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37.英雄、田舎少女と甘い時間を過ごす




 12月24日。夜。


 俺はバイト少女ハルコとともに、王都の街で、デートをしていた。


 その途中、俺たちは泣いてる子供と遭遇。その子は実は迷子だった。


 話はその1時間後。場所は王都のメインストリート。噴水近くのベンチにて。


 俺はその子の母親を見つけて、ハルコたちの元へと帰ってきた。


「お母さん!」

「坊や!」


 ハルコのそばに居た、男の子がこっちに気付く。俺のとなりに立っていた母親のもとへと、走り出してきた。


「おかーさーん!」

「もうっ! 勝手に居なくなって! 心配したのよっ!」


 母親が子供を抱き上げる。母親は安堵の涙を流している。


 一方で男の子の方は、笑っていた。1時間前に出会ったときは、『おかーさーんどこー!』泣きじゃくっていたのだが。


「ごめんなさい、お母さん」


 子供がしょぼんと落ち込んで言う。怒られると思っているのだろうか。


 一方で母親は、表情を柔らかくして、息子の頭を優しくなでる。


「でも良かった……見つかって。さみしくなかった?」


「うん! ハルコお姉ちゃんが一緒だったから!」


 男の子がニコッと笑って、ハルコを見やる。ハルコは笑うと、彼に小さく手を振った。


「ハルコお姉ちゃんが優しくしてくれたから、おれぜんぜんさみしくなかったよ!」


 母親はハルコの元へ行くと、深々と頭を下げた。


「うちの子がご迷惑をおかけしてすみませんでした。せっかくのデートを邪魔してしまって……」


 母親が俺とハルコを見て、申し訳なさそうにする。


「いえ! 大丈夫です。みーくん、良かったね♡ お母さん見つかって」


 ハルコは頭を振って、そして男の子を見て笑顔を向ける。


「うん! ハルコお姉ちゃん、ほんとありがとー!」


 みーくんというのが、この男の子の名前らしい。すっかりハルコのことを気に入っているようだ。


「ありがとうございました」


 と母親が俺の方にも礼を言ってくる。


「気にしないでください。俺は何もしてませんし。ハルちゃん……この子が泣いてるみーくんを真っ先に見つけたおかげで、なんとかなったんです」


 1時間前。


 道を歩いていると、泣いてる少年を発見。

 俺が動く前に、まっさきにハルコが少年のそばまで行く。


 そして泣いている男の子をあやして、迷子になっていることを聞き出す。


 俺はハルコに、少年のことを任せて、母親を【見抜く目】を使って探し出した。


 王都は人が多すぎて、見つけ出して合流するまでに時間がかかってしまった。


 だがこうして、無事男の子の母親を見つけ、ハルコたちと合流した次第だ。


「ありがとうございます。本当にありがとうございました!」


 母親が何度も、頭を下げる。


「ハルコお姉ちゃん、ばいばーい!」

「うん、みーくんばいばい♡」


 男の子と母親が、去って行く。その姿を、ハルコがニコニコしながら、手を振った。


「良かったぁ……。あの子が笑顔になれて」


 ハルコがほっとしながら言う。


「そうだねぇ」


 俺はハルコを見やる。


「な、なんですかっ?」


 ハルコが顔を赤らめて、きょろきょろと視線を泳がせながら、自分の髪の毛を、手で整える。


「いや……ハルちゃんは、いいお姉ちゃんだなって思ってさ」


 さっき、あの迷子の子を見つけたとき。俺はどうした? とまず思考があった。


 だがハルコは、真っ先に男の子の元へ行って慰めていた。たぶん状況から、すぐに迷子だと察したのだろう。


 慰めて、そしてすぐに母親を探しに行こうとしたのだ。


 その行動すべてに、迷いがなかった。実に自然だった。やって当然というか、いつもやってる感がすごくあった。


 そして俺が母親を見つけて帰ってくるまで、この子は迷子の面倒を見ていた。


 泣いていたあの子は、ハルコの手により、すっかり笑顔を取り戻していた。


 小さい子の慰めかたを、この子はよく知っていた。それはたぶん、いつも弟妹たちをそうやって慰めていたからだろう。


「さすが大家族のお姉ちゃんだ。すげえよハルちゃん」


「そ、そんなぁ……♡ や、やめてくださうよぅ……♡ そんなこと言ったら……おら……照れちゃいます♡」


 ハルコは顔を真っ赤にして、いやんいやんと体をくねらせる。


「そういえば……そうだ。ジュードさん、ごめんなさい!」


 ハルコが俺を見やると、ばっ! と頭を下げる。


「どうしたの?」

「だって……花火。時間過ぎちゃってて……見れなかったじゃないですか……」


「ああそれ……」


 迷子の対応をしていたら、普通に花火の時間を過ぎてしまっていた。今は19時ちかくだからな。


「おらのせいです。ごめんなさい……」


 自分のせい……? ああ、ハルコが迷子を見つけたせいで、花火が見られなかったと?


