまったり過ごしているのだった。

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[良い点] めっちゃ面白いです!書籍版でこの作品を知ってweb版も読み始めました!!主人公が強くてハーレムものが大好きなので最高です(笑)お忙しいとは思いますがまた更新していただけたら嬉しいです!これ…
[良い点] こういう完全なスローライフも好きだ
[気になる点] これから先、どんな風に主人公とグスカスは接点を持つんだろう…?
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