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51.英雄、バイト少女たちと旅行の予定を立てる



 ハルコ、キャスコへの思いを再確認し、ネログーマへ旅行へ行って、そこで告白するのだ。


 そう決意してから、そこそこの時間が経過した、1月中旬。ある昼下がりのこと。


 ランチタイムが一段落し、タイガが昼寝している間。


 俺の喫茶店・ストレイキャットにて。


「ハルちゃん、それにキャスコ。ちょっと話が……」


「「旅行の件ですね!」」


「う、うん。その通りだ……ちょっと時間良いか?」


「「もちろんです!」」


 ランチを終えたバイト少女たちが、いそいそと、窓ぎわの席に座る。


 忙しい時間を過ぎ、今は休憩時間。店には俺と彼女たちしかいない。


「キャスちゃんっ。いよいよだにっ!」


 嬉しそうに笑う、桜色の髪をした少女が、バイト少女・ハルコ。太めの眉と、愛くるしく大きな目、そして少しなまったしゃべり方が特徴的だ。


「……そうですね、ハルちゃんっ」


 そのとなりで、上品に笑う、白髪の少女が、元賢者のバイト少女・キャスコ。低い身長に、ふわふわとした髪の毛。真っ白な肌に細い体つきと、儚げな印象を与える。


「えへへ~♡ 楽しみだなぁ~♡ ジュードさんと……えへへ~♡」

「……そうですね。一日千秋、この日をずっと二人で待っていましたもんね」


「うんっ……! やっとかぁ……」

「……ハルちゃん毎晩すっごく楽しみー楽しみーって言ってましたもんね」


 きゃあきゃあ、と黄色い声を上げる少女たち。


 俺は申し訳ない気持ちになった。待たせてすまん。


 けど、理由があるんだよ。


「それで……前に言っていた旅行なんだが。行き先は獣人国【ネログーマ】の【エヴァシマ】って街だ」


 俺は少女たちに説明する。


「えーっとえーっと……キャスちゃんっ。どんなとこっ?」

 

 ハルコが隣に座る、小柄な少女に問いかける。


「……隣国ネログーマの中央南部にある中核都市ですね。観光に力を入れているそうです。水の町といって、街に河がいくつも流れていて、ゴンドラとかにも乗れるんです」


 さすが賢者のキャスコだ。博識な少女である。


「わー! すっごいなぁ~……。そんな素敵な街に連れてってもらえるなんて……ジュードさんっ! ありがとうございます!」


 明るい笑顔で、ばっ……! とハルコが頭を下げる。濃い桜色の長い髪が、バサッと垂れた。


「いえいえ。たいしたことしてないよ」

「……それで、どういう旅程なんですか?」


「順路としてはノォーエツを出発して、まず【ガオカナ】で一泊。そして【エヴァシマ】へ行って2泊して帰る感じだな。デートは2日目の夜で、夜の間はタイガの面倒を、玉藻が見てくれるそうだ」