 それに対して謝っているのか。……なんというか、まあ……。


 優しいな、この子は。悪く言うと気を遣いすぎってことになるけど。


 けど、この底抜けに優しいところは、この子の美点だと俺は思う。


「もう。何言ってるんだよ。ハルちゃんのせいじゃないよ」


 俺はハルコの肩に手を置く。


「というか、俺が見つけ出すの遅かったのがいけないんだ。ごめんね、ハルちゃん」


 俺は頭を下げる。ハルコは慌てて頭を振る。


「そんな! ジュードさんがいなかったら、あんなに早くお母さん見つけられなかったです!」


 二人で自分のせいだ、いや自分が……と譲り合った後、ぷっ、とふたりで吹き出す。


「ハルちゃん、結構頑固なんだね」


「ひどいですよぅ♡ それを言うなら、ジュードさんだって頑固です♡」


 ふふっ、と俺たちは笑い合う。


「花火は残念だったけど、来年また見に来れば良いか」

「え……!? ら、来年も来てくれるんですかっ?」


 ハルコが目を輝かせる。


「もちろん。ハルちゃんが嫌じゃなかったらだけど」

「嫌なわけないじゃないですかっ! やった! やったぁ!」


 ハルコが両手を挙げて、喜びを表していた。メイクによって大人っぽくなったと思ったけど、やはりまだ15歳なんだなぁ。


「んじゃハルちゃん。飯、いこっか」


 花火は見れずじまいだったが、しかしまだデートの途中だ。


 俺はハルコに、手を伸ばす。彼女は俺を見て、嬉しそうに笑うと、手を握り返す。


「はいっ!」


 かくして俺たちは、レストランへと向かうのだった。



    ☆



 俺たちは予約していたレストランへと移動。


 そこでディナーを楽しみ、そして食後。


「美味しかった~……」


 向かい合って座るハルコが、幸せそうな笑みを浮かべる。


「ごめんね、高級料理の店じゃなくて。俺の知ってる店で」


 高級料理店を予約しようにも、そもそも王都にそんなものがあるのか知らなかった。


 どうしようかと迷って末、結局行きなれたレストランに連れて行くことにしたのだ。


 ここは王都にある大きめの宿屋。そこに付随するレストランである。


「そんな! いいです。お料理とっても美味しかったですし、それに……えへへ♡」


 ハルコがふにゃふにゃと笑う。


「ジュードさんと二人きりで食事できただけで……幸せです♡」


 両手を頬に添えて、ハルコは蕩けた笑みを浮かべる。


「ハルちゃんは……いつも幸せそうだね」


「はいっ! ジュードさんがそばにいるだけで、おら……じゃなくて、わたしは幸せなんです♡」


 俺がいるだけで幸せ……か。そんな風に思ってくれてるなんて。なんというか……嬉しいな。


「それでジュードさん……この後なんですけどっ」


 ハルコがチラチラ、と上目遣いで俺を見やる。


「ああ、飯食ったし、ホテル行こうか」


 俺がそう言うと、ハルコがパァアッ……! と表情を輝かせる。え、何その反応。


