143.勇者グスカス
《グスカスSide》
グスカスは仲間とともに、ダンジョンボスに挑んでいた。
ジューダスの指示を聞き、その通りに動く。
だがそれだけに終始しない。
自分の判断でこうするべきだと思ったら、その通り行動した。
ズバンッ……!
グスカスの手には、今黄金の剣が握られている。
聖なる剣。
女神に選ばれた、勇者の証。
……だが、グスカスはどうして自分にこの剣が戻ってきたのか理解できていなかった。
自分の罪は決して軽くなく、自分の過去は消えない。
人を殺した事実は、変わらない。消せない。
だが、それでも。いや、だからこそ。
前に進まないといけないのだ。
「ぜやぁああああああああああ!」
神秘光結界によって逃げられなくなった、ボス。
グスカスの剣がボスの体を浄化していく。
ボスの体が徐々に消えていく。
敵がグスカスを集中して殺そうとしてくるのだが……。
がきぃいん!
「守りは任せるっす!」
「グスカス! おまえは自分の仕事をするんだ!」
仲間たちが、支えてくれた。
でも彼女たちはグスカスを許したわけでは、決してないことを理解している。
「ありがとう!」
それでもグスカスはお礼を言った。
彼女たちに迷惑をかけたのに、それでも、一緒に戦ってくれることに対する感謝だ。
ボスが、自分の体をガスにして、グスカスに精神攻撃を仕掛けてきた。
『人殺し!』『臆病者!』『恥を知れ……!』
夢の中で、仲間たちが自分をののしってくる。
だがグスカスは気合いでその悪夢を振り払い、剣を振る。
「ああ、そうさ。おれは人殺しで臆病者で、恥知らずの最低の男だ……!」
グスカスは剣を振り続けた。
自分の罪、弱さ、全て受け入れて……。
それでも、戦っている。
今ここで戦わないと、いけないからだ。
仲間たちの攻撃はボスにはきかない。
自分のもつ聖剣だけが、敵に有効打を与えられる。
ジューダス含め、みんなそれぞれの、幸せな場所がある。
グスカスは、彼らを、そこへ帰してやりたい。
その一心で戦っていた。




