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144.勇者グスカス



 勇者パーティは見事な連携で、ボスを徐々に追い詰めていった。


「いける……いけるっすよ! これなら勝てるっす!」

「ばか! オキシー! 気を抜くな!」


 その一瞬の隙をつくかのように、ガスが一気にオキシーへと押し寄せる……。


「危ない……!」

「ジュードさん!?」


 オキシーを、ジュードが押し倒した。

 そしてジュードが代わりに、大量のガスを浴びてしまう。


「があぁ……!」

「「「ジュードさん!?」」」


 オキシーたちが皆、動揺する。

 愛する彼がピンチにたたされ、激しく動揺を見せる少女たちとは対照的に……。

 グスカスだけは冷静に、状況を分析していた。


「やべえ……全員かまえろ! 嫌な予感がする!」

「…………」


 ジュードがふらりと立ち上がった。

 そして……。


「どけ!」


 がきぃいいいいいいいいん!

 ジュードが剣で、キャスコに斬りかかってきたのだ。

 それを、グスカスが受け止めたのである。


「……ぐ、グスカス、一体何がおきてるのですか?」

「見てわかるだろ! ジューダスの体が……ボスに乗っ取られたんだ!」

「……! ジュードさん!?」


 ジューダスがうつろな目で自分たちを見ている。

 だが、剣に込められた殺気は本物だ。


 本気で、仲間を殺そうとしていた。


「オキシー! 盾攻撃シールドバッシュだ!」

「あ……え……で、でも……ジュードさんが……」


 気持ちは理解できる。

 彼女らは、ジュードのことが大好きなのだ。全員が彼に懸想してる。


 だから、攻撃を加えることなんてできないのだ。

 グスカスは檄を飛ばす。


「ジューダスは殺させねえ! おれが、元に戻す! だから……おれの言うことを今は聞いてくれ!」


 少女たちとは違って、グスカスは男だ。 

 確かに敬愛するべき師ではあるが、攻撃できないわけではない。


「ここでおれが祓う……あの化け物を、ジュードから! だから指示を聞いてくれ!」


 聖なる剣を手にしてるグスカスにしか、できないことを、今からやろうとしている。

 だがそれには仲間の協力が必要だ。


 ジュードという緩衝材がいないなかで……。

 果たして、少女たちが協力してくれるだろうか……?


「…………」


 オキシーは……盾攻撃シールドバッシュで、ジュードを突き飛ばした。

 吹っ飛んでいくジュード。


「オキシー……」

「……わかったっす。あんたのいうこと、聞いてやるっすよ」


 オキシーが、グスカスに心を許した瞬間だった。

 いや、完全には許してないのだろう。


 今はジュードを救うという目的が一致してるから、しかたなく指示を聞くだけにほかならない。


「私もやるぞ、グスカス」

「……仕方ないですね」


 ジュードの教え子たちが、全員うなずく。

 ボスに操られてる師匠をみて、グスカスが言う。


「全員で……ジューダスを元に戻すんだ!」

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