「はいっ! お、おら今日はじ、自信ありますっ! いつものダサい下着じゃなくって! 勝負下着着てきましたからっ!」


「は、ハルちゃん? いったい何言ってるの?」


 ふぇ? とハルコが目を丸くする。


「だっ、だってこの後ホテルに行くって……」

「え、だからホテルに帰ろうって。俺たちが泊まってるところに」


 するとハルコが目を伏せ、はぁ~~~………………と深々とため息をつく。


「え、え、っとハルちゃん。ごめん、どうしたの?」

「…………すみません! ウェイターさん!」


 ハルコが勢いよく手を上げる。給仕の人がやってくる。


「ワイン持ってきてください! たくさん!」

「は、ハルちゃん?」


 困惑する俺。一方で給仕の人は一度引っ込み、グラスワインを持ってくる。


 ハルコはそれをがしっ、と手に取ると、ごきゅごきゅごきゅ……! と喉を鳴らして飲む。


 だんっ……!


「もういっぱい!」


 ごきゅごきゅ……!

 だんっ……!


「もういっぱい!」


 ごきゅごきゅ……!

 だんっ……!


 その後もハルコは、ワインを立て続けに飲みまくった。


「ハルちゃん、それくらいにしておきなさい……」


 俺はハルコからワイングラスを奪い取る。だがハルコは逆に奪い返すと、


 ごきゅごきゅ……!


 だんっ……!


「じゅー、どさんっ!」


 据わった目で、ハルコが俺を見やる。


「は、はい……」


 ハルコに気圧される俺。


「おら……もう酔っ払っれ……一歩もあるけないれふ……」


 ハルコが顔を真っ赤にしていた。頭をくわんくわんと揺らす。


「ここ……ホテルあるじゃないれふかぁ……一緒に泊まりましょぉ……」


 ろれつの回らない声でハルコが言う。


「いやハルちゃん……それはマズいよ。だって俺たち」

「うるしゃーーーーい!」


 ハルコが肩まで真っ赤に染めた状態で、声を張り上げる。


「おらが良いって言ってるのー! 一緒に泊まるのー! ジュードさんと一緒に泊まるのー!」


 駄々っ子のようにするハルコ。俺は周りの迷惑を考えて、ハルコをなだめようとする。


 だがハルコはいくら言っても、俺たちが泊まっているホテルに帰りたくないという。


「泊まるの泊まるの泊まるの-!」

「わ、わかったわかった。そうだね、泊まろうか」


 俺が言うと、ハルコはパァアア……! と表情を明るくして、


「うんっ!」


 と幼子のようにうなずいた。するとハルコが「………………きゅう」



 びたーんっ!


 とテーブルに顔を突っ伏してしまう。


「は、ハルちゃん? どうしたの?」

「ぐぅ~………………」


 酔いが回ってしまったのだろう。ハルコは寝息を立てていた。


「…………困った」


 俺はハルコに肩を貸して、立ち上がる。この状態でホテルまで連れて帰る……のはさすがに無理か。


 なら……泊まるか?