 玉藻とは俺の友達の一人だ。隣国ネログーマのお姫様だったりする。


 俺がそこへデートへ行くと言ったら【デートの間、あのかわいい嬢ちゃんはウチが預かるわぁ】と買って出てくれた。


 ありがたいことだ。


「タイガちゃん、さみしくないかな……」


 ハルコが心配そうに、眉をひそめる。キャスコが微笑んで、その肩をたたいた。


「……デートは夜遅く、タイガちゃんが寝てからです」

「そうなんだにっ! よかったぁ……あ、でも夜中トイレに起きたとき、おらたちいなかったら……」


「それについてはウチの娘、タイガさんからお言葉をちょうだいしています」


 俺はそう言うと、ズボンのポケットに手を突っ込む。


「タイガちゃんから?」


 俺はすでに、タイガにハルコたちとデートしたい旨を伝えた。するとこういう手紙をもらったのである。


 俺はタイガからの手紙をポケットから取り出す。そしてハルコたちの前に広げる。



【ハルちゃん、キャスちゃん。おとーしゃんのこと、よろしくねっ!】



「だってさ」

「タイガちゃん……おら、あとでありがとーって言っておくだにっ!」


 憂い顔から一転、ハルコが明るい笑みを浮かべる。


「……ジュードさん、よろしくお願いされちゃいましたね」


「だなぁ……。ほんと、よくできた娘だよ」


 クスクス、と上品に笑うキャスコ。灰色の瞳が細められる。本当にキレイな笑顔だなぁと見とれてしまう。


 顔の作りもそうだが、体もまた、細いけどでるところはきっちりでてて……っていかんいかん。


「……ふふっ」


 キャスコと目が合う。にっこりと笑われてしまった。


「す、すまんじろじろみて。ぶしつけだったな」

「……いいえ♡ どうぞお好きなだけ見てください♡ ジュードさんに見られて、私とっても嬉しいですもの」


 大人っぽく笑うキャスコ。うーむ……嫌がられるかと思ったら、むしろウェルカムとは。


 ほんとうに、こんなさえないおっさんのことを、好きでいてくれているのだろう。


「……ハルちゃんもそうですよね?」

「え、あ、う、うんっ! もちろんっ! ……なんのこと?」


 ハルコが首をかしげる。どうやらわかってないのに返事してしまったようだ。


「……ジュードさんにハルちゃんのおっきなおっぱいを、熱っぽく見られて嬉しいですよねって」


「えっ、えっ、ええっ! そ、そそそそそんなこと……」

「……思ってないんですか? さっきのは嘘だったのです?」


 顔を湯気がでるほど真っ赤にするハルコに、余裕の笑みで彼女をいじるキャスコ。


「ち、ちがっ……うそじゃ……ない……です……。見られたら……うれしい……です……」


 消え入りそうな声のハルコ。耳の先まで真っ赤にしていた。その顔は泣きそうだったが、嫌悪は感じられなかった。


「……だ、そうです♡」

「お、おう……そ、そうか……」


 どう答えれば良いんだこれ……。と困っていると、キャスコが実に楽しそうにクスクスと笑う。


「……二人ともかわいいです♡」

「も~~~~~! キャスちゃんのいじわるー!」


 ハルコが、ぽかぽかとキャスコの肩をたたく。ごめんなさいと笑いながら、キャスコは彼女の頭を撫でていた。


 キャスコのが背が低いが、ハルコより2つ年上の17。ほんと、仲いい姉妹みたいだなぁ。


「……ジュードさんも、頭撫でて欲しいんですか? いいですよ♡」


「や、勘弁してくれ……」


 15の美少女ならともかく、35のおっさんが頭なでなでされるのは、きつい。


「……冗談です♡」

「そ、そうか……」

「……ええ♡」


「な、なんだかキャスちゃん、日に日にSっぽくなってるような気がするだに……」


 ごくり、と息をのむハルコ。キャスコは「……そうですか?」と楽しそうに笑っていた。


「さてじゃあ話戻すと……旅行だが、出発が2月中旬になりそうなんだ」


「……ずいぶんと遅いんですね」


 今が1月中旬だから、ちょうど1ヶ月ほど後となる。


「その間いろいろイベントがあってさ。多方面から呼び出しくらってるんだ、俺」


 例えば双子冒険者たちから、【ギルドの昇級試験が近いから、訓練つけてー!】とか。


 ギルドマスターからもいくつか【ジュードさんじゃないと無理な案件がたくさんあってすみませんすみません!】とか。


「あとキースからも依頼……というかお願いがひとつされていてな」

「……キース様から、ですか?」


「ああ。キャスコ、ちょっとそのことで後で相談な」

「……ああ、この間の?」

「うん、この間の」


 目立つのは嫌なんだが、こればかりは拒否できないっぽいしな。


 それはさておき。


「そんなこんなあって、出発が2月になっちゃったんだ。ごめんな」


「いいえっ! ジュードさんがお忙しいのは、十分しってますっ! ね、キャスちゃんっ」


「……ええ、痛いほど。ジュードさんモテモテですから♡」


「モテモテって……からかわないでくれよ」

「……ごめんなさい♡」


 ハルコが手を上げて言う。


「それで具体的にいつから出発するんですか?」


「ああ、2月の13日出発して、14,15で帰ってくる。デートは14日の夜だな」


 俺が何気なくそう答えた、そのときだ。


「「!!!!」」


 ハルコたちが、目を大きくむいたではないか。


「キャスちゃんっ!」

「……ハルちゃんっ」


 ガシッ……! と二人が、硬く手を結んでいた。


「運命かなっ?」

「……運命でしょうっ」


「だよねっ! 大事な人と、大事な日を過ごせるなんてっ! 絶対絶対ぜぇ~~~~ったい運命だにー!」


「……これはもう、女神様が私たちを祝福しているとしか思えませんねっ」


「「ねー♡」」


 なにやら楽しそうな二人。


「えーっと、どうしたんだ二人とも? 俺話しについて行けないんだけど」


 すると二人が俺をじっと見て、はぁ~……っとため息をつく。


「気付いてないのかな?」

「……ほぼ確実に、無自覚ですね」

 

「「はぁ~~~~………………」」

「え、なになに? どうしたんだ二人とも?」


 すると二人は苦笑すると、


「ジュードさんらしいだにっ♡」

「……そうですね、らしいだに、です♡」


「? ??」


 どうしよう。ふたりの話に、これっぽちもついて行けないんだが……。


「とにかく! 2月14日は決戦だね、キャスちゃん!」

「……ええハルちゃん。しっかりと準備をしないとっ」


 うんっ! と強くうなずく二人とも。俺は相変わらずついていけなかった。


「それじゃ二人とも、ちょっと出発まで長いけど、よろしくな」


「「よろしくお願いします!」」 


 かくして、旅行の日取りが決まったのだった。

次回グスカス側の話となります。



新連載はじめました。

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