148.
後日、俺は王城に来ていた。
現在、政治を仕切ってる王子(次期国王)キールの執務室にいる。
部屋には俺とキールだけだ。
「ジュードさん。今回は本当にありがとうございました!!!!!!」
キールが何度も頭を下げてくる。
国内にできた巨大ダンジョン。
ほっとけば国規模で災害が起きていたことだろう。
それを未然に防いだから、俺に感謝してるってわけだ。
「ジュードさんには感謝してもしきれません……なんとお礼を言って良いものやら」
俺は、一つの考えを持ってここに来ていた。
そして、俺は彼に言う。
「礼はいい。俺のお願いを一つ聞いて欲しいんだ」
「お願い? なんでしょう!!!!!」
待ってましたとばかりに、キールが身を乗り出してくる。
元気になったなぁ、昔は病弱だったのにな。成長にちょっとじーんときてしまう。やーね、俺ってばもうおっさんになったもんだ。
まあそれはさておき。
「グスカスをさ、許してやって欲しいんだよ」
「!」
グスカスの顛末を、俺は全て聞いた。
色々やらかして、水オチして、奴隷落ちまでしたってさ。
「キール、おまえが色々やったんだろ? 部下を使って」
「あ、いや……それは……」
なんでそんな、グスカスを追い詰めるようなことをしたのか、俺にはわからない。
多分兄弟でしか、理解できないことなのだろう。
教え子にたいして、結構酷いことをしていたことは、許せない……が。
グスカスに非がなかったわけじゃあない。
グスカスは酷いことをした。
罰を受けるべきなのはその通りだ。
キールはやり過ぎて他が、まあその罪への罰と捉えれば……まあ、多少溜飲は下がる。
「……すみません」
「いや、いい。昔のことはもういいさ。それより今は次の話だ。グスカスはどうなる?」
今、グスカスは城にて軟禁状態になっている。
人を殺して、その罪で。
「殺人罪は立派な犯罪です。もう一度鉱山送りで、一生働かされるか、死罪」
「どうにかならんか?」
「どうにもなりません。これは、法で定めたことですから」
まあ、そうだよな。
グスカスも、それを受け入れてる感じがあった。
ここへ来たとき、諦めた顔をしていた。
「…………」
人を殺したことは、確かに悪い。
それはもう、変えられない過去だから。
「そっか……じゃあ、こういうのはどうだ?」
俺はキールに提案する。
彼は渋い顔をしたあと……。ちいさくため息をついた。
「わかりました。二度も世界を救った英雄の、頼みなら。承りましょう」
本当に嫌そうにしてるキール。
それでも、許してくれたのは、俺の功績と……。
そして、多分だけど、やっぱり、家族を殺すことに、ためらいを覚えていたのだろう。
「ありがとな、キール」