 このレストランはホテルに隣接している。泊まろうと思えば、できる。けど……倫理的にそれはちょっとどうかと……。


 未婚の女の子と、未婚のおっさんが一緒に泊まるなんて……と思っていたそのときだ。


「……逃げないで」


 ハルコが切なそうに、そう呟く。それは寝言なのか、正気だったのか……。


「お連れ様、大丈夫ですか?」


 給仕のひとが、心配して俺たちに声をかけてきた。


「あー……えっと、」


 俺は悩んで末に、


「ホテルの部屋って今、空いてます?」



    ☆



 酔い潰れたハルコ。俺はレストランに隣接していたホテル。その一室へとやってきていた。


「ほらハルちゃん。部屋についたよ」

「う~~~………………」


 ハルコはすっかり酔い潰れている。


 俺はハルコを連れて、ベッドへ移動。彼女をベッドに寝かせる。


「うぅー…………ん」


 ハルコが寝苦しそうにしている。どうした……と思っていると。


 もそもそ……とハルコがニットのセーターを脱ごうとしている。


「こ、こらこらハルちゃんっ」


 俺はハルコの手をつかむ。


「寝苦しいの? パジャマ持ってくるから、それに着替えてから寝てね」


 俺はハルコの手を離す。急いで部屋のクローゼットの中から、パジャマを取り出す。

 そしてベッドへ戻ると……。


「ちょっ!?」


 ハルコはニットのセーターを脱いで、上半身裸になっていた。


 ハルコはベッドに仰向けに寝ている。真っ白な肌に、真っ赤なブラ一枚だ。


「…………」


 ハルコが呼吸するたび、彼女の大きすぎる乳房が揺れる。


 薄い布地のブラ。それを包むのは、息をのむほど大きく柔らかそうな胸。


 真っ赤な下着と、真っ白な彼女の肌のコントラストは、実にエロティックだ。


 思わず見とれるほど、彼女の裸身は美しい。まだこれで15歳。まだまだ成長の余地を残していると思うと、恐ろしいほどだ。


 今現在でさえこんなにも美しく、妖艶だというのに、さらに綺麗になる余地があるなんて……って、何を考えてるんだ俺よ。


 冷静になれ。俺は大人で、彼女はまだまだ子供だ。


 俺はパジャマを持って、彼女の居るベッドへとやってくる。


「ハルちゃん。そのかっこじゃ風邪引くよ。ほら、パジャマ持ってきたから着替えて」


「…………やだ」


 ハルコが小さくつぶやく。


「ハルちゃん?」

「いや、です……」


 ハルコがにゅっ、と手を伸ばす。俺の腕をつかみ、ぐいっと引き寄せる。


「ちょっ、ハルちゃん!?」


 俺は体勢を崩して、彼女の寝るベッドに倒れる。


 ぐにゅぅ~~~~~………………♡


 腕に、何かとてつもなく柔らかな物体が当たる。


 見やるとそこには、ハルコが俺の腕を抱きしめていた。


 彼女の、人の顔くらいある大きな乳房に、俺の腕が沈んでいる。


 柔らかい。そして、暖かい……。肌はしっとりと濡れている。そしてたき火のそばにいるような、安心するような暖かさを感じる。


 はっ、はっ、はっ……とハルコの呼吸は荒い。息をするたび、アルコールの混じった、甘い吐息が鼻腔をくすぐる。


 すぐそばに、彼女の潤んだ目がある。


「……どうして?」


 今にも泣きそうな表情で、ハルコが俺に尋ねてきた。


「……どうして、ねえ、どうして……手を出してくれないんですか?」


 ハルコが俺を見上げて言う。涙声だ。


「……おらの裸みても、ドキドキしてくれないんですか。おらを見ても、むらむらしてくれないんですか……?」


「ハルちゃん……」


 ハルコがその愛くるしい目を、涙でぬらす。かわいらしい太めの眉は、不安げに八の字になっていた。


「…………」


「おらの体、そんなに魅力ないですか?」


「そんなことないよ……。とっても魅力的だって」


「じゃあ……なんで? ねえ、なんで自分から触ってくれないんですか?」


 むぎゅっとハルコが、自分の胸に俺の腕を押しつける。たわわに実った果実が、ぐにゃりと、いやらしい形にひしゃげる。


「おら……ジュードさんになら良いんです。たくさん触って。エッチな気分になって欲しいんです」


「ハルちゃん……。そこまで、俺のこと……」


 俺は申し訳ない気持ちになった。彼女はここまで勇気を出してくれているのに。何もしない自分がいて。


 それと同時に、嬉しかった。ここまで強く、俺に好意をぶつけてくれる、この子のことが、愛おしかった。


「ハルちゃん……」


 俺は彼女の細い腰に、腕を回す。


「あっ……♡」


 きゅっ、と抱き寄せる。俺たちは、ベッドに横向きで、抱き合うような形になる。


「ありがとう、ハルちゃん。きみが俺のこと、強く好きって思ってくれてること、よく伝わったよ……」


 俺は加減を考えながら、彼女の体をぎゅっと抱き寄せる。胸板に潰れる彼女の乳房に、俺は目が行きそうになる。


 ぐにょりと潰れる彼女の乳房は、とても柔らかかった。このままずっと抱きしめていたい。と体が彼女を求める。


「ジュードさん……」


 んっ……と彼女が目を閉じて、唇を俺に向けてくる。


 みずみずしい唇だ。今にも彼女の柔らかなつぼみに吸い付きたなる……。


 けれど……。


「ごめん、それはまだ、できないよ」


 俺はハルコを抱き寄せて、ぎゅっと抱きしめる。


「……どうしてぇ?」


 泣きそうなハルコ。俺は彼女を抱きしまたまま言う。


「ハルちゃん……正直な話して良い?」

「……はい」


 俺は言うかどうか迷って、けれど言う。そうしないと納得しないだろうから。


「俺はまだ……自分の気持ちがわからないんだ。だってさ、冷静に考えてほしいんだ。俺は35のおっさん。きみは15歳の、未来のある若者だ」


 俺はハルコの頬に手を置く。そして彼女の涙を指で拭う。


「どうしても考えちゃうんだよ。俺みたいなおっさんには、ハルちゃんはもったいないくらいの美少女だって。俺なんかよりふさわしい男がいるだろうって」


「そんな……そんなことないです! ジュードさんのように強くてかっこよくて優しいひとなんて、この世にいないです!」


 そうやって褒めてくれるのは、純粋に嬉しかった。けどやっぱり、この子の未来を思うと……どうしてもと思ってしまう。


「ハルちゃん。俺はどこかで納得できてないんだ。君みたいなかわいくて素敵な女の子が、どうしてこんなおっさんなんかを……って」


 自分の娘くらいの女の子から、いきなりあなたが好きなんですといきなり言われて。本気で捕らえる男なんて、いないだろう。


 今日の一連の出来事で、彼女が本気だと言うことは伝わってきた。だからこそ、よくわからないんだ。


 どうしてこんな俺なんかに、こんな美人で優しい女の子が、本気になってくれるんだろうか……と。


「君の本気は伝わったよ。けどまだ正直、困惑してる。納得できない自分がいるんだ」


 おっさんのことを、好きになってくれる美少女がいるという、事実に。俺は、というか、俺の理性は、納得できてないのだ。


「けど勘違いしないでくれ。ハルちゃんが女性として魅力ないって訳じゃないから。わかるだろ?」


「あ……」


 俺はドキドキしているし、あれもああなっている。……おっさんが何を興奮してるんだよと冷静な部分がツッコミを入れる。


 けどハルコに女性としての魅力が無いと、彼女が勘違いして、自信喪失して欲しくなかった。それを表すためのハグだ。


「キモくてごめんね」


 俺は彼女を離そうとする……。だが彼女は、逆に俺に抱きついてきた。


「嬉しいです」


 ハルコが俺を見上げる。その顔は、晴れやかだった。


「ちゃんと……おらのこと、女の子って思っててくれて。どきどきしてくれるんだって……わかったから、嬉しいです」


 小さく、えへへ♡ と笑うハルコ。


「今は……これでいいです。キスも、その先も……まだ良いです」


 ハルコが嬉しそうに目を細めると、俺の体に抱きついて言う。


「ジュードさん、寝るまでで良いから、こうしてていいですか? 今は……それでいいです」


 ハルコがそう言う。


「いいの?」

「もちろん♡」


 俺はうなずくと、彼女がぎゅっと俺を抱きしめる。


「ジュードさんは、おら以上にヘタレなんですね」

「う……。何も言い返せねえや」


「でも……いいです♡ おらのこと……本当に大事に思ってくれてるんだぁって。おらの将来のこと、本当に、真剣に考えてくれてるんだって……今日、わかりましたから♡」


 ハルコが俺を見上げる。本当に嬉しそうに笑う。


「おら……いくらでも待ちます。いくらでも言います。だって……おら……ジュードさんのこと、だぁいすきだからっ!」


 それだけ言うと、ハルコが俺の体にまたぎゅーっとくっつく。


 ……そして彼女が寝息を立てるまで、俺たちはしばらく、そうしているのだった。

次回グスカス側の話になります。


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